サウジ政府系ファンド、任天堂株式の一部を売却
2024年10月8日、サウジアラビアの政府系ファンド、パブリックインベストメントファンド(以下PIF)が任天堂の株式を一部売却したことが明らかになりました。
これまでもサウジアラビアの財政状況について解説してきました。彼らはお金は持っていますが、決して余裕があるわけではないと説明してきました。そうした状況の中、この任天堂株の売却のニュースが出てきました。
任天堂の株式を一部売却した理由
財政が厳しいから株を売っているのかと問われることが多いですが、この任天堂株の売却については財政的な理由ではないと私は理解しています。
10月8日の証券報告書によると、サウジアラビアの政府系ファンド、PIFが保有する任天堂株の保有比率は10月1日までに8.58%から7.54%に下がったことが明らかになりました。ブルームバーグニュースの算出によると、1,730万株程度が売却されたとされています。
サウジアラビアの財政状況
サウジアラビアの財政赤字は拡大しています。原油価格が下がり、原油の減産も影響しているため、国営石油会社サウジアラムコの利益が減少し、配当も減少しています。国の歳入が減少しているにも関わらず、ビジョン2030に関連する支出が増加しているため、財政赤字が拡大しているのです。
PIFの運用資産の増加
サウジアラビア政府はPIFが運用する資産を増やす方向に動いています。昨年、政府が保有するサウジアラムコ株の一部をPIFに移管し、PIFの資産を増やしました。これは、ビジョン2030にかかる費用、特にNEOM(ネオム)などの大型プロジェクトの建設をPIFからの投資で賄うためです。したがって、PIFが稼いだ資金をNEOM(ネオム)などの投資に充てることになります。
国家財政とPIFの関係
では、なぜNEOM(ネオム)の建設資金などを国家財政からではなくPIFからの投資で賄うのかというと、国家財政が著しく悪化することを防ぐためです。サウジアラビアはビジョン2030で石油以外の産業を育て、経済大国を目指していますが、企業が欧米の金融市場で資金調達をしたり、サウジの金融市場の発展も不可欠です。そのためには、国家財政が安定していることをアピールする必要があります。
任天堂株売却の目的
PIFが任天堂株を売却した理由は、資産運用上の戦略によるものだと考えています。10月5日に一部のメディアが、PIFがゲーム関連株の買い増しを検討していると報じました。この戦略の中で、任天堂株よりも値上がりが期待できる他の銘柄の保有を増やすために、任天堂株を一部売却したと考えられます。
任天堂株は、日本の株式市場全体に比べて大きく値上がりしてきました。PIFが任天堂株を5%以上保有していることが明らかになった2022年以降でも、株価は50%以上値上がりしています。これはTOPIXなどを大きく上回るパフォーマンスです。ポートフォリオの構成上、やや大きくなりすぎていたため、分散投資の観点から一部売却したのは不思議ではありません。
まとめ
PIFは任天堂株に対して悲観的な見通しを持っているわけではなく、むしろ資産運用の観点から戦略的な判断を行った結果と私は解釈しています。サウジアラビアの財政状況が厳しい中でも、PIFは積極的に運用を進める方針であると考えています。引き続き、サウジアラビアの経済動向やビジョン2030に関連する情報に注目していきたいと思います。
アメリカの消費者物価指数の発表
2024年10月10日、アメリカで消費者物価指数(CPI)が発表される予定です。9月からアメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを開始しましたが、最近の雇用統計が予想外に強い結果となり、今後の利下げへの期待が後退しています。特に賃金の伸びが高かったため、今回の消費者物価指数でサービスの価格などがどうなるかが注目されています。
利下げへの期待とその影響
もし消費者物価指数が予想以上に上昇することになれば、利下げの期待はさらに後退する可能性があります。その結果、アメリカの金利がさらに上昇し、ドルが買われることになるでしょう。これにより、経済全体に大きな影響を与えることになります。
ビギナー向けの解説記事
事前にビギナー向けに消費者物価指数の注目ポイントなどをまとめた記事を公開しています。この解説記事では、インフレの速さ、方向性、広がり、粘着性といった要素の見方について初心者にも分かりやすく説明しています。
経済指標の発表後には、グラフなども交えた解説記事も出しているので、是非ご活用ください。今後ともよろしくお願いいたします。
ご参考