バンコクマダム連載コラム『タイ生活』より 第11話・・・「デザート」
日本から所用でバンコクに来られたお客様三名と食事に行くことになった。
ご希望にお応えしてタイ料理レストランへ。
いつも私が行くような屋台に毛の生えたような店ではなく、料理の一皿一皿に花が添えられているような高級タイレストランだ。
トムヤムクンやヤムウンセンなど名の知れたタイ料理をもれなく注文し、満腹になったところでデザート。
「フルーツでも召し上がりますか?」と尋ねると、三人とも意外そうな顔をして、
「えっ!タイ料理の〆と言ったら、あれに決まってるでしょ。」
とおっしゃる。
「あれって何ですか?」という私に三人ともビックリして
「タイ料理の〆といえば、バナナフリッターアイスクリーム添えでしょ。」と。
「そんなん知りませんでした。
あるかなぁ・・・?バナナフリッターなんて。」
という私に、三人はまたまたビックリして
「え?!知らない?それは、もぐりですよ。タイ料理の最後にバナナフリッターを食べないなんて、もぐりだよ。はははは。」と笑われてしまった。
私は、小学生時代「もぐら」というニックネームを付けられたことがあるけど「もぐり」とは・・・・・。
「そんなもん無いわ。無いに決まってるわ。」と心で思いつつ、メニューを見せてもらおうとウェイターのお兄さんを呼んだ。
「すみませんが、メニューを・・・・」と言おうとする私よりも先にお客様の一人が
「バナナフリッターアイスクリーム添え」
と、日本語でお兄さんに言った。
通じるわけないやん、そんなもん無いわ・・・という私の予想を裏切り、お兄さんは、「カップポム(かしこまりました)。」と注文を承った!
「えーーー!」とビックリしたのは私の方だ。
通じるのんかい!
あるんかいっ!
しばらくして、注文のバナナフリッターアイスクリーム添えが運ばれてきた。何のことはない、バナナに衣をつけて揚げた普通のバナナフリッターとバニラアイスクリームの組み合わせ。
これって、タイのデザートやったんか???
お客様たちは、「やっぱりタイ料理の〆は、これに限る」と満足そうに召し上がる。
私は、ただ一人腑に落ちない気持ちでバナナフリッターを喜んで食べる人たちを見ていた。
やっぱり私は、もぐりか・・・。
家に帰ってタイ人の夫に尋ねた。
「バナナフリッターアイスクリーム添えって知ってる?」
夫は、「知らん。何それ?」と即答。
ははは、キミももぐりだ。
私は、その当時タイで20年以上暮らしていたけれど、タイで「バナナフリッターアイスクリーム添え」を見たのはこの時一回きりだ。
狐につままれたような気分というのは、こういうことなのだろうか・・・・
❁お読みいただきありがとうございます。❁
これは、タイのフリーペーパー『バンコクマダム』に2013年から連載させてもらっているコラムをちょこっと編集し、まとめておきたくて書き留めています。
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