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トランプ氏が勝利した場合のドイツ経済


トランプ氏の政策と国際関係

 アメリカの大統領選挙とその経済への影響について解説します。もしトランプ氏が再び大統領になった場合、その影響はどのようになるのでしょうか。
 トランプ氏が再び大統領になった場合、その政策によって恩恵を受ける国と、逆に苦しむ国が出てくることは間違いありません。例えば、中国には関税を60%にするという発言があり、非常に厳しい状況に立たされる可能性があります。
 また、現在経済成長率が低いドイツもまた、トランプ氏が大統領になった場合、厳しい状況に立たされると見られています。ドイツのケルン経済研究所が2024年3月4日に発表した見通しによれば、もしトランプ氏が大統領選挙に勝利し、彼が提唱しているような関税の引き上げを行った場合、2028年までのドイツのGDPは約1.2%押し下げられるとされています。

トランプ氏の関税政策

 トランプ氏は、大統領になったら輸入関税を10%引き上げると言っています。中国に対しては60%の関税をかけるとも言っています。これらの関税の引き上げが実施されると仮定すると、ドイツの輸出は大きく落ち込み、民間投資が大幅に減少する結果、GDPを1.2%程度押し下げることになるとされています。関税が引き上げられれば、ドイツからアメリカへの輸出が減少すると予想されます。
 ドイツの場合、ドイツの企業が中国に持っている工場で生産した自動車などをアメリカに輸出する機会が減るため、中国への関税もドイツにマイナスの影響を与えます。さらに、関税の引き上げにより中国経済が落ち込むと、ドイツの輸出も減少すると予想されます。

ドイツのGDPへの影響

 そして、このドイツへのGDPマイナス1.2%という予想は、アメリカだけが関税の引き上げを導入した場合の話です。中国が報復措置を導入した場合のことは想定されていません。そこまで想定に入れると、ドイツのGDPはマイナス1.4%の可能性があるとされています。

現在のドイツ経済の状況

 現在のドイツ経済の状況を見てみると、2023年第4四半期のGDP成長率は前期比マイナス0.3%となり、第2四半期、第3四半期にゼロ成長となった後、マイナス成長に落ち込んでいます。輸出は前期比マイナス1.6%と連続で減少し、輸入もマイナス1.7%でこちらも連続のマイナスとなっています。一方、個人消費は前期比プラス0.2%でプラスになりました。第3四半期がゼロだったので、少しだけ上向いています。
 設備投資などの状況を示す固定資本形成はマイナス1.9%と大きく落ち込んでいます。特に、固定資本形成のうち機械・機器がマイナス3.5%、建設投資がマイナス1.7%と大きなマイナスになっています。固定資本形成を民間部門と政府部門に分けると、民間がマイナス3.1%、政府がプラス0.8%となっており、民間投資が非常に弱いことが分かります。

ドイツ経済の今後の見通し

 2023年12月17日にドイツ政府はEV補助金を前倒しで終了しました。これは財源が確保できないなどの問題があったことが要因でした。
 マーケットをよく見ている方は、PMIという経済指標を見ていると思います。このPMIというのはパーチェシング・マネジャー・インデックスと言われるもので、日本語では購買担当者指数と言われています。購買担当者は需要がどれぐらいあるかを考えながら仕入れをしますので、その企業の生産と出荷の状況をよく理解しています。その購買担当者に景気感を調査したのがPMIという経済指標です。改善と答えた人の割合が多い場合は数値が50を上回り、50を下回ると悪化と答えた人が多いということを示しています。
 ドイツの製造業PMIは1月が42.3、2月が42.5と低空飛行が続いています。サービス業PMIについても1月が48.2、2月が48.3と50を下回って推移しており、今のところ上向きの気配は見えていません。

大統領選挙とドイツ経済

 こうした状況の中で、もしトランプ氏がアメリカ大統領選挙に勝利し、関税引き上げを実際に行ったら、ドイツ経済は目も当てられない状況になると考えられます。
 ドイツ経済については中国との関係性が非常に強固で、中国なしでは成り立たないと言えるほどの企業も多く存在します。そして、製造業を中心とした経済構造という点においても、トランプ大統領の政策と相性が悪い国と言えます。
 そのため、ドイツでは非常に警戒感が強まっています。2010年代まで中国と密接な関係で恩恵を受けてきた国が、その揺り戻し、つまり貿易摩擦と中国経済の低迷で共に苦しい状況に陥る、そういったフェーズになっていると私は見ています。

ドイツの国民性と経済への影響

 ただし、ドイツ人というのは非常に忍耐強い人たちでもあります。元々お金があっても一生懸命貯金をして、そんなに無駄遣いをしない、そういう国民性でもあります。ですので、この苦しい局面も耐え忍ぶということになるのではないでしょうか。

 ドイツの貯蓄率は他の国に比べて今でも非常に高い水準になっています。2022年のデータでは、世帯年収の20%程度が貯蓄に回っているとされています。これは、EU全体の12.7%を大きく上回っています。

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トランプ氏の大統領選挙とユーロ圏の影響

 トランプ氏が大統領選挙に勝利した場合、ドイツなどの経済成長率が大きくマイナスになる可能性がありますので、ユーロにとってもネガティブな材料になるでしょう。ただ、もしトランプ氏がFRBに緩和政策を促すような形になれば、相対的にユーロが強まる可能性もあるので、その辺りは慎重に見ていく必要があります。
 また、ユーロ圏への影響ですが、ウクライナ戦争がどうなるのかというのも非常に大きな影響を与えることになります。さらに、移民・難民がウクライナからEUの国に押し寄せるようなことになったり、軍事的な支援を増額しなければならないような状況になると、ユーロ安に繋がりやすいということになるでしょう。


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