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もしも投資信託を運用する会社が破綻したら


 この記事では、以前から多く寄せられていた質問、「投資信託を運用する会社が破綻したらどうなるのか?」について解説します。
 これは非常に良い問いかけだと思います。なぜなら、一般的な説明では「大丈夫ですよ、問題ありません」という簡単な答えが多い一方で、実際には少し注意すべき点や落とし穴が存在する場合があるからです。そこで制度上の仕組みと実際の影響について詳しく解説します。

投資信託の仕組み:運用会社と信託銀行の役割

 まず、投資信託は誰が資産を管理しているのかという基本的な仕組みを整理します。例えば、「eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)」のような人気の投資信託があります。
 この商品を運用しているのは三菱UFJアセットマネジメントですが、資産を預かっているのは同社ではありません。

資産を管理するのは信託銀行

 投資信託の資産は、信託銀行と呼ばれる専門機関に保管されています。日本で代表的な信託銀行には次のようなものがあります。

  • 日本マスタートラスト信託銀行(三菱UFJ系列)

  • 日本トラスティ・サービス信託銀行(三井住友系列)

  • 日本カストディ銀行(みずほ系列)

 つまり、運用会社である「○○アセットマネジメント」や「○○投信」は、実際には資産を保管しておらず、信託銀行に対して運用指示を出す役割を担っているだけです。そのため、運用会社が破綻しても、信託銀行が資産を保管している限り、投資家の資産が直接失われることはありません。

運用会社が破綻しても問題ないと言われる理由

 一般的に「運用会社が破綻しても問題ありません」と説明される理由は以下のとおりです。

資産は信託銀行に保管されている

 運用会社が破綻しても、資産は安全に管理されています。

運用の引き継ぎが可能

 破綻した運用会社の業務は、他の運用会社が引き継ぐ仕組みがあります。

 この仕組みのおかげで、理論上は運用会社の経営が傾いても投資家の資産には影響がないとされています。

実際の影響:意外と面倒なこともある

 ただし、現実には運用会社の経営破綻や合併が発生すると、投資家にとって面倒な事態が起こる可能性があります。

1.運用中断や積み立て停止のリスク

 例えば、運用会社の破綻時に運用の引き継ぎがスムーズに行われない場合、一時的に運用が中断したり、積み立てができなくなったりすることがあります。
 過去の例として、2003年に廃業した「野村ファンドネット証券」では、顧客の保有資産は別の証券会社に移管されましたが、その後積み立てができなくなったケースもありました。

2.運用方針の変更やファンドの統合

 合併によって運用方針が変更されることや、同様のコンセプトを持つファンドが統合される可能性もあります。
 例えば、大手運用会社が複数の類似ファンドを統合する際、既存のファンドが終了することがあります。これにより、新たに投資先を探さなければならなくなることがあります。

3.ファンドの運用終了リスク

 運用残高が少ないファンドは、採算が取れないとして運用を終了することがあります。運用終了時には資産が払い戻されますが、長期投資を計画していた場合、新たなファンドを探す手間やコストが発生する可能性があります。

実際の事例:資産運用会社の合併とその影響

 日本では、資産運用会社の合併が頻繁に行われています。
 例えば、みずほフィナンシャルグループの「アセットマネジメントOne」という会社は、複数の運用会社が合併してできたものです。この合併により、似たようなコンセプトの投資信託が多数存在する状態になりました。その結果、一部の投資信託が運用を終了し、投資家に払い戻しが行われるケースも出てきました。

投資家が注意すべきポイント

1.信託銀行の信用力を確認

 信託銀行が資産を管理しているとはいえ、どの信託銀行が預かっているのかを確認しておくことは重要です。

2.運用会社の経営状況をチェック

 運用会社が独立系で規模が小さい場合、経営状況が悪化するリスクがあります。大手金融グループの傘下にある運用会社であれば、このリスクは低いといえます。

3.類似ファンドの有無を確認

 投資信託の運用終了リスクに備え、似たようなコンセプトを持つファンドを事前に把握しておくと安心です。

まとめ

 投資信託を運用する会社が破綻しても、基本的には資産が直接失われることはありません。しかし、運用が中断したり、ファンドが終了したりするリスクがあるため、事前に仕組みやリスクを理解しておくことが大切です。
 投資家としては、運用会社の経営状況や信託銀行の信用力についてもしっかり確認し、必要に応じて分散投資を検討すると良いでしょう。引き続きよろしくお願いいたします。


ご参考(もしもの話の記事のまとめ)

■ 南海トラフ地震が金融市場に与える影響の一考察(2024/8/11)
■ もしも人民元が変動相場制に移行したら(2024/8/21)

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