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社会福祉士の面接技法から学ぶ!取材ライティングでインタビュイーの話を引き出すコツ

こんにちは!フリーライターの野里のどかです。私は新卒フリーランスとしてキャリアをスタートし、会社員時代にはフリーランスの養成講座の運営マネージャーとして、200名以上のキャリア相談にのっていました。現在は、ふたたび独立をして、主にIT企業の採用広報記事などを手がけています。

……と簡単に仕事の紹介をすると、「ネットで仕事をしてきた人なんだなあ」という印象を持たれるかと思いますし、実際にそうなのですが、実は社会福祉士という国家資格を保持しています。2年間、フリーライターをしながら通信制の専門学校で学び、今年、試験に合格しました!

「社会福祉士ってなに?今まで出会ったことがない」という人が多いことと思います。私も、専門学校に入学する半年前まで名前すら知りませんでした。わかりやすく・私なりの言葉で説明をすると、“病院や支援施設、市役所など、なにかを解決したい人が集まる場所”で働いている人たちで、“困りごとに耳を傾け、解決を手助けできる支援先へ接続するお手伝いをする相談援助のプロ”が社会福祉士です。
 
フリーライターとは似ても似つかない仕事のようですが、学校の授業、障がい者施設での実習などを通じて「社会福祉士のスキルって、取材にめっちゃくちゃ役立つじゃん……!!!」ということに気づきました。

相談を受けるプロ、なので、相談者さんとの対話を通じて、その人が抱えているものを可視化していく仕事になります。一緒に過去を振り返って、現在どんな気持ちになっているのか言葉にし、これからどうしたいのかイメージを引き出す……取材の工程とすごく似ていませんか!?
 
そこでこの記事では、社会福祉士が相談援助の工程で用いる面接技法を紹介しながら、それをどんなふうに取材で活かせるか考えてみようと思います。ライターを仕事としている方の参考になれば嬉しいですし、社会福祉士という職種について少しでも知ってもらい、「世の中を支えるこんなポジションがあるんだ〜」と日常生活のなかで意識してもらえるようになればもっと嬉しいです!

信頼関係がなにより大事

社会福祉士が行う相談援助はいくつかの工程を経て、相談者が自分らしい生活を実現するまで支援を続けます。その最初に行われるのが、受理面接(インテーク)です。

受理面接は、相談者と援助者(相談を受ける社会福祉士など)が最初にしっかりと対話をする場なので、なにより信頼関係(ラポール)の形成が重要となります。取材の場合、相談援助と違って、その場限り・1時間だけ顔を合わせる場合が少なくないでしょう。それでも、「この人はきちんと話を聞いてくれるな、理解してもらえそう」、「この人は仕事というだけじゃなくて、私に興味を抱いてくれているな」と信頼してもらえないと、表面的な話しか聞けない、味気ない取材に終わってしまう恐れがあります。

面接の技法は取材のポイントに似ている

信頼関係を構築するため、面接では以下の技法を用います。

①傾聴
関心を向けて、能動的に相談者の声を聞く

②受容
評価をするのではなく、相手をありのまま受け入れる

③共感的理解
相談者の気持ちに寄り添って、まるで共に感じているようにその気持ちを理解しようと努める

④明確化
相談者がうまく言葉にできない場合、その思いや感情を先取りして言葉にし伝える

⑤感情の反映
話を聞いて自分が受け取った感情を言葉にして、相談者に伝える

⑥要約
語られたものを行動・経験として要約して、相談者に伝える

⑦アイメッセージ
「私はこう思います」と、援助者を主語にして伝える(否定はしない)

⑧言い換え
別の言葉に言い換えて尋ね、気持ちの輪郭を掴む

⑨直面化
言葉や感情の不一致があった場合、そのことを尋ねて、内在している複雑な気持ちを浮き彫りにする

⑩支持・励まし
相談者の発言を尊重・承認する。頷く、微笑むなどの非言語コミュニケーションも織り交ぜる

相談者をインタビュイー、援助者をインタビュアーに入れ替えると、この面接技法は取材の技法として有効だと感じます。実際に、取材ライターをしている方は、この面接技法を自然と普段の仕事で用いているのではないでしょうか?

この中で、私がこれまでの取材経験から注意したいな、と思ったのは④明確化です。

相手の感情を知るより先に、自分の内面に自覚的になろう

インタビュイーが経営者や有名人の場合、人前に立って話をすることに慣れているので、インタビュアーの質問へもすらすらと答えが出てくるでしょう。しかし、採用広報などの場合は、インタビュイーが話をすることに慣れていないかもしれません。明確化は、そんなときによく活用される技法です。一方で、気をつけないと信頼を損ねる恐れもあるのではと私は思います。

先日、大学生の方から、「卒業論文の研究に協力してほしい」とインタビューを受けました。そのうちの一つの質問に対して、回答がぱっと浮かばず考え込んでいると、相手の方が、「年だから(若くないから)ですか?」と私の気持ちを明確化(実際には、私の回答と年齢は関係なかったので、明確化しようとして)して、びっくりし、その後の質問にあまり身が入りませんでした。相手の方としては、スムーズに取材をすすめるためによかれと思って発言したのだとわかります。が、私からは、年齢に対する偏見が見えてしまって、悲しい気持ちになりました。

社会福祉士は、自己覚知が欠かせません。自己覚知とは、援助者が、自分の価値観や思考様式、情緒傾向などを知ることです。「こういう発言をされたとき、私はこんな気持ちになるな」とか、「このとき、私はこう思ったから、この行動に出たな」とか、過去の経験や感情を振り返り、その作業を通じて、自分の中にある思考プロセスや感情の振れ幅、偏見、嗜好などに自覚的になることです。

綺麗な言葉を引き出すより、相手のありのままを知りたい

自分の内面に自覚的であることは、とても重要なことです。自己覚知ができていないと、相談者に対して先入観や偏見を抱き、傾聴や需要を阻害してしまうかもしれません。また、援助者の中にある感情が不用意に露呈して、「この人は私のことを見てくれていない」、「話をしたら、否定されちゃうかも……」と、相談者が話をすることを躊躇ってしまい、必要な情報を引き出せなくなる可能性もあります。

こういった援助者の感情の先行によって、相談者が抑圧される現象は、取材の場面では起こりがちなのではないでしょうか。なぜなら、相談援助の面接と違って、多くの取材にはゴールがあり、インタビュアー(と、企画者や編集者など)には質問の意図があって、そちらに向いた回答をインタビュイーがしてくれた方が助かるからです。

時間が限られている。その中で、この質問はマストでしないといけない。各パートの要点となるような話を聞き出したい。過去のあの出来事を深掘りして、教訓となるワードを引き出さないと……。

読者に読まれる記事を書くため、必死になっていると、その熱心さがよからぬ方向へと暴走してしまって、一番大切なインタビュイーを置き去りにしてしまうかもしれません。せっかく、取材という、生の声を聞いて言葉にし、広く読んでもらうという素晴らしい仕事をしているのに、目の前の声に集中できないと本末転倒ですよね。

なので、私は、「明確化は便利だけど、あえて沈黙を受け入れる余裕を常に持っていたいな」と思いながら取材に臨んでいます。明確化は最小限にとどめて、むしろ⑨直面化で、複雑な・相反する感情を引き出す。それをうまく記事に落とし込む方が、ライターとしての技量を問われる、いい仕事につながるチャンスなのでは、とも考えています。

ライターになったばかりの頃は、とにかく緊張し、前準備を念入りにして、綺麗に取材をまとめあげることに躍起になっていました。むしろ今は、話を聞くことに専念して、「記事化は私のライティングスキルでなんとかするから、今しか聞けない言葉をくれ!」という姿勢に変わりました。この姿勢の方が、インタビュイーが私との対話に夢中になってくれて、結果としてインタビュイーにとっても発見のある時間となり、信頼につながる気がしています。

おわりに:社会福祉士の勉強は面白いぞ!

今回は、面接技法を中心に紹介しました。が、社会福祉士の相談援助の技法や理論のなかには、まだまだライターの仕事に役立てる知識がたくさんつまっています!

また、社会福祉士の勉強は、私たちの生活を豊かに、力強くするための勉強に直結するものです。税金ってどういう流れになっているの?社会保障ってなに?保険の違いってなに?介護が必要になったら、どうしたらいいの?などなど……私は、「興味関心のある自死・家族の社会問題に取り組みたい」と希望し、社会福祉士の資格を取得しましたが、結果として資格取得までの勉強は、これから人生の中で起こり得るあらゆる事態への対処法を学ぶことにもつながりました。

介護士や医師などの資格と比べると、マイナーな社会福祉士。だけど、社会福祉士の対応範囲は、「日本で暮らす全員が勉強していても損はない!」と言えるくらい充実したものなので、この記事をきっかけに、一人でもこの職業に興味を持ってくれると嬉しいです。特に、取材をするライターの方は、仕事にも活かせて一石二鳥だと思います!
 
最後に、宣伝になりますが……。社会福祉士の国家資格を保持し、IT・スタートアップ分野のライティングに明るいフリーライターって、稀少なのではないでしょうか……!?フルタイムでの仕事は現在お受けできませんが、業務委託としてのライティングのご相談は常時受け付けております!特に、メンタルヘルス、自死、家族、LGBTQ+、パートナーシップの話題に関心が高く、社会福祉士としての執筆依頼も大歓迎です。2024年、お仕事のご縁があればどうぞよろしくお願いします〜〜〜〜!

仕事実績:【仕事実績・自己紹介まとめ】フリーランス・野里のどか

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