イスラエルとヒズボラの紛争とCDSの価格上昇
2024年9月23日と24日に、イスラエルがレバノンのヒズボラ拠点を空爆し、500人以上が死亡、1,800人以上が負傷したと報道されています。これは2006年のイスラエルによるレバノン侵攻以来、最も大きな攻撃となりました。この記事では、イスラエルとヒズボラの問題が金融市場に与える影響について解説します。
CDSの価格上昇
イスラエルとヒズボラの全面戦争への警戒感が高まる中、イスラエルのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の価格が上昇し、5年物は149ベーシスポイントとなり、昨年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃時の水準を超えて上昇しています。
CDSとは
CDSとは、クレジット・デフォルト・スワップといい、債券がデフォルトした時のための保険のような金融商品です。デフォルトする可能性が高いと、CDSの価格が上昇する仕組みになっています。
しかし、現在イスラエルのデフォルトが懸念される状況にはなっていません。CDSの価格は上がりましたが、財政危機にある国と比べればまだまだ低い水準です。一般的に400ベーシスポイント以上で要警戒、700ベーシスポイント以上で危険水域と言われるので、イスラエルの149ベーシスポイントはまだまだデフォルトが心配される水準ではありません。
データが有料のものしかなく、直近のものをお見せできるチャートがないのですが、下記は2024年2月までのチャートです。黒い線がイスラエルのCDSの推移を示しています。昨年10月に大きく上昇したのがわかると思います。その後少し落ち着いていましたが、今回の件で再び上昇し、昨年10月の水準まで上がってきました。
ボラティリティのショート戦略
ボラティリティのショートと同じ戦略で、平時にはCDSのショート、つまりCDSの価格が下がる方向にかけるポジションを構築する投資家がいます。
何かリスクイベントが起こると、そうしたポジションが巻き戻されてCDSが買い戻される展開になりやすいです。ポジションの偏りなどから、何か悪いイベントが起こるとCDSの価格が跳ね上がりやすいと考えていただければと思います。
そのため、このCDSの価格上昇が必ずしもイスラエルのデフォルトの確率を正しく表しているわけではありません。イスラエルのCDSは上昇しましたが、デフォルトが心配される状況ではないということです。
他のマーケットの動向
他のマーケットを見てもそれがわかります。イスラエルの通貨シェケルは対ドルで下落傾向にあり、今年の安値圏で推移しています。ただし、昨年10月の安値に比べると大して下げていません。為替市場を見る限り、マーケットの警戒感はそれほど高まっているようには見受けられません。
原油と天然ガスの価格動向
原油については、現在WTIで71ドル台となっており、9月前半に65ドル前後まで下落したところから1割程度上昇しましたが、まだ安い水準にあります。昨年10月も80ドルを超えていましたので、原油価格も低水準での推移が続いていると言えます。イスラエルとヒズボラの戦闘が激化しても、原油の供給にはそれほど大きな影響はないというのが大方の見方です。
一方、天然ガスの生産は行われており、天然ガスの方が影響を受けやすいと見られています。昨年10月の時も天然ガスの価格が上昇する場面がありましたが、今回は天然ガスもそれほど大きくは動いていません。
戦闘が激化しても、原油や天然ガスに大きな影響はないと考えられています。
中東情勢の影響
イスラエルを含めた中東情勢は、イスラエルとハマス、ヒズボラなどが戦っている状況です。スターバックスのボイコットが起こったり、難民が増えるかもしれません。アメリカの政治にも影響を与えます。
間接的には経済や政治に大きな影響を与えますが、直接的な経済への影響という意味ではそれほど大きくはありません。
経済への影響の限定性
この問題は人道的な観点から早く解決しなければならない非常に危機的な状況ですが、経済への直接的な影響という意味ではある程度限定的だと見られています。
ご参考