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プレタマンジェの戦略変更と英国コーヒー業界


 プレタマンジェは、イギリスのコーヒーチェーンであり、特にロンドンでは多くの店舗を展開しています。イギリスにはコンビニが少ないため、お腹が空いた時や何か飲みたい時に、プレタマンジェを含めたコーヒーショップを利用することが多く、生活の一部となっている人も多いです。
 イギリスのコーヒーショップには他にもカフェネロやコスタ、スターバックスなどがありますが、プレタマンジェはベジタリアン向けの店舗を廃止したりと話題が多く、これまでにもメディアで何度か取り上げられてきました。

ベジタリアン向け店舗「ベジー・プレット」の閉店
 2016年から、プレタ・マンジェはベジタリアン向けの店舗「ベジー・プレット」を拡大していましたが、これを2022年末に全て閉店すると発表しました。

コーヒーショップに見るイギリス経済の変化

プレタマンジェの歴史と展開

 プレタマンジェは1986年に2人の若者が、イギリスの学生やビジネスマンが添加物まみれの食べ物ばかりを食べていることに疑問を持ち、新鮮で美味しい食べ物を提供しようと店をオープンしたのが始まりです。その後、店舗を拡大し、現在はイギリス国内に498店舗、世界で697店舗を展開しています。プレタマンジェという名前はフランス語で「出来たての食事」という意味で、各店舗で調理された出来たての食事が提供されています。

サブスクリプションサービスの変更

 プレタマンジェは9月からサブスクリプションサービスを大きく変更しました。これまでは月に30ポンド払うと、入れたての飲み物を1日5杯まで飲むことができるというものでしたが、これを月5ポンド払うと1日5杯まで半額で飲み物を買うことができるというサービスに変更しました。
 飲み物の値段については、日本で言うところのコーヒー、イギリスではアメリカーノが1杯3.6ポンド(約700円)です。月に5ポンド払うと毎日5杯まで1.8ポンドで買えるというわけです。1日アメリカーノ3杯を月に20日飲んだとすると、月間の支払いは113ポンドになります。これまでは30ポンドで済んでいたところから大きな値上げとなります。サラリーマンなどでオフィスに行く時に1日2〜3杯飲むという人にとっては大打撃です。

サブスクリプションサービスの歴史

 プレタマンジェのサブスクリプションサービスは2020年にスタートしました。当時、業界では新しいサービスで、コーヒーをたくさん飲む人たちにとっては非常にメリットの大きいものでした。
 このサービスが始まった当初は月20ポンドでした。どの業界でもサブスクビジネスが急拡大していた時期であり、コロナのパンデミックの影響で人々が外に出歩かなくなっていたこともあって、まずは店舗に足を運んでもらおうという意図もあったかもしれません。イギリスでは物価上昇に悩まされるようになり、プレタマンジェのサブスクはその後2022年に25ポンド、2023年に30ポンドへと段階的に値上げされました。
 プレタマンジェが発表したデータによると、2023年時点でサブスクで提供されている飲み物は1週間に125万杯に達していました。

サブスクリプションサービス見直しの背景

 今回のサブスクサービスの大幅な見直しの背景には、最近のコーヒー豆の価格上昇が影響していると見られています。天候不順などで一部の地域で供給が減少し、価格の上昇傾向が続いています。こうした豆の価格上昇を受けて、サブスクサービスを見直さざるを得なくなったと考えられます。
 しかし、2020年以降定着していたサブスクサービスを大きく見直すことになり、顧客が離れていく可能性もあります。これまでサブスクでコーヒーを飲めるからランチもプレタマンジェで食べようと思っていた人たちが別のところで食べるようになるかもしれません。
 
非常に危険な戦略変更と言えるかもしれませんが、そこまでやらなければならないくらい、今のコーヒー価格の値上がりはサブスクサービスにダメージを与えていると考えられます。

経営への影響

 今回の変更が失敗に終わった場合、プレタマンジェの経営が一気に傾く可能性もあります。元々、コロナパンデミックの前から赤字になっていて、近年サブスクの成果があって黒字に転換していたため、今回のサブスクの変更を受けて再び赤字に転換する可能性もあります。小売業界のアナリストも今回のプレタマンジェのサブスク見直しについて厳しい見解を持つ人が多いようです。
 ただ、値上げやロイヤリティプログラムの縮小はプレタマンジェだけではありません。競合のコスタやスターバックスもロイヤリティプログラムを変更しています。星が溜まると無料でコーヒーがもらえるというものですが、コーヒーと交換するために必要な星の数を多くするなどの変更を行っています。現状、プレタマンジェほど大きな変更にはなっていないようです。

イスラエルへの店舗展開の白紙化

 プレタマンジェに関しては今年にもう一つ大きな決断がありました。それは、イスラエルへの店舗展開を白紙に戻したことです。
 スターバックスがイスラエルボイコット運動の対象になり、経営に大きな打撃を受けています。イギリスにはイスラム系の人々も多く、イスラエルをサポートしているとみなされてボイコットの対象になると、大きな打撃を受ける可能性があります。イスラエルとハマスの戦闘が始まる前に、プレタマンジェは世界的に店舗を展開する戦略の中でイスラエルに40店舗を出展する計画でしたが、これをキャンセルしました。
 プレタマンジェがボイコットの対象になったという話は聞かれていませんが、このイスラエル問題が世界への店舗展開に大きな影響を与えています。

イスラエルでの戦争が始まって以降、スターバックスの労働組合がパレスチナを支持すると表明しました。その結果、パレスチナ支持派とイスラエル支持派の両方から批判されています。

イスラム圏の欧米ブランドのボイコットの解説

プレタマンジェの今後

 ロンドンに行ったことがある人なら、プレタマンジェでコーヒーを飲んだことがある方は多いでしょう。空港や駅など至るところにプレタマンジェがあり、比較的安い値段で飲み物や食べ物を提供しています。食べ物の味も決して悪くなく、スタイリッシュな雰囲気も好評です。
 どうしてもプレタマンジェにこだわるという顧客は少ないかもしれません。これまでコーヒーをたくさん飲む人にとっては非常に魅力的なサブスクリプションでしたが、そのサブスクリプションが大きく変更されたことで、そうした顧客が離れるかどうかが注目されています。


ご参考

私自身、コーヒーがないと仕事ができない、コーヒーなしでは生きられないという生活を送っています。毎日、コーヒーを飲んでいます。

ラッキンコーヒーのスターバックスとの差別化

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