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メディアが報じない人口減少問題と政治の課題


 日本経済の問題として取り上げられてきた少子化と人口減少ですが、これは本当に問題なのでしょうか。人口が減ることは本当に良くないことなのでしょうか。これは最近いただいた質問です。
 この問題はメディアではほとんど取り上げられることがありません。なぜなら、政治も民間企業も少子化が問題だから対策をしなければならないという方向で動いてきたからです。実は人口減少が悪くないことだと言い出したら、今までの取り組みは何だったのかという話になってしまいます。そのため、マスコミも偉い人たちも絶対に言わないわけですが、人口が減った方が良いという考え方も確かに存在しています。

 長めの記事になりました。私たちは人口減少とどう向き合うべきでしょうか。最後の段落「政治的な決断の必要性」もご覧いただけますと幸いです。今後ともよろしくお願いいたします(TeamモハP)。

過去の人口問題

 あまり語られない人口問題について、様々な角度から説明したいと思います。その昔、日本でも人口増加が問題だと言われていた時代がありました。それは高度成長期のことです。日本では戦後のベビーブーマー世代が誕生した後、高度成長期には「人口爆発」と言われ、人口増加が問題視されていました。
 これは日本だけでなく、当時進行国だった日本を含めて、新興国で人口が急増することが安全保障上の脅威になるとする考え方がアメリカなどでも言われていました。人口の急増によって新興国の体制の不安定化を招くのではないかという懸念があり、世界的に人口増加を懸念する向きがありました。このことが中国の一人っ子政策の導入にも影響したという見方もあります。

出所)「厚生労働省」我が国の人口について

現在の人口問題

 現在の人口問題は、年金問題や人手不足、介護など経済社会の問題という面が強いですが、この時代に言われていた人口問題は、今よりももう少し政治的な問題だったと言えます。その時その時で人口問題の意味合いは大きく変わってきました。

日本の最適な人口

 この人口問題を考える時に、そもそも日本の最適な人口はどれぐらいなのか、それを計算することによって目先の経済成長や人手不足をおいておき、最適な方向に向かっていこうという考え方も一部ではあります。
 では、日本の最適な人口はいくらなのか。食料自給率やエネルギーの自給率などから試算する考え方もあるようです。ただ、テクノロジーの進化や社会の様々な要素を無視して何千万人が最適ですと計算しても、実際にそれを目指していくのは現実味を欠いているでしょうし、本当に最適な数値を導き出すのはそもそも不可能でしょう。
 そして、仮に理想的な数を導き出したとしても、共産主義の一人っ子政策のように子供を生む人数をコントロールすることは日本ではできません。ある程度人口の増減は受け入れていくしかないという面があります。

東京の人口密度

 私は地方で育ったというのもありますが、東京の人口密度は少し高すぎると思っています。隣のマンションが近すぎて窓も開けられないとか、子供が公園で野球やサッカーをしようと思っても、公園が狭すぎて道路にボールが飛び出して危ないからやってはいけないとか、住んでいる人たちの生活の質を上げるには、肌感覚として東京は人口が多すぎると思っています。

人口問題の予測可能性

 この人口問題、増えても問題、減っても問題と言われてきたのは、この問題が予想しやすい問題だということも関係しているでしょう。
 人口動態は将来の状況を非常に高い確度で予想可能なデータだと言われています。出生率が急増したら何年後に小学生がどれぐらいになるか、何年後に人口動態がどうなっているか、大体予想ができます。
 病院や学校などの社会インフラがどれぐらい必要になるかが予想できます。ベビーブーマー世代が高齢化してくると、今度は医療費や年金問題など、社会が支える仕組みに負担がかかることが容易に予想できます。容易に予想できるため、きちんとした対応が必要という話になりやすいと言えます。

出所)「厚生労働省」我が国の人口について

効果的な対策の難しさ

 しかし、実際に人口が増えている時に増やすなという対策をすることも難しく、減っている時に増やす対策をするのも容易ではありません。なかなか効果的な対策が打てないのもこの問題の特徴と言えます。増える時も問題、減る時も問題という指摘がありますが、要は変化が大きいことが問題だという指摘もあるでしょう。
 
急激に増えれば当然インフラなどを整えなければなりません。そして、逆に急激な少子化が起これば、世代間で支え合う仕組みなどが維持できなくなります。なるべく変化が緩やかな方がいろんなものが持続可能だという考え方です。これは確かにそうで、あまりにも急激な変化が起これば、いろいろなところに影響が出てくることになります。諸外国も同様です。

少子化対策と経済状況
 イタリアのメローニ首相は、少子化対策にしっかりと取り組むとしています。具体的には、保育所の無償化や子育て手当てを導入するなどしていますが、その効果があまり現れていないのが現状です。

イタリアの少子高齢化問題とメローニ首相

人口減少の懸念

 人口減少が人口増加以上に懸念される理由としては、人口が減少する社会は需要が減少するため、経済も縮小していくというのが大きいでしょう。人口が増えている時は需要が増えるので経済成長が起こりやすい傾向がありますが、一方で人口が減ってくる局面では経済成長率が低迷する要因になりかねません。そのため、人口減少は人口増加以上に懸念されると言えます。

経済の歴史と人口減少

 今までの人類の歴史の中で、経済データがある程度取れる産業革命以降、テクノロジーの進化や栄養状態が向上してきているので、戦争や災害、流行病など以外の理由で自然に人口がどんどん減っていくような状況はほとんど経験していません。人口減少の中で経済がうまくいった経験も事例が少ないというのが人口減少が懸念される理由でしょう。

人口減少と経済の可能性

 確かに需要は減少していきますが、日本経済のことを考えると絶対にマイナスになるかというと、やり方次第という見方もあります。それはどういうことか、分かりやすくするためにすごく単純化した例で説明したいと思います。
 例えば、日本の人口は1億2,000万人以上いますが、急に亡くなってしまって私だけが残ったという状況を想定します。ありえない想定ですが、分かりやすくするための例えです。日本人が私しかいなくなったらどうなるでしょうか。日本という国は資産も借金もありますが、資産の方がたくさんあります。その借金と資産を全部私が相続して引き継いだと仮定しましょう。トータルすると資産の方が多いので、私はいきなり大金持ちになります。
 もちろん、日本人が私しかいなくなったら日本企業はみんなやっていけませんし、日本の不動産の価値もなくなってしまうでしょう。ただ、海外に対して持っている資産だけでも、海外に対して持っている負債よりも多いので、一人になった私は外国株や外国債権など、相続した資産から莫大な利子や配当を受け取ることになるでしょう。そして、使うお金は私が生活する分にしかかからなくなる。だから、このような状況になったら私はいきなりお金持ちになるということです。

重要指標としての対外純資産
 あくまで重要指標の一つということになりますが、その重要指標の一つが日本は世界で1番ピカピカだということです。

メディアが報じない日本の対外純資産

 極端な例えですが、何が言いたいかと言うと、国全体として資産をたっぷり持っている日本は、人数が減っていくことによって一人一人の持ち分は多くなるということです。そして、人口が減少していく中で全体として支出をそれに応じて減らしていくことができれば、社会全体としては十分にやっていくことができるはずです。
 もちろん、相続税などによってその遺産の一部が政府の税収になる部分もあり、先ほどの極端な例えのようにみんながリッチになるとは限りませんが、日本で人口が減少するということは、キャッシュを潤沢に持っている国において、それをより少ない人数で分け合うことを意味していて、支出などをコントロールしていけばうまくやれる道は残されているでしょう。

政治的な決断の必要性

 先ほどの例で言うと、日本人が私一人になってしまったら、政府の支出を減らすのも簡単です。私が住んでいるところ以外は全部削ればいいということになります。
 ただ、実際にはそう簡単ではありません。人口が減少していくとすれば、当然町の数も減っていくわけですが、どこの町を潰しますかとか、そんなのは簡単には決められないわけです。町をなくしてしまうのは極端ですが、インフラにしてもどこを修理してどこを諦めるのか、これが極めて難しい決断になると思われます。人間は愛着もありますし、自分が育ってきた街は人口が減ってきてもなくなって欲しくないという気持ちがあるわけです。

 私は子供の頃、父親の仕事の都合でいくつかの街を点々としましたが、その中で長い時間を過ごした町はいわゆるニュータウンのようなところです。今は高齢化も進み、人口も減っていて、昔あった店なども全部閉店しています。ゴーストタウンまでは行きませんが、持続可能ではないという気がしています。駅までバスで30分、買い物しようと思うと車で15分、若い人たちが住みたい場所ではなくなってきているのは確かです。しかし、なくなってしまうのは寂しいものです。

人口減少における政治の役割

 この人口減少においてうまくやっていくには、何を諦めていくのか、何を削っていくのか、難しい判断を今政治が行っていくことが必要になっていますが、今の日本の政治を見ていると一筋縄にはいかないのは間違いないでしょう。

まとめ

 人口減少についての問題を様々な角度から解説しました。今、人口が減ることが問題だと言われていますが、増えることが問題だと言われていた時代もありました。人口が増えることよりも減ることの方が懸念されていますが、人口が減る中でも支出のコントロール次第ではうまく乗り切れる可能性もあります。ただし、それは政治的な決断力次第です。


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