インド経済と玉ねぎと政策金利の話
この記事ではインド経済について説明します。インドの物価高騰、食品の価格が消費者物価指数に与える影響、玉ねぎと政策金利の関係にご注目いただけたらと思います。
インドの消費者物価指数の上昇
2024年10月14日に発表されたデータによると、インドの9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で+5.49%となり、8月の+3.65%から大幅に上昇しました。このところ比較的安定していたインドの物価が急上昇した主な要因は、食品の価格高騰です。
一般的に、中央銀行が金融政策を実施する際には、食品などの変動が激しい項目を除外して考えることが多いですが、これは主に先進国の話です。
食品価格の重要性
インドのように一人当たりGDPが3,000ドル以下の国では、人口の多くが消費において食品に依存しています。そのため、食品の価格動向は全体的な消費者物価に大きな影響を及ぼします。
日本の消費者物価指数において食品の構成比は27%、アメリカでは13%であるのに対し、インドでは46%が料品で占められています。このため、インドにおいては食品の価格が消費者物価全体に与える影響が非常に大きいのです。
食品の具体的な価格動向
インドの食品全体の価格は前年同月比で+8.36%上昇しました。特に玉ねぎやニンニクなどが顕著に値上がりしています。玉ねぎは前年同月比で+66.1%、ニンニクは+70.9%、じゃがいもは+65.0%、トマトは+42.2%の上昇となっています。
玉ねぎの価格上昇が特に注目される理由は、インドの多くの家庭でカレーを主食としており、玉ねぎが頻繁に使用されるためです。そのため、玉ねぎの価格と消費者物価指数の動きには高い相関関係があります。
悪天候による影響
玉ねぎの価格上昇の主な要因は、悪天候によるものです。今年の6月から9月にかけてインド各地で大雨が降り、洪水が発生しました。この豪雨は玉ねぎの収穫やサプライチェーン全体に影響を及ぼし、結果として価格高騰に繋がっています。
また、10月以降も例年より多くの地域で降水量が多くなる見込みであり、一部の作物が不足する状態が続く可能性があります。
中央銀行の政策
こうした食品価格の高騰を受け、インドの中央銀行は利下げに対して慎重な姿勢を示しています。現在の政策金利は6.5%で、2022年前半から利上げを続けてきました。インフレが落ち着いた段階で利下げを開始することを考えていた中央銀行ですが、食品価格の上昇が顕著になってきたため、利下げにはまだ早いと判断しています。
10月の会合では、中央銀行総裁が「今利下げを開始することは危険」と述べ、当面の間、利下げの可能性が低いことを示しました。世界的には利下げを開始している中央銀行も多い中、インドは独自の政策を進める方針を明確にしています。
ディワリとその影響
また、10月31日から数日間にわたって行われる「ディワリ」という祭りも重要な要素です。この祭りはヒンドゥー教の三大祭りの一つであり、闇に対する光の勝利や悪に対する善の勝利を祝うものです。ディワリの期間中、人々は家の中や路上でオイルランプに火をつけたり電飾で飾ったりして街中を明るくするそうです。インドの多くの地域が幻想的な雰囲気になると言わ れています。
この大事な祭りの時期に玉ねぎの価格が高騰しているのはすごく残念なことです。玉ねぎの価格高騰が影響し、伝統的な料理に必要な食材が手に入らないことが懸念されています。
ロンドンのディワリ
ディワリの祭りでは、花火や爆竹も盛んに使用され、街中が賑やかになります。
私はインドのディワリは見たことがありませんが、ロンドンでディワリを祝っているインド系の人々が花火を打ち上げる様子を目にしたことがあります。公園などでインド系の人々が集まり、花火をバンバン打ち上げます。日本でこのような大規模な花火が行われると警察が来るのではないかと心配することもありますが、この文化が根付いています。
まとめ
異常気象が引き起こす食品の不足や価格高騰は、インドだけでなく世界的に見られる現象です。食品の不足や価格高騰がインフレに繋がっていく、こうしたことは決して局所的なものではなく、様々な国や地域、様々な品目で起こっているという状況です。
インドの玉ねぎ価格の動向は、世界経済でも存在感が拡大しているインドの経済に大きな影響を与えるため、引き続き注視したいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
先日「意外と知らないアフリカの6つのデータ」を公開しました。アフリカの経済社会に関するデータの基礎的な解説です。そのような基礎的なことは分かっているよという方もおられるかもしれませんが、意外と知らないものもあるかもしれません。確認の意味でも、是非ご覧いただけたらと思います。
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