メディアが報じない日本の対外純資産
日本の対外純資産の増加
日本の対外純資産が471兆円に達したという話題について解説します。2024年5月28日、2023年末の日本の対外純資産・負債残高が財務省により公開されました。資産から負債を引いたネットの純資産の額は前年対比で12.2%増加し、471兆円になりました。この金額は世界最大で、日本は33年連続で世界ナンバーワンの対外純資産国となりました。
今回の対外純資産が471兆円になったというのは報道されていましたが、ただ「471兆円になりました」というだけで、その詳細な解説はほとんどされていません。マスメディアは相変わらずあまり深掘りしようとしていないと思います。
対外純資産の意味
日本の個人、企業、政府が海外に持っている資産が対外資産、海外からお金を借りているものが対外負債と言います。この対外資産の額から対外負債の額を引いてプラスになる状態を対外純資産国、引いてマイナスになる、つまり負債の方が多い国を対外純債務国と言います。
対外純資産国は、海外に対して借りているお金よりも貸しているお金が多いということで、つまり国内に比較的お金があるということを示しています。逆にマイナスの状態、つまり対外債務国の場合は、国全体で見た時に海外の投資家にお金を借りている人が多いので、国内にお金がない人が多いということを示しています。
政府が国債を発行して資金を調達する場合などに、国内の資金で十分に賄えるのか、または国内に十分な資金があるかというのを探る上で、対外純資産国であるかどうかというのが一つの重要な指標になっています。
対外純資産とデフォルト
新興国などを見ていく上では、デフォルトが心配される国もあったりします。しかし、国債の発行残高がどれぐらいあるかという債務の規模ではなく、むしろ対外純資産の方がより重要な指標だと考えている投資家が多いです。
ただし、あくまで国内に資金が十分あるかどうかを探る上での一つの指標で、対外純資産国だったら必ず国債が国内で賄えるとかそういうものではありません。実際、対外純資産国でもデフォルトの危機にある国もあります。
重要指標としての対外純資産
あくまで重要指標の一つということになりますが、その重要指標の一つが日本は世界で1番ピカピカだということです。世界で2番目に大きな対外純資産を持っている国はドイツで、451兆円となっています。このピカピカの対外純資産というのが1年で51兆円ほど増えたというわけですが、今回大きく増えた要因は円安で、海外に持っている資産が円ベースで増えたことが大きな要因だったと見られています。
対外純資産と経常収支
では、この対外純資産が減っていく心配はないのかというのが気になるところだと思いますが、そこで重要になる指標の一つが経常収支です。経常収支は、国全体の稼ぐ力を表すもので、貿易や投資でいかに稼いでいるかを示す指標になっています。
対外純資産と経常収支は密接に関係しています。海外で稼ぐ力が弱くて、どんどんお金が外に出ていくような状況だと、対外資産もなかなか増えないということが起こりがちです。そういう意味で、同じぐらい経常収支というデータも重要です。
日本の経常収支
日本の2023年の経常収支は、20.67兆円の黒字で、1996年以来ずっと黒字の状況です。そのため、この点においてもあまり心配するような状況ではありません。他にも外貨準備高などの重要指標がありますが、日本はどれをとっても破綻が懸念されるような状況にはないです。
少なくともこうした指標を見る限り、投資家目線で言わせてもらうと、日本が破綻しそうな状況では全然ないということです。日本よりも先に心配しないといけないような国は複数あります。
世界の投資家はこのことをちゃんと認識しています。日本でももう少しそうした理解が深まるべきと思っています。
日本の対外純資産の今後の見通し
日本の対外純資産の今後の見通しについてですが、今後も増えていくことになると私は見ています。
この円安の中でも海外M&Aを積極的にやっている企業もありますし、また飲食店などでも海外進出する企業がどんどん増えています。個人でもますます海外資産を保有する人たちが増えてきていると思います。
このトレンドは円安によって加速した面はあるかと思いますが、日本経済の成長率が海外よりも低い状況が続いてきたこと、低い賃金上昇率、低いインフレが続いてきたことも関係していて、円安が一服したとしても大きなトレンドとしては変わらないのではないかと私は見ています。
対外純資産の変動も波はあるかと思いますが、波がある中でも緩やかに増加していく可能性が高いと私は見ています。
ご参考