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ブラックマンデーの振り返り
2024年8月5日の日経平均株価の下落幅は、ブラックマンデーを超えて過去最大となりました。このブラックマンデーについては、アメリカ経済が財政赤字と貿易赤字の双子の赤字を抱えている中で、ドルに伴うインフレ懸念が高まったことがきっかけで起こったと言われています。ブラックマンデーの後、ニューヨークの株式市場は意外と早く回復したことはよく知られています。
ブラックマンデーが起こった時、ニューヨークの株式市場では他にも様々な問題が発生しました。そして、ブラックマンデーをきっかけに大きく変わったこともあります。この記事では、意外と知られていないブラックマンデーについて詳しく解説します。
ブラックマンデーの背景と影響
2024年8月5日、日経平均株価が4,000円以上下落し、市場はパニック状態に陥りました。これまでの最大の下げ幅は、1987年10月の米国市場の大暴落「ブラックマンデー」翌日に付けた3,836円でした。
ブラックマンデーを引き起こした要因の一つとして「ポートフォリオインシュアランス」というものがあります。
「ポートフォリオインシュアランス」とは、リスクヘッジの手法の一つです。例えば、株のポートフォリオを持っているマネージャーが、株が下がった時に株の先物を売ることで下落するリスクをヘッジする手法です。この先物を売り建てする量は、下落幅が大きくなるほど増やしていくというものです。
「ポートフォリオインシュアランス」の具体例
例えば、ポートフォリオが20%以上下落するのを避けたい場合、株価が下落するにつれて徐々に先物の売りの枚数を増やし、20%下落するところで100%のポジションがヘッジされるようにします。これにより、20%以上の損失を避け、安定した運用が可能となります。
市場への影響とその後の変化
この「ポートフォリオインシュアランス」というヘッジ手法を取り入れる機関投資家が当時非常に多くなっていました。「ポートフォリオインシュアランス」は、株価が下がれば下がるほど先物の売り建てを増やさなければならないため、多くの人がこの取引を行うと市場の変動を大きくしてしまう可能性があります。
そのため、「ポートフォリオインシュアランス」が市場の流動性に対して非常に大きな影響を与えていたと多くの論文で指摘されています。
ブラックマンデーの展開
結局、ブラックマンデーに株価の急落が始まると、「ポートフォリオインシュアランス」を行っている人たちがどんどん先物を売り、売りが売りを呼ぶ展開に発展しました。これが市場の変動を大きくし、マーケットを急落させる一因となりました。
この経験から、ポートフォリオインシュアランスを採用する投資家が増えることは市場にとってリスクがあると認識され、現在ではあまり採用されなくなりました。
サーキットブレーカーの導入
ブラックマンデーをきっかけに変わったこととしてサーキットブレーカーの導入があります。サーキットブレーカーとは、株価の変動が一定水準以上になった場合に強制的に市場での取引を停止する制度です。
市場がパニック状態になった時に一時的に市場を止め、冷静になる時間を提供する仕組みです。
テクニカルな要因と市場の安定性
ブラックマンデーに関して、テクニカルな要因で相場が大きく下がったという面があったことは知っておくべきと思います。過去の経験から言えることは、「ポートフォリオインシュアランス」のような下がれば下がるほど売る取引は市場を不安定にする一方で、GPIFが採用しているような常に一定の資産配分を維持する運用スタイルは、下がったものを買い、上がったものを売るため、市場の安定性に大きく貢献しています。
GPIFの役割と市場の安定性
GPIFを初めとした公的年金の資産運用は、日本の金融市場の安定性に貢献している、社会において一定の役割を果たしていると言えます。健全な市場の発展には、こうした投資家の存在が不可欠です。
リーマンショックの後、ポートフォリオのリスクをコントロールする方法について何が有効だったのか、振り返る研究が盛んに行われました。その結果、リーマンショックの前後で最も安定したリターンを獲得したのは、年金運用などがよく採用している資産配分を一定に保つ戦略だったとされました。
新しい取引手法と市場への影響
新しい取引や金融商品が市場に影響を与えることは今の世の中でもあり得ます。AIを活用した機械的なトレードや高頻度取引、ETF(上場投資信託)などは、これまでにない影響を市場に与えることがあります。これらの新しい要素が市場にどのような影響を与えるかを常に注視し、適切な対策を講じることが求められます。
ブラックマンデーの教訓
ブラックマンデーの経験は、私たちに多くの教訓を与えてくれます。市場の変動に対する備えやリスク管理の重要性を再認識し、健全な市場の発展に向けて努力を続けることが必要です。
今回の日本株の急激な下落についても、これまでになかった何らかの影響が働いていた可能性があります。今後、時間をかけて研究が行われ、対策が講じられることが期待されます。重要な研究結果が出てきましたら、またご紹介させていただきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ご参考
日本では悪者のような見方をされることもありますが、空売り投資家は使命感を持ってやっている場合も多く、社会において一定の役割を果たしているのも事実です。空売り投資家なんていつも誤っている、そのように一方的に片付けられるものではないということです。