FRBと独立性の話とニコニコch再開のご報告

2024年8月20日 17:00

　先日、トランプ元大統領がアメリカの中央銀行であるFRBが行う金融政策について、大統領が発言権を持つべきだと主張しました。その後、副大統領候補のバンス氏もこれを支持し、制度的な修正を行う可能性を示唆しました。1935年まで財務長官がFRBの理事を兼務し、政治家が金融政策を決めていたため、当時の方法に戻そうということではないかと注目されています。
　この記事ではこの件の解説と、ニコニコchでの活動の再開について報告します。

FRBの独立性について

　現在、FRBの政策を決定するメンバーは大統領によって選ばれていますが、政権とは一定の距離を置いて独立性を持って金融政策の運営を行うことが重要とされています。トランプ氏の発言を受けて、FRBの独立性が失われるのではないかと非常に注目されています。

トランプ氏の発言の詳細

　まず、トランプ氏が大統領が金融政策に口を出す権利を認めるべきだと発言したことについて説明します。
　金融政策を決定するFRBのメンバーは大統領によって選ばれていますが、その中に政治家は含まれていません。つまり、国民によって選ばれたわけではないメンバーが国の金融政策を決定しているということです。これに対してトランプ氏は、民主主義が答えを出すべき問題だとして、政治家が金融政策の決定に直接的に関わることができるようにすべきだと発言しました。

中央銀行の独立性とそのリスク

　しかし、これを可能にすると中央銀行の独立性が損なわれ、政府の利払いを減らすなどの目的で金融緩和を行ったり、低金利政策ばかりを実施しようとして経済の加熱と高インフレを招く恐れがあると考えられています。
　実際、1935年までそうした課題があったことで銀行法が改正され、FRBの独立性を確保することになったという歴史があります。

独立性についての様々な意見

　「中央銀行は政府の子会社であるため、政府が金融政策に口を出すのは当たり前だ」と考える方がいる一方で、「中央銀行の独立性を確保することは重要だ」と考える方もいます。政府が口を出すべきか、独立性を重視すべきか、両方の意見があると思います。

トランプ氏の主張

　私はトランプ氏を支持しているわけでもありませんし、民主党を支持しているわけでもありません。
　今回の話については、トランプ氏がいつもFRBが政策運営を誤ってきたということに問題提起したかったのではないかと見ています。というのも、2022年にアメリカのインフレ率は前年比＋9.1%まで上がりましたが、それまでFRBはインフレは一時的だと言い、コロナ後の金融緩和政策を長い間維持しました。こうした失敗はこの時だけではありません。
　市場参加者の多くが感じているところだろうと思いますが、FRBのあり方を見直した方がいいのではないかというのは私も同意するところです。

政治家の関与とそのリスク

　ただし、政治家が全部決めるというのは私は反対です。過去の経験もあるように、低金利政策で景気加熱、インフレに繋がりやすくなるのではないかと見ており、それはあまり好ましくないと思っています。
　では、民主党の意見に賛成するのかというと、そういうわけでもありません。今までも政権がFRBに圧力をかけていると言われたりすることもあり、十分に独立性を確保していたかは正直何とも言えないのではないでしょうか。独立性が十分だったかの評価は難しいですが、アメリカの国民の多くは独立性が十分確保されていたとは思っていないのではないでしょうか。

市場と金融政策

　市場参加者の中には、金融政策の決定を人がやるのではなく、マーケットが決めるようにした方がいいのではないかという意見もあります。
　最近は金融市場が織り込んでいる通りにFRBが金融政策を決定することが非常に多くなっています。市場の織り込みに沿って機械的に金融政策を決定した方がまだマシなのではないかということです。

政治的影響とFRBの未来

　しかし、おそらくそういう方向に向かうことはないでしょう。どちらの政党も自分たちの意向に沿った金融政策をFRBに実施させたいからです。トランプ氏はもっと自分たちの思い通りに金融政策をやりたい、民主党は今まで通り影響力を持ちたい、どちらの方向になってもFRB運営の問題の解決策にはならないのではないかと見ています。

ニコニコch再開のお知らせ

　ここからはご案内ですが、サイバー攻撃の後ずっと止まっていたニコニコchが８月22日に再開することが発表されました。すでに会員になっていただいていた皆様については、６月から８月の会費は返金されることも発表されています。５月にニコニコchをスタートしてすぐに今回のサイバー攻撃の問題が発生してしまったので、ほとんどまたゼロからですが、引き続き頑張っていきたいと思っています。

国産プラットフォームの重要性

　今回の問題でもやはり国産のプラットフォームが必要だと改めて感じました。もう一度盛り上げていきたいと思っています。ニコニコchが再開しましたら、以前と同様に日曜日に動画を出し、月曜日から土曜日まではYouTubeで動画を公開していくという、６月までやっていたペースでこれからも動画を公開していこと思います。８月25日の日曜日にニコニコch再開後最初の動画を公開したいと思っています。

　私はYouTubeにお世話になっていて、YouTubeのことを悪く言うつもりはないのですが、日本人が日本人のために情報を発信するにあたり、国産のプラットフォームがあった方がいいという思いから、今回ニコニコchのプラットフォームも活用していくことにしました。

中国の米国債保有減少とニコニコch開設のご報告

会員の皆様への感謝

　引き続き会員を継続してくれている皆様、新たに会員になってくれた皆様へ感謝いたします。９月はニコニコchで公開する動画を増やし、ニコニコchでは週２本のペースで動画を公開していきたいと思っています。ニコニコchでは水曜日と日曜日に２本の動画を出す方向で今準備しています。
　YouTubeは月曜日から土曜日の合計６本出す予定で、YouTubeとニコニコch合わせて週８本の動画を９月は出していきたいと思っています。

　先日パリに行ってきた話や、いつもよくリクエストをいただいている機関投資家の話など、YouTubeでやっていないこともやってみたいと思っています。再開後はニコニコchの方も盛り上げていきたいです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

　決して難しいことばかりを話そうとか、そういうことではなく、あくまで世界経済で起こっていることを分かりやすく解説するというスタイルは変えないつもりです。