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選挙結果がマーケットへ与える影響の考察


 日本では為替が円安で推移しているのに関わらず、株式市場が下落し、債券も売られて金利は上昇しています。「トリプル安」の展開です。衆議院議員選挙で自民・公明が過半数を取れない可能性が意識されてきています。
 今回の日本の選挙結果については、いろいろなシナリオが考えられるため、マーケットの反応も単純ではなさそうです。この記事では日本の衆議院議員選挙で自民・公明が過半数を取れない場合にマーケットがどのような反応をするかについて、個人的な見解を説明します。

 期日前投票をしてきました。今後ともよろしくお願いいたします(TeamモハP)。

自民・公明が過半数を取れない場合

 まず、自民・公明が過半数を取れないシナリオで、どのような政権ができるかについてです。一つの可能性として、新たな連立パートナーとして国民民主党か日本維新の会を取り込むというパターンがよく言われています。
 国民民主党か日本維新の会、どちらを取り込むかは、両政党がどの程度の議席を取り、自民・公明の議席がどれだけ足りないかによっても変わってくるでしょう。
 どちらの政党も積極的な財政政策と金融緩和を主張しています。

マーケットへの影響

 このシナリオの場合、石破首相は続投になるとしても、国民民主党か維新の影響が加わることで、これまでよりは積極的な財政政策、そして金融緩和政策を施行する可能性があります。株式市場にとってはポジティブであり、為替は円安、金利は低下要因になると考えられます。

石破首相は10月12日、党首討論会で日本銀行(以下日銀)は政府の子会社ではないと述べました。

法令に見る日銀と政府の関係

 ただし、自民・公明で過半数割れから連立交渉に時間がかかったり、政権ができてから政策調整などに時間がかかるなど、何かある度になかなかまとまらない事態も想定されるため、選挙直後の反応としては株安・円高・金利低下になることもあり得るでしょう。その後、次第に株価や為替は戻っていく、そんなイメージになるかもしれません。

立憲民主党を中心とする政権ができた場合

 自民・公明が過半数割れし、野党に転落、立憲民主党を中心とする政権ができた場合はどうなるでしょうか。
 この場合、首相は交代することになります。これはかなり混乱を招く可能性があります。

首相交代と政権の不安定化

 この状況は「ハングパーラメント」に近い状態になるのではないかという見方があります。つまり、どこかと連立を組んだとしても、何かある度に話がまとまらず、何も決められない政権になってしまうのではないかという懸念です。

ハングパーラメント(hung parliament)
宙ぶらりん議会、どの政党も過半数を取れていない状態

 立憲民主党は財政健全化、金融政策の正常化路線を掲げています。

マーケットへの影響

 財政健全化と何も決められない政治によって景気が冷え込んでしまい、日銀の利上げは遠のく可能性が高いのではないでしょうか。その結果、株安・円高、そして金利低下になるのではないかと考えます。

自民・公明が過半数を維持した場合

 自民・公明で過半数を維持した場合、おそらく石破首相は続投でしょう。一部には石破首相が辞任に追い込まれるとの見方もあるかもしれませんが、与党が選挙で過半数を維持したにも関わらず、選挙後に首相が辞めたというケースは戦後ありません。そのため、過半数を維持すれば石破首相続投になると見るのが妥当でしょう。

参議院議員選挙を見据えた政策転換

 しかし、石破首相の支持率はすでに非常に低い水準になっており、このままでは来年の夏の参議院議員選挙も厳しい結果になるでしょう。そのため、石破首相は緊縮財政や金融政策の正常化を再び封印し、ばらまき傾向になる可能性があります。

マーケットへの影響

 その場合、株価は事前に下がっていたら持ち直し、為替は円安、金利は金融緩和と財政拡張で相殺されてあまり変わらない、そんな展開になるのではないでしょうか。

消費税減税についての考察

 今回の選挙で消費税の減税を主張している政党があります。実際に実施しても大丈夫だと思いますか、という質問をいくつかいただいています。規模にもよりますが、2%下げる、5%下げる、全部なくす、いろいろな案が出ていると思います。

金利と景気への影響

 消費税を下げると、金利はある程度上がることになるでしょう。しかし、これは必ずしも悪いことではなく、景気が良くなることで金利が上がるという面も当然あります。減税して景気が良くなる面と、金利上昇によって景気が冷やされる面、前者の方がより大きくなるには、消費税が下げられて人々が消費を増やすかどうかにかかっています。
 結局、消費税が下がっても、それを貯蓄に回すばかりだと、あまり景気は良くなりません。そういう意味では、政権がこれから景気をしっかりと下支えしていく、そうした安心感・期待感が生じるかが非常に重要でしょう。

金利上昇幅の試算

 消費税を仮に2%下げたらどれぐらい金利が上昇するかですが、大体、消費税1%で2兆円ぐらいの税収だとすると、2%下げて4兆円国債発行を増やすことになります。

日銀の国債購入減額と金利の関係

 一つの参考として、現在、日銀の国債購入は毎四半期4,000億円程度減らしています。これは7月末から行っています。

国債買入れの減額計画
 国債買入れについては、四半期ごとに4,000億円程度買入れ額を減らしていくとしています。現在月間5.7兆円程度の買入れを行っているところから、2026年1-3月期に買入れ額を3兆円程度にするとしています。金額だけ見ると事前の予想通りの結果だったと言えます。

日銀の利上げと国債買入減額計画の詳細と評価

 これらは7月に決定され、金融政策としては他に短期金利の引き上げも行っています。国債購入の減額の影響だけを分析するのは簡単ではありませんが、今年の夏以降、大きく金利は上がっていないと言えます。そのため、年間4兆円程度の国債発行増であれば、そこまで大きな金利上昇をもたらすものではないだろうと思っています。

マーケットが注目する点

 日銀の国債購入と財務省による国債の発行は必ずしも同じ影響になるわけではありませんが、一つの参考にはなるでしょう。どれだけ消費税を下げるかよりも、その後の財政運営に対する方針など、そうしたところのほうがマーケットは反応することになるかもしれません。

まとめ

 日本の選挙前に自民・公明が過半数を取れなかった場合にマーケットがどう反応するかについて、私の考えを説明しました。あくまで私の見方であり、想定したシナリオではなく、また別のシナリオが実現する可能性もないわけではありません。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

連立政権での調整
 ただし、自由党として単独で過半数を持っているわけではないので、連立を組む他の政党との政治的判断によって選挙前に主張していたことと異なる政策を実施せざるを得ない面もあります。ロミナ氏は、そうしたことについても率直に説明し、結果が出なければ辞任するという立場で挑んでいます。

スウェーデンのロミナ・ポールモクタリ氏の解説

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