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中国海軍の宮古海峡封鎖演習の狙い

◉中国海軍の台湾での演習は、宮古海峡での海峡封鎖を含んでいたとの、峯村健司氏の記事が、夕刊フジに掲載されていました。安倍晋三元総理が、台湾有事は日本有事と、散々言ってきたのですが。日本は、軍事オタクではあっても国際政治はわかっていない石破茂内閣によって、この演習を矮小化しようとしているように見えますね。反安倍が骨絡みになっている内閣、ということでしょう。

【中国軍による宮古海峡封鎖演習の衝撃 一切公開なし「新型統一戦争」念頭に 「有事」ではなく台湾は「無事」危機感薄い岩屋外相】ZAKZAK

だが、今年の各紙のトップ記事を見て肩透かしを食らった。ほとんどが企画記事ばかりだったからだ。そんななか、唯一、目を引いたのが、読売新聞のトップ記事だ。

「中国、宮古海峡で封鎖演習 台湾有事想定か、政府警戒 尖閣にも『重武装』海警船団も初確認」

記事によると、昨年12月22日、中国海軍のジャンカイ2級フリゲート2隻とジャンカイ1級フリゲート1隻に加えて、海警局(海上保安庁に相当)の監視船3隻の計6隻が宮古海峡を太平洋側から東シナ海に向けて航行した。軍艦3隻はこれに先立ち、反時計回りに台湾と先島諸島全体を取り囲むように航行したという。

https://www.zakzak.co.jp/article/20250111-EZFLUICLCZLVZHRE2UYL22NYYE/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、宮古島にある竜宮城から見た景色 来間大橋を臨む写真だそうです。


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■新型統一戦争モデル■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。何度か書いていますが、台湾は九州ほどの面積ですが、最高峰が玉山の3952メートルという、けっこう山がちな土地です。九州は、屋久島の宮之浦岳の1936メートルが最高峰で、本土に限れば大分県の九重連山・中岳が1791メートルに過ぎない、平べったい島です。つまり、中国に攻め込まれたら、山岳地帯に逃げ込んで、ゲリラ戦を展開するのが、国力差から言っても常道。なので、中国軍は沖縄側の海域に戦艦を配置し、東側から山岳地帯を攻撃する必要があります。ところが、日本最西端の与那国島と台湾の間の海峡ではなく、宮古海峡が閉鎖の演習とは、穏やかではありませんね。宮古海峡は、沖縄本島と宮古島の間の海峡ですから。

読売新聞が元旦でスクープした中国軍による宮古海峡封鎖演習についてふかぼりしました。実はこの動きは先日拙稿で紹介した中国による非公開のステルス演習の一環なのです。拙著で紹介した新型統一戦争モデルの通り展開されています。#台湾有事と日本の企業

https://x.com/kenji_minemura/status/1877889620425544114

中国の場合は、嫌がらせを繰り返して、既成事実化を図るという、実にしつこい……粘り強い外交戦略で、なし崩し化を狙ってきますが。この演習も、繰り返しておいて尖閣列島どころか、宮古八重山地方も、ドサクサに紛れて自国領土に組み込む布石かと、疑ってしまいますね。峯村氏が指摘されているように、新型統一戦争モデルの通りの展開なら、偶発的とは言えず。沖縄本島の米軍の介入も封鎖する、そういう含みもあるのでしょう。

■第一列島線の外側に■

海軍力を用いて港湾や海岸に船舶が出入することを阻止するのが、海上封鎖ですから。島国で資源に乏しい台湾を、兵糧攻めにするわけですが、そんなことをされたら日本のシーレーンにもダメージが。第一列島線は、アメリカの死守すべき防衛ラインですからね。で、中国海軍はその第一列島線の外側に、軍艦を展開したわけで。もう、レイムダックのバイデン政権なら、この件に関しても、米軍は動かない・動けないと踏んでの、大胆な戦術なのでしょうけれど。アメリカも、ずいぶんナメられたものです。中国を適しするトランプ新大統領なら、即反応があるでしょうけれども、政権交代のタイミングを狙った、なし崩し戦法。良くも悪くも、中国政府は強かです。

 いずれの演習も、中国側は一切公開していない。その後の筆者による台湾軍や米軍関係者らへの取材で明らかになったのが、中国海軍の軍艦が12月9日から3日間かけて、台湾東岸沖の「第1列島線」の外側に壁をつくるように展開していたことが分かった。中国が「台湾併合」に乗り出した際、米海軍の艦艇がグアムやハワイの基地から出撃することを防ぐことを想定した演習の可能性が高い。

同上

こうやって見れば、安倍元総理の自由で開かれたインド太平洋戦略が、いかに対中国封じ込めの意味を持ち、TPPが対中国経済封じ込めの意味を持っていたかが、理解できますね。日米にインドとオーストラリアを加えて、軍事的な会場の要衝を中国から守る。台湾同様、資源の少ない島国の日本は、輸入と輸出が生命線。ここを、疎かに考えていたら、マジに兵糧攻めです。特に石油は、中東産に大きく頼っているのですから、国内の備蓄なんて、あっという間に枯渇します。無能な方の菅元総理のせいで、原発もまだ結構な数が、止まっていますから。燃料をセットして、臨界に達したら3年は運転できる原子力発電が、いかに大事なのか、わかるでしょうに。

■言葉遊び言霊内閣?■

なのに、石破茂内閣は、危機感もクソもありません。というか、外務大臣が言葉遊びをしてどうするんだと。これって典型的な、神道の言霊思想で。台湾有事という言葉を口にすると、言葉が持つ呪力によって、現実を引き起こしてしまう、という考え方です。台湾有事と言うと、本当に有事が発生するので、無事ということでそれを抑えようとう話ですが。それは、呪術であって政治ではありません。でも日本人は、この言霊信仰が骨絡みになっているので、危機的状況でそういう宗教的な不合理が顔を出してしまいます。それも、しばしば。これでは、台湾有事が発生しても、まともな対応は無理ですね。戦前の、総力戦研究所の的確なシミュレーションを無視して、日米開戦に踏み切ったのと同じです。

 にもかかわらず、石破茂政権の危機感は薄いと言わざるを得ない。岩屋毅外相は昨年12月の訪中前、香港フェニックステレビの単独取材に対し「私個人として『台湾有事』という言い方は好ましくない。台湾は『無事』であるべきで、『有事』ではない」と語った。

同上

日本の悪癖として、最悪のタイミングで最悪の人材を選んでしまうという、部分があります。でもこれは、「和を以て貴しとなす」の国の悪癖です。島津斉彬公は、誰もが評価する人間は、実際は八方美人で、いざとなったらあっちこっちにいい顔をしようとして、何も決められないから、要職につけるなと語っておられたとか。でもそれは、英邁を謳われた名君中の名君の考えで。日本人は八方美人の無難な人物を選んでしまいがち。近衛文麿内閣とかが、その典型例ですが。石破茂内閣もまた、そういう八方美人内閣の可能性を、成立直後から指摘してきましたが。嫌な予感はあたったようです。


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