見出し画像

大和証券の航空機リース事業への出資について


 2024年11月、大和証券が航空機リースを手掛けるアイルランドの投資会社に出資するとの報道がありました。このニュースを受けて、「また新しいリスク商品が出てきたな」と感じた方もいるかもしれません。
 しかし、実際には航空機リースという商品自体は昔から存在しています。私自身、約20年前に証券会社で個人営業を担当していた頃、この商品を顧客に提案したことがあります。当時は非常に先進的な商品と受け止められていました。
 この記事では、航空機リースとはどのような商品なのか、そしてなぜ今、大和証券がこの分野に力を入れようとしているのかについて詳しく解説します。

航空機リースの仕組み

 航空機リースの基本的な仕組みを説明します。まず、リース提供会社が顧客から資金を集め、その資金で航空機を購入します。その後、購入した航空機を航空会社に貸し出し、リース料を受け取るというビジネスモデルです。
 航空会社にとって、航空機を自前で所有するには多額の資金が必要となります。そのため、航空機を購入せず、リース契約を結ぶことで資金負担を軽減しているケースが多く見られます。
 リース会社は投資家から資金を調達し、そのリース料を投資家に還元する役割を担っています。

航空機リースの投資メリット

 航空機リースの主な投資メリットは以下のとおりです。

1.リース料の受け取り
 リース契約期間中、航空会社からのリース料が収益として得られます。
2.航空機売却益
 契約期間終了後、航空機を売却する際に利益を得られる場合があります。これは航空機の種類や市場状況により異なります。
3.節税効果
 航空機は実際に使用される資産であり、耐用年数があるため減価償却が可能です。購入費用を損金に計上することができるため、節税対策としても活用されます。このため、中小企業の節税目的のニーズも高いと言われています。

航空機リースのリスク

 航空機リースには以下のようなリスクが存在します。

1.機体喪失リスク
 航空機が墜落などで喪失した場合、投資元本が回収できなくなる可能性があります。
2.市場環境の変化
 やや特殊な例ですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック時には、航空機の運航停止が相次ぎました。このような状況では契約内容次第でリース料が支払われない場合があります。最近ではリース料もコロナ以前の水準に回復してきています。
3.航空機の種類や路線の影響
 機体の種類や利用される路線によって、契約終了時の売却状況が大きく異なる可能性があります。

大和証券の航空機リースへの注力理由

 大和証券がアイルランドの航空機リース会社に出資した背景には、富裕層や中小企業オーナーを対象としたサービス拡充の狙いがあります。
 
日本には約2,100兆円もの金融資産が存在し、その多くが高齢者によって保有されています。この資産規模は今後も増加が見込まれ、富裕層ビジネスは安定的な収益源として注目されています。

オルタナティブ資産への注力

 ネット証券が投資信託などを提供する中で、対面営業で販売しやすい商品としてオルタナティブ資産(株式や債券以外の資産)への注力が求められています。航空機リースは、節税効果も期待できる商品として、法人契約が中心になると予想されるため、特に中小企業オーナー層に支持されると見られています。

 オルタナティブ資産とは伝統的な投資対象資産である上場株式、債券に対する「代替的(オルタナティブ)」な投資資産の総称です。

年金積立金管理運用独立行政法人HP

大和証券と野村証券の関係

 かつて日本の証券業界では、野村証券が最大手として君臨し、大和証券はその背中を追いかける存在でした。大和証券の経営戦略にも、長らく「野村を意識する」という姿勢が色濃く見られました。
 しかし近年では、SBI証券や楽天証券といったネット証券が台頭し、メガバンクや海外プライベートバンクが富裕層向けビジネスに進出しています。

大和証券の方針転換

 こうした環境の変化により、大和証券が野村証券を追いかける必要性は薄れつつあります。実際、大和証券の社長は「もはや野村を意識する状況ではない」と明言しています。
 一方で、野村証券は投資銀行として欧米市場に挑戦を続けていますが、成果は芳しくありません。不祥事も相次ぎ、業界内での存在感が揺らいでいるのが現状です。

野村証券の社員が80代の顧客宅を訪問した際、睡眠作用のある薬物を飲ませた上で放火しようとしたとして、殺人未遂及び放火容疑で逮捕されるという重大な事件が発生しました。

注意喚起、証券マンを自宅に招くリスク

 このような状況を背景に、大和証券は独自の路線を模索し、オルタナティブ資産への注力を進めています。航空機リース事業も、その戦略の一環と言えるでしょう。

証券会社を取り巻く環境の変化

 証券業界では、投資信託の手数料引き下げや仕組債の販売トラブルなどにより、収益環境が厳しくなっています。こうした背景から、高い手数料を得られるオルタナティブ資産への注力が進められています。
 
大和証券が航空機リースに力を入れるのも同様です。また、プライベートクレジットファンド(貸付型ファンド)など、リスクが高く複雑な商品の販売にも力を入れています。

まとめ

 今回の大和証券の動きは、ネット証券や海外プライベートバンクの競争が激化する中で、富裕層向けビジネスを強化する戦略の一環です。航空機リースは節税効果が期待できる商品として、法人契約が中心になると予想されるため、過去の仕組債販売のようなトラブルは少ないと見られています。
 こうしたオルタナティブ資産がどのように発展し、投資家にどのような影響を与えるか注目されています。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

国内金利上昇の影響
 国内金利の上昇で悪影響が出ている国内の金融機関があること、特に保険会社の中で株を持っていなくて国内債で運用してきたところが厳しい状況にあることがわかります。

ソニー生命の損失の発生原因とALMの解説

サイトマップ(目的別)はこちら

いいなと思ったら応援しよう!