
養殖の話題:イカ・カキ・エビ
◉今回は、タコ・イカ・マンボウ……ではなく、イカ・カキ・エビの養殖について。noteとしては、あまり人気がない養殖記事なんですが、個人的にはエネルギー問題と農林水産業関連の話題は、人間が生きる基本ですからね。非常に関係なく、取り上げさせていただいてます。このnote自体、アクセス稼ぎが目的ではありませんし。
【OIST発スタートアップ「Kwahuu Ocean」、イカ陸上養殖の商業化を目指しプレシード資金調達を完了】PRタイムス
持続可能なイカ養殖システムの開発を手がけるKwahuu Ocean株式会社(カフーオーシャン、本社:沖縄県恩納村 / 創業者兼CEO:中島 隆太、共同創業者:高宮城大樹、以下「Kwahuu Ocean」)はこの度、ライフタイムベンチャーズ(本社:神奈川県横浜市、沖縄オフィス:沖縄県恩納村、代表パートナー:木村 亮介、國井 紅秋)からの資金調達を完了しました。Kwahuu Oceanは今後、事業の成長を加速させ、沖縄県の立地および海洋環境条件を最大限に活かし、イカ類を重要海洋水産資源と位置づけ、生物ならびにその生息環境の保全を念頭に入れた持続的養殖システムを構築します。そして、イカの安定供給を実現し沖縄、ならびに日本の食文化の安定と活性化を目指します。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、イカの写真です。美しいですね~。
◉…▲▼▲▽△▽▲▽△▽▲▼▲…◉
■沖縄科技院大のイカ■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。まずは、沖縄科学技術大学院大学によるイカの研究から始まった、スタートアップ企業による資金調達完了の話題。以前にも、沖縄科学技術大学院大学のイカの養殖研究に関しては、コチラのnoteでも紹介しましたが。あれから2年で、実際の養殖事業に踏み出すところまで、至ったんですね。素晴らしいです。研究機関での研究を、象牙の塔から解放し外界の民のために役立てる。今後の産学一体のモデルケースになりうるので、ぜひとも成功していただきたいところです。
日本の大学は、商売なんて下賤の商人どもがやる穢らわしいものから、距離があればあるほど高尚であるという、無意識な思い込みがあるようで。でも、産学は相互に連帯し合って、研究を産業に落とし込む必要があるわけで。目先の利益を追わないということと、利益を追うは、両立してるはずです。それを、東京大学よりも論文の引用数で上に立った、沖縄科学技術大学院大学が打ち破る。これは、痛快ですね。もちろん、物理学とかすぐには産業には転化できない、でも重要な基礎研究とかありますから。一般相対性理論がカーナビに化けるまで、半世紀以上かかったのですから。
沖縄科学技術大学院大学(以下OIST)ジョナサン・ミラー教授が率いる物理生物学ユニットでは、2016年から現在までシロイカ型アオリイカを含む10種類以上の頭足類(ワモンダコ、アオリイカ3種、ヒメイカ2種、ヒメダンゴイカ、コブシメ、トラフコウイカ等)の飼育実験を行ってきました。同ユニットは、動物行動の数理モデルを作成研究することを目標としており、その研究対象として、行動、特にカモフラージュ等の体色変化が豊富かつ複雑である頭足類をモデル動物として設定し、その行動、神経生理、遺伝子を中心に研究を続けています。研究開始にともない、各種の飼育技術開発に着手しました。現在ではシロイカ型アオリイカ、クワイカ型アオリイカに特化し飼育を続けています。
ほんと、学問的な研究の先に、沖縄県に新たな地場産業をもたらすかもしれない、イカの養殖産業が立ち上がる。産学の理想的な成果として、今後も見守りたい事案ですね。
■塩田成熟の牡蠣で勝負■
続いて、瀬戸内海で塩田跡地を利用した、牡蠣の養殖について。牡蠣はもともと、広島など瀬戸内海地方の洋食は有名でしたし。また、塩田も忠臣蔵でおなじみの赤穂藩とか、入浜式の製塩でしられていますね。元禄時代あたりから、塩の大量生産と大量消費が一般化し、日本の流通と経済が一気に花開いた時代でもあります。それまでの揚げ浜式塩田は、海から海水を汲んできて、それを 砂浜に巻いて水分を蒸発させ、という人力がかかる手法でしたが。
入浜式塩田は、潮の干満が激しい地域で、満潮時に海水を堰き止めて、水分を蒸発させる方式。瀬戸内海は日本の中では日照時間が長い方で、この方式だと大量の塩を生産できるんですね。でも現代では、国産の天日塩は外国産の安い天然塩に負け。むしろ、昔ながらの揚げ浜式塩田のほうが、プレミアが付いたりで。廃業した塩田跡地で、牡蠣を養殖する。養殖としてのノウハウが確立され、価格も比較的高い牡蠣を利用するのは、理に適っていますね。
【国内唯一の「塩田熟成カキ」で世界に勝負…瀬戸内海の離島で起きている「オイスター革命」の中身】PRESIDENTオンライン
養殖業と聞くとどんな働き方をイメージするだろうか。瀬戸内海の離島のスタートアップ企業「ファームスズキ」は、塩田跡地を活用した日本唯一の製法でカキを養殖している。一般的なカキ養殖は収穫までに1~2年かかるが、徹底的な機械化により年2~3回の収穫が可能だという。その独自製法をジャーナリストの牧野洋さんがリポートする――。(中編/全3回)
(中略)
「柑橘の島」として知られる大崎上島でファームスズキが養殖しているのは「クレールオイスター(塩田熟成カキ)」。海で育ったカキに比べて小粒で、甘くて濃厚だ。加熱して食べることが多い日本では肉厚で大粒なカキが主流だが、つるりと喉越しが良い生ガキが海外では好まれる。
これも発想の転換で。大量生産大量消費の場では、大きくて安いというのが価値になるわけですが。少量生産高額販売だと、大きさや価格よりも、美味しさが最優先になるわけで。九州でも、八代海でシカメガキという、小ぶりですがクリーミーな味わいの牡蠣が昔は養殖されていて、これがアメリカで大好評。向こうでも養殖されるようになって、逆に日本での養殖量は減ったのですが。逆に言えば、そういうところにビジネスチャンスはあるわけで。デフレ脳で安いが正義で、質を考えないビジネスは、生き残りが難しい時代です。
■ニッスイの陸上養殖エビ■
そして、ニッスイの陸上養殖エビの話題。ニッスイは安田財閥の流れを汲む、富士銀行を中国とした芙蓉グループの一員。ちなみに、芙蓉とはアオイ科の落葉低木ですが、中華料理の芙蓉蟹は、カニ玉のことです。昔は日本水産株式会社という、堅い名前でしたが。略称のニッスイを正式な会社名にして今に至り。自分らオッサン世代には、もともと捕鯨や魚肉ソーセージなどの会社のイメージがあります。今は水産事業に加えて、加工事業や物流事業の子会社、医薬品事業や船舶の建造・修繕・運航を行っている子会社もあり、多角的な大企業ですからね。
【陸上エビ養殖、ニッスイ初の黒字化 陸海二刀流の技磨く】日経新聞
ニッスイは19日、陸上で養殖するエビの黒字化に初めてめどが立ったと発表した。独自のコスト低減技術を開発し、2024年度出荷分で数百万円の利益を見込む。沖合での養殖を含む「陸海二刀流」で技術を磨き、世界で激化する水産資源の争奪戦に備える。
同日公表した養殖事業の成長戦略の中で明らかにした。都内で開いた説明会で谷内満執行役員は「水産物を安定的に供給するには、ゆくゆく陸上養殖が重要な役割を果たす」と力...
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。
黒字化。甘美な響きですね〜。自分なんか人生がずっと赤字ですから。大きなお世話だ!ヽ(`Д´)ノプンプン 陸上養殖に関しては以前から、このnoteでけっこう取り上げていますが。少子高齢化で、人手不足と言われる令和なのですが、農林水産業は後継者不足。でも、食の安全保障を考えれば、一定の食料自給率は保っておくべきで。でもそこで、税金から補填となると、結果的に競争原理が働かなくなりますし、不健全。こういう企業による利益追求で、ちゃんと黒字が出る事業化というのは、大きいんですよね。
将来的には、グループや関連企業が一定以上の規模になった大企業は、農林水産業の部門設立を義務付け、そこで健全な競争を起こさせるのが、けっきょくは食の安全保障にもプラスになるような。農業の場合、土地の集約化と大規模化は、必須ですし。こちらの陸上養殖関係も、今後も見守っていきたいと思います。
◉…▲▼▲▽△▽▲▽△▽▲▼▲…◉
◉…▲▼インフォメーション▼▲…◉
noteの内容が気に入った方は、サポートでの投げ銭をお願いします。
あるいは、下記リンクの拙著&共著などをお買い上げくださいませ。
そのお気持ちが、note執筆の励みになります。
MANZEMI文章表現講座① ニュアンスを伝える・感じる・創る
どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ
いいなと思ったら応援しよう!
