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ウィズコロナ時代のライブ演奏のありようについて思いめぐらす
人間は考える葦である。パスカルは、そう言った。
たしかに人間はひ弱な存在にちがいない。だが、思考という武器が人間にはあるじゃないか、と。思考とはつまり「思いめぐらす」ということである。
ここのところずっとライブ配信について考えている。たぶん、かつてのようなライブパフオーマンスは当分のあいだ行うことはむずかしいだろう。残念だが。
まず無観客ライブができなくなった。バンドがいっしょに演奏することは「三密」を生むからである。代わって、ビデオ会議アプリを使ったリモート・ライブが増えたが、タイムラグのため生演奏はむずかしいと分かった。
友人たちとのオンライン飲みで、「せーの!」で一斉に手を叩く実験をしてみたのだが、思った以上に、だいたい1秒くらいのタイムラグがあった。
それでも、ひとりとしてライブすることをあきらめようとしないのは素晴らしい。うつくしいとさえ思う。思考は、クモの巣のようにみずからの可能性を拡張するうつくしい営みである。
きょうは、NegiccoのKaedeさんの配信ライブを観た。バンドメンバーが事前にリモートでレコーディングした音をミックスしたオケをバックに、kaedeさんが生で歌うというスタイル(キーボードの弾き語りも1曲あり)。これは新鮮だった。スーパーチャットという投げ銭の仕組みもある。
ところで、ライブの「肝」はグルーヴ、臨場感である。それをリモートで醸し出すのはなんといっても至難の技だ。
その、醸し出すのがなかなかむずかしいライブならではの臨場感が、きょうのkaedeさんの配信からは思ったよりもずっと伝わってきたのだ。苦肉の策にはちがいないが、また一段、われわれ人類のライブ配信スキルが高まった感じ。
ちなみに、5月31日(日)にはチーム・ソーシャルディスタンス(わがオンライン飲み会の名称です)のメンバーでもあるthe sleeping beautyが、自然をテーマとした映像に生演奏を重ねる「#うちから音楽を旅しよう」という企画でライブ配信に登場する。これもまたひとつの試み。よろしければぜひ。
おなじくチーム・ソーシャルディスタンスのメンバーで音楽レーベルを主宰する友人からは、以前ヘッドフォンコンサートなるものに参加したときの話を聞いた。そして、話を聞いていたら夢想が止まらなくなった。
遊園地の音楽会
夜の遊園地を貸し切りにして、何組かのアーティストが「遊園地」をテーマにした音楽をライブ演奏する。ちいさなステージは、やはりちいさな無数の電燈でデコレーションされている。
参加者は入園料込みのチケット代を払い、園内を散策したり、ベンチに腰かけたり、あるいはメリーゴーランドに乗ったりしながらスマホとイヤフォンでライブ演奏を楽しむのだ。音楽は、FM電波にのせてアプリ経由で受信する仕組み。
園内では、ポップコーンやホットドッグ、それに赤ワインやクラフトビールなんかも買うことができるはず。
終演は、特別アレンジされた15分くらい尺のある生演奏の「蛍の光」を聴きながら遊園地を後にする。屋外だし「密」も回避できる。いまだからこそできる試みだが、もしかしたらこの騒動が終息した後まで定着したりしないだろうか。そんな夢想。
とにもかくにも、どこかに余白が残されているかぎり、ぼくらは楽しく思いめぐらしつづけようじゃないですか。
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誰かが淹れてくれたコーヒーはおいしい
ここでは、カフェで常連のお客様にだけこっそりお話しするようなエピソードを書いています。固有名詞や少しプライベートに踏み込んだ内容も登場する…
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