メディアが報じないアフリカのブラックマネー
この記事では、日本のメディアで報道されることのないアフリカのブラックなお金の話をお伝えします。テーマは、アフリカで初めての女性ビリオネア(億万長者)になったとされるアンゴラのイザベル・ドス・サントス氏についてです。彼女を巡るさまざまな疑惑を追うと、世界の国々で表立って語られない裏側が垣間見えてきます。
イザベル・ドス・サントス氏
イザベル・ドス・サントス氏は、アフリカ初の女性億万長者として注目を浴びています。しかし、その財産の形成過程には、父親であるジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントス元大統領の影響が大きく関わっています。
父親はアンゴラの独裁者
ジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントス氏は、1979年から2017年までの38年間、アンゴラの大統領を務めた人物です。アンゴラはかつてポルトガルの植民地であり、1961年から独立戦争が始まりました。1975年に独立を達成したものの、その後も1975年から2002年まで長く内戦が続きました。この内戦を指揮し、勝利に導いたのがドス・サントス元大統領です。
アンゴラは現在、アフリカ有数の産油国であり、ナイジェリアと並ぶ主要な石油生産国です。その石油利権をドス・サントス元大統領が支配したことで、彼とその一族は莫大な富を手に入れました。
アンゴラと中国の関係
2010年代に入ると、アンゴラは中国と深い関係を築きます。この時期、多くのアフリカ諸国が中国からの融資に依存し、「借金漬け外交」と批判される状況が広がりました。アンゴラも例外ではなく、対中債務はGDP比40%以上に達し、ジブチと並びトップクラスとなっています。
イザベル氏のキャリア
イザベル氏は1973年に生まれました。彼女の母親は、父ジョゼ・エドアルド・ドス・サントス氏が旧ソ連に亡命していた時代に出会ったロシア人女性です。イザベル氏は、ロンドン大学キングスカレッジで機械電気工学を学びました。
経営者としてのイザベル氏
24歳の時、イザベル氏はアンゴラでレストランを開業し、経営者としてのキャリアをスタートしました。その後、お酒をレストランに運ぶ配送業、ビールの製造、通信事業、衛星テレビなど、さまざまな事業を展開していきます。特にアンゴラ政府の公共事業を受注することで、莫大な利益を得ていきました。
彼女は41カ国で少なくとも400社以上の企業ネットワークを有し、ポルトガルのメディアや銀行の大株主にもなりました。そして、アンゴラの国営石油企業の代表にまで上り詰めます。
一族で支配する国家構造
ドス・サントス元大統領は、一族を国家の重要ポストに次々と配置していきました。以下はその具体例です。
息子:政府系ファンドのトップ
別の娘:公共放送の重役
2番目の妻:ダイヤモンド事業に関与
このように、一族全体が政府系ファンドや銀行、鉱山、通信、メディアなど、アンゴラの主要産業を牛耳っていたとされています。この状況に対しては、当然批判的な見方も多くあります。
政権交代と逆風
2017年にドス・サントス元大統領が退任すると、新大統領ジョアン・ロウレンソ氏が就任します。彼はイザベル氏を国営石油会社の代表から解任し、彼女が汚職によって不当に利益を得ていたと批判を強めました。
アンゴラ政府は、イザベル氏が得た資産の一部を取り戻そうと動き出しました。ポルトガルの銀行にある彼女の資産を没収するため、ロシアの銀行への送金を阻止するようポルトガル政府に依頼する事態にまで発展しました。
国際的な調査
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、イザベル氏が不正を行っていた可能性があると報じました。これを受けて、彼女の資産はアンゴラ、ポルトガル、オランダなどで凍結されました。さらに、2021年にはアメリカ政府が彼女とその家族に対する入国禁止措置を発表。2022年にはインターポールが国際逮捕状を発行しました。
現在のイザベル氏
イザベル氏は現在ドバイに住み、優雅な生活を送っています。彼女はイギリスのメディアに対し、新政権が経済不振をすべてドス・サントス一族のせいにしていると主張しています。
アフリカのブラックなお金の側面
私はイザベル氏が不正を行ったかどうかについては、判断する立場にありません。ただ一つ言えるのは、独裁政権の下で国民一人当たりのGDPが2,300ドル(世界161位)という貧困状態にある一方で、大統領の娘が10億ドル以上の資産を築いたという現実です。
独裁政権では、信頼できるのが家族だけという状況が生じることもありますが、政権交代後には一気に立場が危うくなるというのは、この国だけに限った話ではありません。
まとめ
アフリカで初めての女性億万長者とされるイザベル・ドス・サントス氏について説明しました。独裁国家の嫌な側面と、現代の国際情勢を象徴しているように思えます。引き続き情報をお届けしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ご参考
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