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金融危機の予見、歴史の教訓と個人の経験
金融危機は予見できるのか。
これはYouTubeのコメント欄にいただいた質問です。今の株安の状況をリーマンショックの時と比べる機会が増えてきており、金融危機のことを考えている方も多いのではないかと思います。そこで今回は、「金融危機は予見できるのか」について私の見解を解説します。
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完璧な予見は不可能
早速の結論ですが、金融危機を完璧に予見することはできないと考えています。金融当局も投資家も、できるだけ予想してそういうことが起こらないように対応していると思いますが、リーマンショックは実際に起こりました。私自身、リーマンショックを予見できていたかというと、できていませんでした。金融危機やバブル崩壊は10年とか20年とかの感覚で繰り返されていますが、金融当局もうまく対処できなかったり、機関投資家も回避できなかったりしてきたのがこれまでの歴史としてあります。
多分これからも同じようなことが起こるでしょう。全てを予見して回避することは不可能だと思います。
予見の意義
こう言うと、「予見できないのか。金融危機はこないと予想しても意味ないのか」と思われるかもしれませんが、意味がないことだとは思いません。
リーマンショックが起こってから同じような問題が起こらないように、銀行がデリバティブ取引でたくさんリスクを抱えないように規制も強化され、それ以後同じような問題は15年以上起こっていません。
歴史の教訓①
1980年代に起こったS&L危機では、ALMという考え方が普及するきっかけにもなりました。
銀行破綻の歴史(S&L危機)
金利上昇でMBSの価格が下落して銀行が破綻するという問題は1980年代の金利上昇局面で同じようなことが起こっています。S&L危機と言われるもので、S&LがMBSをたくさん保有していたのですが、金利上昇でMBSの価格が下落し、金融機関が次々と連鎖破綻する事態が発生しました。取り付け騒ぎのようなこともたくさん起こり、アメリカ経済は非常に混乱しました。
「資産と負債の期間をあまり乖離させないようにしましょう」というALMという概念が生まれたのがこのS&L危機がきっかけだったと言われています。
1987年に起こったブラックマンデーと言われるニューヨークの株式市場の大暴落の経験から、当時主流になっていたリスクヘッジの手法がマーケットの変動を増幅してしまったことや、スペシャリストと言われる市場で寝付けをしていたマーケットメーカーが抱えるリスクなど、多くのことを学びました。
1998年前後に起こった通貨危機では国際金融のトリレンマ、それから時を同じくしてLTCMという当時世界最大だったヘッジファンドの破綻では、いわゆるアービトラージ戦略の限界を知ることになりました。
「国際金融のトリレンマ」とは1980年代に徐々に認知されるようになった国際金融論上の一説です。一国が対外的な通貨政策を取る時に、①為替相場の安定、②金融政策の独立性、③自由な資本移動、の3つのうち、必ずどれか一つをあきらめなければならないというものです。
歴史の教訓②
上記は1980年代以降ですが、他にも、1700年代にはイギリスで起こった人類史上初めての株式バブルである南海泡沫事件がありました。
また、戦前の日本で起こった昭和金融恐慌など長い歴史の中では様々なことが起こってきました。
100年以上にわたって人類は、金融危機やバブル崩壊がなるべく起こらないよう、同じような問題はなるべく回避できるように取り組んできたと言えます。
リスクと向き合う
こうして問題が起こらないように取り組んできていますが、結局予想できていなかったら意味がないと思われる方もいるかもしれません。
しかし、金融危機を絶対に回避できるわけではない、考えても危険はゼロにはならない、だから考えること自体に意味がないと言ってしまったら、人類の成長はそこで止まってしまいます。リスクがあり、失敗する可能性があっても、それを回避するように努力して前に進んでいくしかないのです。
私自身の経験
私自身、失敗することもありますし、見落としていることもたくさんあります。全く完璧ではありません。もちろん、なるべく正しく将来を予見したい、なるべくリスクを把握して事前に対処したいと思っていますが、抜けているところもあります。これは私に限ったことではなく、テレビで話している経済評論家もそうです。金融機関のエコノミストもそうです。完璧ということはありません。
そもそも世界は、そして経済は不確実なことだらけです。将来の予想を全て当て続ける、そんなことはできるわけがありません。
失敗と向き合う
結局、誰しも見落とすことがありますし、失敗もします。それでもその経験を生かして次にどうしていくかということが大切です。
これはファンドマネージャーも同じです。ファンドマネージャーはもちろん運用成績が素晴らしいことが何より大事ですが、実はそれだけではありません。運用機関にはファンドマネージャーを評価する仕事もありますが、運用の成績だけで評価されているわけではありません。リターンだけではないということです。損をしたとしても、その経験を生かして次にどうやって立ち直っていくのか、そういうところが信頼できる人にお金を任せようという話です。
素晴らしい成績を上げている人でも次は損するかもしれない。失敗した時にどう対応するかというのが大事なわけです。
ファンドマネージャーの評価を行う場合は、うまくいっていない時や困難な状況にある時にどう行動したかを細かくチェックします。うまくいっている時は、誰でもうまくできるわけです。うまくいっていない時に何ができるか、そこで力の差が出るわけです。
金融危機
金融危機に関しても、いつかはまた起こる時が来る。その時に多くの人が「そんなはずではなかった」、「見落としていた」、「想定外だった」となるわけですが、それで終わりではありません。
その経験を生かして前に進んでいくしかないのだと思います。
ご参考