フジテレビ問題に見る日本の機関投資家の闇
この記事ではフジテレビに関連する話題を取り上げます。本来、このようなテーマはあまり扱わないのですが、アメリカの投資ファンドが関与していることから、私自身が言いたいこともあり、解説させていただきます。
中居正広氏とフジテレビの問題
現在、元SMAPの中居正広氏が起こした問題をめぐり、フジテレビにさまざまな疑惑が浮上しています。フジテレビ側はこれを否定していますが、一部では関与が疑われる状況もあり、同局の役員や社員にまつわる別の疑惑もネット上で取り沙汰されています。
ダルトン・インベストメンツの声明
2024年1月14日、フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスの大株主であるアメリカの投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」は公式ウェブサイトで声明を発表しました。
そこで同社は、フジテレビにコーポレートガバナンスの重大な欠陥があることを指摘し、外部の専門家による第三者委員会を設置し、事実関係を調査すべきだと求めました。対応が遅れたり曖昧になったりすることで、視聴率の低下やスポンサー離れにつながり、株主価値がさらに損なわれる可能性があるとしています。
これに対し、世間では「よく言ってくれた」といった肯定的な意見が一部で見られました。
ダルトン・インベストメンツは1999年設立の投資ファンドで、いわゆる「アクティビストファンド」と呼ばれる存在です。企業価値を高めるために大株主として積極的に経営に口を出すスタンスを取り、日本市場にも早い段階から投資してきました。
アクティビストファンドの役割と日本の状況
アクティビストファンドが株主として企業に厳しい要求を行うことは、企業価値を高めるための投資家として当然の行動です。しかし、日本ではこれが当たり前のこととして認識されていません。その背景には、日本特有の持ち合い株式文化や機関投資家の消極的な姿勢があります。
日本の機関投資家は、顧客の資産を預かる立場でありながら、投資先企業の非効率な経営を放置してきた過去があります。この姿勢はリーマンショック以降、改善が求められるようになり、2014年には金融庁が「責任ある機関投資家の原則(スチュワードシップ・コード)」を発表しました。
この原則では、機関投資家が投資先企業の企業価値を向上させるために対話を行うべきだとされています。
日本の機関投資家の課題
現在、多くの日本の機関投資家がスチュワードシップ・コードを受け入れ、また「責任投資原則(PRI)」にも署名しています。しかし、実際には企業価値向上に寄与する具体的な行動が不足している場合が多いと指摘されています。一部の投資ファンドは、企業に質問状を送るだけで終わり、本来期待される対話や改善要求には至っていません。
例えば、今回のフジテレビの問題に対し、ダルトン・インベストメンツが行動を起こした一方で、日本の機関投資家からは何のアクションも見られません。この姿勢は、投資家としての責任を果たしていないと言わざるを得ません。
フジ・メディア・ホールディングスの株主構成
フジ・メディア・ホールディングスの株主について、2024年9月30日時点の筆頭株主は「日本マスタートラスト信託銀行」です。この信託銀行は三菱UFJ系列に属し、投資信託の運用を担当しています。
このほかにも、複数の機関投資家が株主として名を連ねていますが、これらの日本の機関投資家はフジテレビに対して積極的な改善要求を行っている様子は見られません。
ダルトン・インベストメンツのようなアメリカのアクティビストファンドがこのような厳しい要求を出したことで、日本の機関投資家の消極性が際立つ形となっています。本来であれば、これらの日本の機関投資家がダルトンに先んじてフジテレビに物申すべき立場です。
総括
フジテレビの問題を通じて、改めて日本の機関投資家の課題が浮き彫りになりました。機関投資家は単に資金を運用するだけでなく、投資先企業のガバナンスや経営改善に積極的に関与する責任があります。
ジャニー喜多川氏の問題もそうですが、そういう会社は信頼されませんよ、お客さんを失いますよという社会になり、機関投資家はそれを企業に求めていかないといけない立場です。日本の機関投資家が、ダルトン・インベストメンツのように積極的な行動を取れるようになるには、まだ多くの改善が必要です。
中居正広氏の騒動がきっかけとなった今回の問題が、日本の投資家文化の改革に一石を投じるものとなることを願っています。
ご参考
サイトマップ(目的別)はこちら