世界で進む銀行支店閉鎖とCBDCの関係について
今週はアメリカの大統領選挙が行われました。選挙の影響でマーケットがどうなるか、投資をしている方の中には、日々の情報を追うことに疲れたと感じている人もおられるのではないでしょうか。実は、私も同じように感じることがあります。
今回の記事では、「世界中で銀行の支店が閉鎖されている」という件についていただいた質問にお答えし、後半ではチャンネル登録者数が20万人に達したら実施したい特別企画について説明します。
銀行支店閉鎖とCBDCの関係について
まずは銀行支店の閉鎖についてです。
現在、中央銀行デジタル通貨(CBDC)については多くの国で研究が進んでいます。CBDCが実現すれば民間銀行が不要になるのではないか、あるいはその影響を見越して銀行が支店を減らしているのではないか、という意見も多くいただきました。確かに、そのような予測をしているインフルエンサーもいるのかもしれませんが、私はこの見方には懐疑的です。
CBDCの研究と民間銀行の関係
CBDCの研究が進んでいるのは事実ですが、現時点ではCBDCの影響で銀行が閉鎖される動きがあるとは考えられません。もちろん、私が断言できるわけではなく、あくまで予想でしかありませんが、現状ではCBDCの影響は限定的です。
CBDCが進んでいる国でも民間銀行を廃止する議論にはなっていないのが実情です。
CBDCの普及と民間銀行の役割
現在、世界経済の98%を占める34か国の中央銀行がCBDCの研究を進めており、実際にCBDCを活用している国もあります。
例えば、中国ではデジタル人民元の取引額が6月までに約7兆元(約140兆円)に達しているとされ、バハマやナイジェリアでも利用が進んでいます。一方、アメリカやヨーロッパ、日本などでは研究は進んでいるものの、試験運用すら行っていない国が多い状況です。
そのため、CBDCと欧米の銀行支店の減少を結びつけるのは少し無理があると考えています。
中国でのCBDCと民間銀行の関係
CBDCの利用が進んでいる中国においても民間銀行の役割がなくなっているわけではありません。仮にすべての人がCBDCを利用し、銀行への預金をしなくなった場合、銀行が預金を集めて融資をすることでお金が世の中に流れていくという信用構造の機能が失われてしまうため、経済全体にとって大きな問題となります。
二層方式と銀行の必要性
こうした問題に対応するため、「二層方式」と呼ばれるシステムが構想されています。この仕組みでは、中央銀行が直接国民にCBDCを提供するのではなく、民間銀行を介してCBDCが利用されるようになっています。中国の事例からも分かる通り、CBDCが普及しても民間銀行が不要になるわけではありません。
銀行の業務の縮小の可能性
もちろん、CBDCの仕組みが整備され、デジタル化が進むことで、銀行業務の一部が不要になる可能性もあります。
例えば、銀行が所有するシステムの一部が不要になることも考えられますが、一方で中央銀行のシステムと連携するための新しいシステム構築が必要になるかもしれません。
CBDCと国際決済の課題
現在、各国でCBDCの研究が進んでいますが、国際決済に関してはまだ多くの課題が残されています。各国のCBDCシステムをつなぐ仕組みが求められており、実用化にはかなりの時間がかかると見られています。そのため、CBDCが一般的に普及するのは少なくとも2020年代中には起こらないと私は考えています。
CBDCの実用化に向けて
2010年代半ばからCBDCに関する話題が増えてきましたが、2024年時点でもまだ実用化には至っておらず、普及には相当な時間が必要でしょう。
そのため、欧米で銀行の支店が閉鎖されていることとCBDCを関連づけて考えるのは、話が飛躍しすぎているように思います。
銀行支店閉鎖のドルへの影響
また、「ドルのプレゼンスが低下していることでアメリカでのビジネスを縮小する流れがあるのではないか」という意見もいただきました。これについてもやや話が飛躍しすぎていると考えています。
仮にアメリカの銀行がドル以外の通貨に対応しようとした場合、人民元などの預金を集められないため、他の銀行から借りたり、デリバティブ取引を通じて資金を確保する必要があります。他国の通貨を安定的に調達するには、その国の銀行を買収することが現実的な方法でしょう。そのため、アメリカ国内の銀行支店の動向とは関係がないと言えます。ドルの影響と関連づけるのは少し無理があると考えられます。
ご参考(ドル離れ記事のまとめ)
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