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注意喚起、証券マンを自宅に招くリスク


 先日、野村証券の社員が80代の顧客宅を訪問した際、睡眠作用のある薬物を飲ませた上で放火しようとしたとして、殺人未遂及び放火容疑で逮捕されるという重大な事件が発生しました。

証券マンが顧客宅を訪問する意図

 この事件は、証券マンが顧客の自宅を訪れた際に発生しました。
 私自身もかつて証券マンとして勤務していた経験があり、その際に多くの顧客宅を訪問しました。その経験を通じても感じたことですが、証券会社の営業マンが顧客の自宅を訪問することは、顧客の家庭や生活に多くの情報を得る機会を与える行為に等しいものです。
 しかしながら、こうしたリスクについて、顧客が十分に認識していないことが多いのではないかとも思っています。そこでこの記事では、証券マンが顧客の自宅を訪問する際、どのような点を観察しているのかについて、犯罪行為などとは関係なく、業務上の視点から解説したいと思います。

観察ポイント

 まず、証券マンが顧客宅を訪問する目的は、顧客がどれだけの資産を保有しているか、ビジネスチャンスがありそうな要素はないかを探ることにあります。
 したがって、顧客が資産をどれだけ持っているかを知るため、家に高価なものが置かれていないかをチェックしています。車やインテリアも含め、目に入るものをひと通り見ていくのが一般的です。たとえば、大きな壺や絵画などがあれば、それとなくどういう物かを尋ねることもあります。

家族構成も重要な情報源

 また、家に飾られている写真にも注目します。
 家族構成を把握することで、余剰資金の有無や将来的に相続の発生が見込まれるかどうかを知ることができるからです。こうした家族情報は、証券マンにとって非常に重要な情報になります。
 例えば、飾ってある写真から家族について尋ね、「お孫さん可愛いですね」などと声をかけることで、自然な流れで家族の情報を引き出すことが可能です。

相続の視点からの情報収集

 金融機関では、相続の際に資産が別の金融機関に移されるケースが多いため、相続が発生する前に、子供世代も顧客にしておくことが重要とされています。そのため、証券マンは家族構成の情報収集にも力を入れています。
 もし証券マンが自宅を訪れた際には、本人だけでなく周囲の人々の情報も収集しようとしていると考えて間違いありません。
 写真などから旅行先や別荘の有無、頻繁な海外旅行といった生活スタイルも把握できるため、経済的な余裕があるかどうかの判断材料とされます。 

玄関先の様子から分かること

 私の昔の上司の話では、玄関先までしか入れてもらえない場合でも、玄関に置かれている靴を見て家族構成や年齢を推測することもあったといいます。これは、飛び込み訪問が当たり前だった時代、まだ十分に関係が築けていない段階で玄関先で対応するような場合の話ですが、置いてある靴からある程度の家族構成や生活スタイルが把握できたということです。
 現在ではこのような状況は少ないかもしれませんが、それでも玄関先だけで情報を収集する場合もあります。

自宅での対応が情報流出の要因に

 顧客の自宅で金融商品の話をする際、以前紹介した投資信託について「パンフレットを持ってくる」などと言って、顧客が他の金融機関の資料を見せることがあります。こうした場合、顧客がまとめて保管している書類を見せてくれることも多く、証券マンは他の金融機関との取引情報も比較的簡単に把握できます。
 同時に、家のどこに大事な書類を保管しているかまで分かることもあります。

高齢者の認知症の有無も確認

 もう一つ、証券マンが注意しているのは、認知症の兆候がないかという点です。顧客の多くが高齢者であるため、認知症の可能性がある場合、リスクの高い金融商品を販売してトラブルになると、証券マンの将来にも影響を及ぼしかねません。
 
しかし、認知症かどうかは一度の訪問ではわからないことも多く、前回の話を忘れているなど、認知症の兆候が見られるか、生活に不自然な点がないかを注意深く観察することもあります。

社内システムへの情報登録

 このようにして得た情報は、顧客情報として社内システムに記載され、共有されることがあります。こうした情報が金融機関に知られることは、悪用されれば非常に危険なことですし、たとえ悪用されなくとも顧客にとってメリットのあることではありません。
 
不要な情報を金融機関に与える必要はないでしょう。実際、証券マンを自宅に招き入れるかどうかは顧客自身の判断ですので、強制されることではありませんが、ここまで様々な情報を見られている可能性があるということは知っておいたほうがよいでしょう。

証券マンとの「距離感」

 また、証券マンは顧客が自宅に招き入れてくれるかどうかから、その顧客との「距離感」を測っています。簡単に自宅に入れてくれない顧客は、金融商品を勧めても買ってもらうのは難しいと認識するでしょう。
 一方で、すぐに自宅に入れてくれる顧客は、証券会社に対する抵抗感が少ないと見られ、リスクの高い商品でも提案すれば購入してもらえる可能性が高いと判断されることもあります。

まとめ

 証券マンを自宅に招き入れるかどうかは自己責任ですが、証券マンが訪問の際にどこを見ているのかを考えた上で判断されることをおすすめします。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

 基本的に投資は自己責任であり、良い商品かどうかは投資家によって異なると考えています。そのため、特定の商品を推奨したり、否定したりすることはあまりしていません。しかし、今回解説する商品については、ほとんどの人にとってなるべく投資しない方が良いのではないかと考えています。

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