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校正というお仕事

◉校正とは、Wikipedia先生の定義では〈校正(こうせい、英語: proofreading)は、印刷物などの字句や内容、体裁、色彩の誤りや不具合を、あらかじめ修正すること。校合(きょうごう)ともいう。〉とあります。推敲とゴッチャにする人がいますが、違います。推敲は平凡なものをより良くする・良いものをさらに良くするための試行錯誤ですが、校正は誤字脱字や事実誤認、誤用などを修正するもの。車で言えば、エンジンやタイヤなどの研究開発が推敲で、不具合の整備や故障の修理が校正みたいな感じですかね。

【人間はミスをする生き物だから必要な「校正」という仕事】サライ.jp

本を書き上げて数週間たつと、出版社から分厚い封筒が届く。入っているのは「ゲラ」と呼ばれる校正刷りで、つまりは“本になった状態”を確認するための印刷物だ。

校正は一般的に「初校(一回目の校正)」「再校(二回目の校正)」、場合によっては「念校(三回目の校正)」と続くのだが、なかでもいちばん重要なのが初校である。

初校ゲラを目にしたときには、家の骨組みを見せてもらえたような気がして心が躍る。次いで校正紙に鉛筆書きの文字が入っていることを確認すると、さらにうれしくなってくる。それを書いてくださったのは、私のような人間が「校正さん」と呼んでいる校正者だ。

https://serai.jp/hobby/1093822

ヘッダーはMANZEMIのロゴより、三島由紀夫も絶賛した巨匠・平田弘史先生の揮毫です。

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■校閲は出版社の財産■

出版社に10年ちょっと在籍したので、自分は出版社不要論の立場は取りません。外からは見えづらくても、出版社のプロフェッショナル機能として、いろんな面があり、作家個人が簡単に習得できるものではありませんからね。元編集者としては、編集の仕事でさえも最低3年、出来れば5年ぐらい経験しないと身に付かないものだと思っています。出版社の機能としては主に、以下のようなモノがあります。

・製版(本を作るノウハウ)
・校閲(文字や内容のチェック)
・宣伝(営業と広告)
・法務(権利関係)
・経理(印税や源泉徴収の管理など)

製版にはデザインやレイアウトなど、膨大なルールとノウハウが存在しますし、それは校閲も同じです。単なる誤字脱字のチェックならば極端な話、将来的には AI でもチェック可能になるでしょう。今でもMicrosoft Wordなどには、簡単な自動校閲機能がついていますから。でも、校閲部のお仕事はそれだけではありませんからね。裁判になって判例が出ているものの蓄積とか、科学的な知識なども。

■内容のチェックの重要性■

自分が出版社勤務した最初の頃、ある漫画家が自閉症を、引き篭もりやコミュ障の重いモノぐらいの意味で使用したことがありました。すると校閲部から医学書の解説部分のコピーなどと併せて、丁寧な解説をされました。脳の発達障害で心の病ではない、という基本的なことさえ、自分は知りませんでしたし、世間一般もそんなものではないでしょうかね。

出版業界内部では、岩波書店・新潮社・PHP研究所などが、校閲部のレベルが高いとされます。どの出版社も人気の新書レーベルを持ち、文系の知識だけでなく理系の知識もかなり持っていないと、内容のチェックができませんからね。例えば新潮社の校閲部だと、ある小説家が時代小説の中で、主人公が満月がきれいだというシーンに対して、「天保●年の△月■日は当時の気象記録から雨だったので、満月は見えません」と朱筆が入ったり。KADOKAWAの校閲も、辞書を出してる出版社は強いです。

ちなみに、週刊少年誌などは本作りのサイクルが早いため、校閲部のチェックをせず、編集長と副編集長の責了で済ますところが多いようで。その結果、週刊少年誌の編集者には校閲的な知識の蓄積が甘いことが多いです。週刊少年ジャンプで起きた『燃えるお兄さん』の回収騒ぎもう、新田たつお先生がほぼ同じ筆禍事件を起こしています。校閲部のチェックが入っていたら、ありえない内容でした。

■個人出版時代の校閲■

思えば朝日新聞も、科学朝日という科学雑誌が子会社の朝日新聞出版から発売されていたのですが。2000年に廃刊になって以降、朝日新聞の非科学的な記事が増えた印象です。朝日新聞出版も同じ築地の本社ビルの中に入っていますし、校閲部は共通のはずですから。子宮頸癌ワクチン問題とか、福島第一原子力発電所事故でのAERAの放射能フォビア煽りのデタラメぶりとか、これが科学朝日を出していた出版社の、末路かと悲しくなりました。

実は、MANZEMIの単発講座、あるいは短期集中講座として、校正講座をやれないかと前々から思っていて、友人の某出版社のベテラン校閲マンに打診していたのですが。その人が定年退職してフリーランスになったら、やりましょうという話になっていたのです。ただ、昨年定年退職されてさあこれからというタイミングで、急逝されてしまい。

ただ個人的には、漫画家や小説家の個人出版を考えると、校閲のテクニックは必須ですからね。作家の中には、校閲からの指摘を自分の作品に対する批判、酷い場合はイチャモンと捉える人もいますから。校閲という立場で作品を客観的に見るというのは、作品の完成度を高めるためにも寄与します。アルバイト時代も含めると30年を超える経験とノウハウを、作家と共有したいと思っています。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

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喜多野土竜
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