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ドイツの自動車業界を取り巻く中国とEUの話
このところのドイツ経済と欧州経済は弱い動きが続いています。そうした状況に拍車をかけているのが停滞した自動車販売です。2024年8月のEUの自動車登録台数は前年同期比マイナス18.3%と大幅に減少しました。
こうした状況の中、10月4日にEUは中国製EVに最大45%の関税をかけることを決定しました。これを受け、中国も報復関税をかける意思を示しています。なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。
ドイツの立場と自動車業界への影響
ドイツの自動車メーカーは中国での売上が大きいため、貿易摩擦の影響が懸念されています。そのためドイツはこの関税法案に反対していましたが、結局決定されてしまいました。これにより、ドイツの自動車業界にとってはまた悪材料が増えた格好となっています。
フォルクスワーゲンと中国市場
下記はフォルクスワーゲンの地域別の販売台数です。ヨーロッパとアジアは同程度ですが、国別で見ると中国が圧倒的に多いことが分かります。次点がドイツですが、中国の半分以下です。
EUの自動車登録台数の減少
2024年8月のEUの自動車登録台数が前年同期比マイナス18.3%と大きく落ち込んだ要因は二つあります。
一つは、ドイツが2023年12月末にEV補助金を終了したことです。これによって電気自動車を買いたい人は昨年末に駆け込みで購入しました。そのため、今年に入って反動で販売が減少してしまいました。
EV補助金の終了と財政の影響
去年の後半、ドイツ政府は余っていたコロナ予算を色々なところに転用しようとしていましたが、それが違憲であると最高裁判所が判断したため、急遽財政を切り詰めざるを得なくなりました。
その結果としてEV補助金がなくなってしまいました。
新車の価格上昇と購入控え
もう一つの要因は、2024年7月からEUで新車に自動速度制御装置の搭載を義務付けたことです。これにより新車の価格が上がり、購入を手控える人が増えたと見られています。
この自動速度制御装置の設置義務についても事前に分かっていたため、駆け込み需要が生じ、8月以降購入が急減したという状況です。
ドイツ国民の車購入状況
ドイツ国民からすると、車の値段はどんどん高くなる一方で、補助金は減らされ、車を買うのはますます苦しくなっています。
ドイツの消費者物価指数などから計算すると、自動車の価格はここ7年ほどの間に3割程度上昇しています。
最近のドイツ自動車連盟が行った世論調査では、ドイツ国民の6割が車を購入する際に中国製の車を選択肢に入れていることが明らかになっています。
ドイツ政府の対応と悪循環
ドイツ製の車は中国製の車には価格面で勝てません。
ドイツでは政府の対応によって国民生活が苦しくなり、結果として中国製の車を選ぶようになっていることが伺えます。こうした状況はドイツなどで新車の生産がより減少する可能性もあり、そうなると製造業において雇用悪化に繋がる可能性もあります。
フォルクスワーゲンの工場閉鎖検討
フォルクスワーゲンが国内工場の一部を閉鎖することなどを検討していますが、これは氷山の一角で、今後も工場閉鎖がどんどん出てくるという見通しもあります。
生産の減少が雇用悪化に影響を与えていくことになるでしょう。
フォルクスワーゲンがドイツ国内で工場を閉鎖するのは、1937年の創業以来87年の歴史の中で初めてのことです。
EVに関する関税措置とその影響
EVに関しては、EUは中国製のEVに最大45%の関税をかけることを10月4日に決定しました。
中国政府から補助金を受けて安いコストで作られた中国製EVが欧州に出回ることで健全な競争を阻害し、欧州の自動車メーカーが苦境に陥っていることに対応しようというものです。
中国との関係と欧米メーカーへの影響
中国とEUの貿易額は2023年に7,390億ユーロ、日本円で100兆円を超えており、関税がエスカレートすればお互いの経済に大きな影響を与える可能性があります。
最終的に45%の関税は決定されましたが、欧州で販売される中国製EVの約6割は、欧米メーカーが中国で作ったものです。ルノーやBMWも中国で生産したEVを欧州で販売しています。そのため、中国メーカーの製品にも関税をかけることになりますが、これらの欧米メーカーが中国で作って欧州で販売するものについても関税が上乗せされることになります。
報復関税の可能性と影響
中国が報復関税を示唆しており、欧州車が中国で売れなくなる可能性もあります。そのためドイツはこの関税法案に反対していましたが、結局賛成多数で決定されています。
反対したのはドイツ、ハンガリー、スロベニア、スロバキア、マルタの5カ国。賛成はフランス、イタリア、ポーランド、オランダなどの10カ国。その他12カ国が棄権しました。
フランスはこの関税法案に賛成しており、政府は自動車業界を見捨てたのかと反発が起こっています。
総括
欧州のドイツの自動車業界は中国を巻き込んで非常に厳しい状況になっています。
ドイツの自動車メーカーは中国なしでは成り立たない。しかしEUに属しているため中国に関税をかけることを止めることもできない。そうした状況で中国メーカーの自動車に国内の需要を奪われている、全ての歯車が空回りしているような状況です。
情報のアップデートがありましたらまたお伝えしたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ご参考
イーロン・マスク氏のビジョン
イーロン・マスク氏が発表した内容によりますと、2人乗りで運転席のない完全自動運転の車を2026年の販売開始を目標としており、価格は3万ドル以下になるということです。
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