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イギリスの格差社会と増税、財政計画について

 現在、イギリスではスターマー政権が増税を検討しています。労働党は当然富裕層から税金を取りたいと考えていますが、イギリスでは富裕層の国外流出が問題となっており、富裕層の顔色をうかがわなければならない状況になっています。
 イギリスでは富の格差がとんでもない状態になっており、所得税を納めている人たちのうち、上位わずか60人で30億ポンド、6,000億円近い金額を収めているということです。増税の方法を誤ると、より一層富裕層が国外に流出してしまい、むしろ税収が減る可能性もあります。
 この記事では、富の格差が拡大するとこういうことになるということ、イギリスの格差の問題について説明します。


イギリスの所得税の納付状況

 イギリスのメディアによると、2021年から2022年度に所得税を納めた人の数は約3,300万人で、イギリスの所得税の合計金額は2,250億ポンドでした。そのうち上位60人が収めた所得税が30億ポンドということです。わずか0.002%の人が全体の1.4%の税金を収めたということになります。
 所得税以外の税金も加えると、これらの富裕層はもっと多くの税金を納めていることになります。

労働政権の誕生によりイギリスから富裕層が1万人近く海外に流出すると見られています。これは、中国に次いで2番目に多い数です。

労働党政権の政策とイギリスの富裕層の流出

スターマー政権と増税

 なぜ税金の話が注目されている理由ですが、イギリスのスターマー政権が増税せざるを得ない状況にあるからです。2024年7月にスターマー政権が誕生し、レイチェル・リーブス氏が財務大臣に就任してすぐ、政府の予算が不足していることが発表されました。
 前の保守党のスナク政権の時代に予算不足が放置されていたことを受け、スターマー政権はこれを「財政のブラックホール」と呼んでいます。この財政のブラックホールは金額にして約220億ポンド(日本円で約4兆円)に達します。この不足分をどこから取るか、誰に増税するかが課題となっています。

富裕層への増税

 スターマー政権としては、誰から取るかというと、二極化が進む社会の中で富裕層から取りたいと考えています。すでに増税の可能性を示唆していますが、これは簡単な話ではありません。富裕層が巨額の税金を納めているため、彼らがイギリスを出て行ってしまうような政策を行えば、逆に税収が減ってしまうかもしれません。
 
世界の多くの国で富裕層の数が増える中で、減少すると予想されているのは中国とイギリスです。イギリスは2028年までに富裕層が50万人以上減少すると予想されています。

イギリスを離れる理由

 イギリスを離れる理由として、国家財政が厳しい状況にあることが挙げられます。物価上昇や医療崩壊など、さまざまな問題を抱えていますが、それらに対応する財源が不足しています。労働党政権では増税が行われる可能性がより高まるだろうと考えられてきました。スターマー政権が実際に増税を行うと、富裕層の国外流出が加速する可能性があり、非常に注目されています。
 労働党政権も、ごくわずかな富裕層の顔色をうかがわざるを得ない状況になっています。

イギリスでは物価上昇に悩まされるようになり、プレタマンジェのサブスクはその後2022年に25ポンド、2023年に30ポンドへと段階的に値上げされました。

プレタマンジェの戦略変更と英国コーヒー業界

富裕層の流出動向

 最近のデータによると、2017年から2023年までの間に約1万6,000人の富裕層がイギリスを去りました。これは富裕層の移住をサポートする移住アドバイザーのデータに基づいています。
 ここで言う富裕層とは、金融資産が100万ドル(約1億5,000万円)以上ある人のことです。2023年までに約1万5,000人が流出し、2024年も9,500人が流出すると予想されています。

国全体の貧困化

 イギリスの人口は移民によって増加しています。2023年には人口が1%増え、6,830万人になりました。イギリスでは出生数よりも死亡数の方が多いため、人口増加は移民によるものです。
 富裕層がどんどん出て行き、逆に移民が増加している結果、国全体が貧しくなっているというのが現在のイギリスの状況です。スターマー政権が富裕層に対してどのように増税を行い、富の格差を縮めていくのかが注目されていますが、富の格差を縮めようとする試みは非常に難しいです。富裕層から税金を取ろうとすると、彼らはタックスヘイブンのドバイなどに移住してしまいます。経済活動を活性化させながら富の格差を縮めることは極めて難しいです。

今後の財政計画

 レイチェル・リーブス財務大臣は、2024年10月30日に税収と支出に関する計画を公表する予定です。ここで「財政ブラックホール」をどう埋めるのかが明らかになるでしょう。政府がどのような方針で進めていくのか、今後の報道も注目されます。

マーケットの反応

 マーケットの反応ですが、今回の220億ポンドの「財政ブラックホール」に対する影響はそれほど大きくありません。
 しかし、政府が増税に積極的な姿勢を示せば、経済にはマイナスの影響があり、金利が低下、ポンド安で反応する可能性があります。一方で、増税に対して消極的な姿勢を示せば、財政運営に懸念が生じ、金利が上がる可能性があります。
 スターマー政権が今後どのように財政運営を行っていくのかが注目されています。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

労働党政権の方針
 7月に労働党政権が誕生してから、犯罪者の取り締まりを強化していく方針を打ち出しています。これまで万引きを含めた窃盗は警察が取り締まらなくていいということになっていましたが、これを見直して取り締まりを強化していくことになりました。

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