銀行の貸借対照表とALMの解説(シリコンバレー銀行の件)
シリコンバレー銀行破綻の振り返りの記事でコメントをいただきました。コメント欄での返信で収まりきらないため、回答とともに、銀行の貸借対照表とALM(Asset Liability Management)についてより詳細に解説しようと思います。
コメントの質問に対する回答を記事にするという初の試みです。noteを通じて、より皆様のお役に立ちたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします(TeamモハP)。
銀行の貸借対照表についての再掲とご質問
銀行の資金調達と運用についてコメントいただきました。
「銀行がお金を貸す時の原資は預金や現金ではないのでないか、借りたお金そのものを貸す(又貸し)こともしていないのではないか。とすれば、預金などで資金を調達し、融資や投資をしているというのは誤りではないか。」というご質問です。
ご質問について
まず、「銀行がお金を貸す時の原資は預金や現金ではないのでないか、借りたお金そのものを貸す(又貸し)こともしていないのではないか。」の質問についてです。
銀行の信用創造機能を意識してのご質問だと理解しています。勝手にご質問の内容を解釈して簡略化しますと、「例えば、100億円の融資を行う際、融資先の通帳に100億円と書くだけで実際に100億円の札束(モノ)を預ける訳ではないですよね。」という内容だと思います。
これは仰るとおりです。銀行の債権債務関係はモノの流れとは別物です。
次に、「とすれば、預金などで資金を調達し、融資や投資をしているというのは誤りではないか。」というご質問についてです。結論ですが、こちらは全く誤りではありません。
もちろん、顧客の預金を直接貸し出しているわけではありません。資金調達方法と資金運用内容の話です。銀行の債権債務関係とモノの流れは別物ですが、記録には残るためです。
簡単に貸借対照表について説明させてください。
貸借対照表について
貸借対照表について説明します。シリコンバレー銀行破綻の振り返りの記事では「銀行の貸借対照表」を最初に載せていますが、「銀行の貸借対照表」はやや特徴的です。特徴の詳細や「一般企業の貸借対照表」との違いについてもお伝えします。
資金の運用内容と調達方法としての貸借対照表
貸借対照表(BS:Balance Sheet)についてですが、資産(資金の運用内容)と負債・純資産(資金の調達方法)を表しています。返済義務がある資金が負債、返済義務がない資金が純資産と考えていただいて問題はありません。債権債務関係はすべて貸借対照表に記録されます。
一般企業の貸借対照表
まず、一般企業の貸借対照表をみてみましょう。銀行からの借金(負債)と株主からの払込金(純資産)を元手に、建物や機械などの固定資産(資産)を購入しています。これでビジネスを実施するわけです。一部は預金(資産)として銀行に預けています。
銀行の貸借対照表
次に、銀行の貸借対照表をみてみましょう。顧客からの預金(負債)と株主からの払込金(純資産)を元手に、融資(貸出金:資産)をしたり株(有価証券:資産)で運用したりしています。これが銀行のビジネスモデルです。
銀行の貸借対照表の特徴と一般企業の貸借対照表との違いは、資産(資金の運用内容)と負債・純資産(資金の調達方法)の両サイドに預金が登場する点です。説明する側もされる側も紛らわしいため、混乱を生む原因となっています。
銀行も当然に、自分たちの一部の資金を預金として保有しています(資産)。一方で、顧客から預かっている預金は、引き出しを求められれば返さないといけない、返済義務がある資金であるため負債に計上されます。私が100万円を銀行に預金すれば、銀行はそれを預かっているにすぎないため、負債が100万円増えるわけです。
ご質問の回答
前置きが長くなりました。ご質問の回答ですが、銀行は顧客の預金などで資金を調達し、それで融資や投資をしています。貸借対照表を見れば明らかです。繰り返しになりますが、顧客の預金を直接貸し出しているわけではありません。資金調達方法と資金運用内容の話です。
銀行の貸借対照表とALMの関係
最後に、銀行の貸借対照表とALM(Asset Liability Management)について解説します。
ALM(Asset Liability Management)とは資産(Asset)と負債(Liability)の双方を総合的に管理するための手法です。資産と負債の期間のバランスをとることで金利変動リスクを管理する方法もその一つです。
銀行の資金調達方法は顧客の預金が主です。定期性の預金もあると思いますが、基本的には引き出しを求められればすぐに返さないといけない、短期のものがほとんどです。資産と負債の期間があまりにも乖離すると、金利変動が起こった時に価格変動のリスクが大きくなってしまうため、そうならないように管理する必要があります。
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