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傷ついて剥がれて落ちた鱗たち来世は花に花におなりよ/巣守たまご 一首評

うたの日の選評をもとに再構成。

傷ついて剥がれて落ちた鱗たち来世は花に花におなりよ
/巣守たまご 「うたの日」2021年10月6日 題「鱗」


 この歌の肝は下句にある。短歌の評では「動詞は1首の中に3つ(人によっては2つ)まで」とよく言われるが、この歌は、「傷つ」き、「剥がれ」、「落ち」、と、歌の出だしで惜しげもなく3つの動詞を重ねた。その連なりが、おそらくは急流にいるのであろう魚の体躯から鱗が剥がれていく様を端的に描写する。そして、続く下句の「花に花に」というリフレインが、突如として上句の動きを堰き止め淵のような深みを見せるのだ。一首の中で言葉の流れがかなり高い技術でコントロールされ、緩急がつけられている。歌われた祈りのようなイメージの美しさは言うまでもなく、この技巧が歌の完成度を高めている。

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