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世界で進む銀行支店の閉鎖の理由とその影響
近頃、アメリカで銀行の支店閉鎖が加速している理由について、多くの質問をいただいております。「銀行が次々と閉店しているのは金融危機の兆候ではないか」、「銀行が経済悪化を予想して先手を打っているのではないか」といった問い合わせもあります。
しかし、この支店閉鎖は金融危機が原因でもなければ、銀行が景気悪化を予想して対応しているわけでもありません。主な要因は、デジタル化や金融サービスの多様化によるものであり、銀行にとってサービスの変革が必要になっているという経営上の課題が背景にあります。
アメリカで銀行店舗が閉店している理由について、質問を多数頂いています。これは、オンライン化などで収益性を改善するためで、世界中で起こっていることです。イギリスでは、2015年から6000店舗閉店してます。フランスやアメリカは、やや遅れぎみhttps://t.co/lmyLAybrpV
— 【世界経済情報】モハPチャンネル (@MohaP_WorldNews) November 3, 2024
世界の銀行業界が直面する経営合理化の必要性
銀行業界が支店削減に踏み切る理由が経営の合理化であること、ご存知の方も多いでしょう。もちろん、銀行ごとに異なる経営課題はありますが、世界中の銀行が合理化により支店削減を進めています。
現代のデジタル社会では、かつて支店で提供していたサービスの多くがオンラインで完結できるようになり、高い家賃を払って店舗を構えるのは合理的でなくなってきました。そのため、オンラインで提供できるサービスはオンライン化し、支店の数は減らしていこうという方向に進んでいます。逆に、こうした対応をしないと、オンライン専門の金融サービスを提供する業者との競争に勝てない状況にもなっています。
世界で進むデジタル化と銀行支店の再編
日本のケース
日本でもSBIのように店舗を持たない金融サービス業者の存在感が増し、銀行もGMOネット銀行など法人向けサービスを提供するネット銀行の台頭が進んでいます。
このようなデジタル化による銀行支店の再編の動きは、日本に限らず世界各地で見られるものです。多くの国では、2010年代からデジタル化の波が押し寄せ、金融サービスが変化し始めました。とりわけ、インフレの影響で家賃や光熱費のコスト削減が急務となった2021年以降、この動きが加速しています。
イギリスのケース
とりわけイギリスでは、メガバンクのサービスに対する消費者の不満が高まり、1990年代から新しい金融業者の参入を積極的に促進してきました。そのため、イギリスでは変化が比較的早く進み、2015年以降、国内で約6,000店舗の銀行支店が閉鎖されました。
イギリスの銀行は採算の取れない支店を近年閉店してきており、地方の人たちが銀行のサービスを受けられない、現金が下ろせないといった問題が起こっています。
フランスのケース
フランスでは金融機関が消費者目線でのサービス提供を求められてきた背景があり、新しい業者の参入が少なかったため、店舗閉鎖やオンライン化は緩やかに進んでいます。
アメリカとドイツのケース
アメリカは、イギリスとフランスの中間的な状況と捉えられます。
ドイツでは、郵便事業を行うポストバンクが店舗を半分に減らす方針を示しているなど、各国で支店再編が進行しています。
支店閉鎖が消費者に与える影響
次に、こうした支店閉鎖が消費者にどのような影響を与えるかを考えてみましょう。
都市部では支店閉鎖による影響は比較的少ないとされますが、特にマイナスの影響を受けるのは地方の住民や高齢者、中小企業です。銀行が採算の取れない支店を閉鎖する際、利用者が少ない地方の支店がその対象になりがちだからです。
イギリスではキャッシュレス化が進み、ATMや支店がなくても困らない人が増えているものの、特に地方の高齢者層には現金利用者が多く、支店閉鎖によって不便を感じることが多いといわれています。また、地方で飲食店や中小企業を営む事業者も、現金取引が必要なため、支店閉鎖により不便さを感じています。
イギリスの対策と課題
イギリスではこうした問題に対処するため、銀行業界が資金を出し、郵便局内にバンキングハブを設置する取り組みが進められています。これは銀行が資金を提供し、郵便局が金融サービスを提供する仕組みです。しかし、2015年以降6,000店舗が閉鎖されたにもかかわらず、バンキングハブは30ヵ所ほどしか設置されていないため、まだまだ数が足りていない状況です。
特に、採算の合わない地域でのバンキングハブ設置は難しく、大幅な増設は見込みにくいとされています。
銀行業界が基金を作り、そのお金でバンキングハブという銀行サービスを提供するオフィスを作り、郵便局がそこで銀行サービスを行うということで対応しようという動きもあります。しかし、銀行の閉店ペースの方が全然早いので、あまり成果につながっていないと言われています。
銀行支店閉鎖の理由と今後の流れ
以上のように、銀行支店閉鎖は金融危機や景気悪化が直接の原因ではなく、デジタル社会における金融サービスの合理化が進んでいることが主な理由です。
この動きは今後も続く可能性が高いと考えられます。これまで守られてきた金融業界は、サービス向上よりも現状維持を重視してきた面があり、まだ改善の余地が多くあります。そのため、この合理化の流れは今後も継続するでしょう。
日本で進む地方銀行の課題と将来
日本でも似た状況が進行しており、とりわけ地方銀行の将来が注目されています。日本の地方では人口減少が進んでおり、若者も減少している地域が多いため、メガバンクやネット銀行との競争の中で、地方銀行は独自の価値を提供することが求められています。
金融サービスの差別化が難しい業界において、規模の強みを活かすメガバンクや、低コストでサービスを提供するネット銀行がある中で、地方銀行が何を提供できるのかは長年の課題です。
地方銀行も収益を確保する必要があり、仕組債販売での損失や旅行業への参入など、各行が独自の試みを行っています。今後の日本の金融業界の改革の進展も注目していきたいと考えています。
まとめ
アメリカをはじめ世界の銀行の支店閉鎖ラッシュについて、「金融危機が迫っているのでは」、「経営が厳しいのでは」という質問をいただきましたが、支店閉鎖は主に経営の合理化の一環であることをご理解いただけたと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
ご参考
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