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日本原水爆被害者団体協議会にノーベル平和賞

◉受賞、おめでとうございます。日本は敗戦国という立場もあり、原爆による被害者の平和へのお願いというものは、ともすれば否定的な形で捉えられることも多かったですから。ノーベル賞という、世界的な権威に認められたことは、大きな前進だと思います。

【日本被団協にノーベル平和賞 「平和への希望に関与、たたえたい」】朝日新聞

 ノルウェーのノーベル委員会は11日、2024年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表した。授賞理由について、「核兵器が二度と使われてはならないと、証言をしてきた」とした。日本のノーベル平和賞受賞は、1974年の佐藤栄作元首相以来50年ぶり。

 ノーベル委員会はこれまでも、核軍縮・不拡散の取り組みを後押ししてきた。2009年に「核なき世界」を訴えた米国のオバマ大統領(当時)に、17年には核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に平和賞が贈られた。

https://www.asahi.com/articles/ASSB83HC3SB8UHBI035M.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。


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■ノーベル平和賞の意義■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。ノーベル平和賞自体は、やや微妙な賞という側面があるのも事実です。政治色が強く、歴代の受賞者とかも、疑義を呈される人物もチラホラ。朝日新聞が言及しているオバマ大統領も、アルカイダのオサマ・ビン・ラディン氏を暗殺し、空爆もチョイチョイ実行しまたし。コロンビアのフアン・マヌエル・サントス大統領の受賞も、物議を醸しましたね。キッシンジャー氏やPLOのアラファト議長の時も、賛否両論ありました。

韓国の金大中大統領のノーベル平和賞とかも、その太陽政策は今となっては、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)という世襲軍事独裁国家を延命させただけで、果たして平和に貢献したのか、疑問だったりします。そういう意味では、手放しで喜べない面があるのも事実でしょう。それでも、独裁政権に監禁されている人物に、ノーベル平和賞を与えることによって、処刑や暗殺を躊躇させるという牽制効果があるのも、これまた事実です。劉暁波氏の受賞など、そういう面があったわけで。

■戦後79年目の状況変化■

アメリカ人などでは未だに、真珠湾攻撃と原爆を等価とする言動する人間が多いです。今も昔も無能な日本の外務省が、宣戦布告の通達を遅らせてしまい、アメリカ側から見れば 卑怯な騙し討ちになったのは、歴史的事実です。しかし、真珠湾攻撃によるアメリカ側の死者は、民間人を含め約2400人。戦艦アリゾナなど4隻が沈没し、アメリカの太平洋艦隊のほとんどが損傷を受け、大きな被害が出ました。でも、その報復だとしても、広島と長崎に原爆が投下された1945年末までに、広島では約14万人、長崎では約7万人が亡くなりました。

2400人と210000人。あるいは0.24万人と21万人。桁が二つも違います。近代法のルーツであるハンムラビ法典は、「目には目を、歯には歯を」の言葉で知られるように、同害報復(タリオ)が原則です。87.5倍も違っては、とても同害とは言えないでしょう。そもそも1945年当時でも、非戦闘員の殺害は、紛うことなき国際法違反です。東京大空襲や神戸大空襲、大阪大空襲、名古屋大空襲なども含めて、非戦闘員である民間人は、違法行為による犠牲者です。ノーベル財団が、戦後79年経ってようやく、それを認めたということです。

 ノーベル委員会は、「被爆者は、筆舌に尽くしがたいものを描写し、考えられないようなことに思いをいたし、核兵器によって引き起こされた理解が及ばない痛み、苦しみを理解する一助となった」とし、「今日、核兵器の使用に対する『タブー』が圧力を受けていることは憂慮すべきである」と懸念も示した。

■しゃしゃり出る共産党■

日本は敗戦国だから国際法違反の民間人大量虐殺もスルー、というのが国際的なコンセンサスだったわけです。アメリカやイギリス、フランスなどの西側にとっても。ソビエト連邦や中華人民共和国などの東側にとっても、その方が都合が良かったから。では、そのコンセンサスがなぜ崩れたか? 岸田文雄前総理大臣の時代に実現した、G7での広島平和記念公園での献花、この影響が大きかったのは、疑いないでしょう。アベガーキシダガーの皆様には、認められないでしょうけれど

にも関わらず、左派系マスコミは、この件に言及しませんね。それどころか、戦後の原水爆禁止運動で混乱をもたらした共産党に、わざわざ コメントを取りに行ったりしています。

共同通信から、コメントを求められました。

私は、「涙が出るほどうれしい。被爆者の皆さんが核兵器の廃絶を訴え続け、それが核兵器禁止条約に実ったことが、高く評価されたものと思う。
日本政府は、日本被団協がノーベル平和賞を受賞したこともふまえて、いまこそ核兵器禁止条約に参加すべきだ」
と述べました。

https://x.com/koike_akira/status/1844667671629197651?t=Q-KJwTsa5UIyjhmgi_-KBw&s=19

いや…あのぉ、「社会主義国の実験は、帝国主義者による核戦争を阻止する役割をもっている」って言ったのは、いったいどこの政党でしたっけ? いわゆる〝ソ連の核兵器はキレイな核兵器〟論ですが。加えて、原水爆禁止日本協議会(原水協)が分裂した理由に、言及しないのは偽善ではないですかね? そんな政党にわざわざコメントを求めて、一方的な主張を垂れ流す。桜ういろう通信社こと共同通信社が、また歴史改竄するつもりでしょうか? あの時代、米英の核実験を国連で批判した岸信介と、どっちがまともか。どっちが慧眼か。歴史に裁かれるべきはどちらか?

■原水協分裂の歴史背景■

もともと、原水爆禁止日本協議会は、1955年に結成された日本の反核・平和団体の全国組織で、略称が原水協。しかし路線の対立から日本社会党・総評系が脱退し、1965年に結成されたのが原水爆禁止日本国民会議で、略称は原水禁。原水協から、民社党・全日本労働組合会議系が脱退し、1961年に結成されたのが核兵器禁止平和建設国民会議で、略称は核禁会議またはKAKKIN。対立の理由は、ソビエト連邦や中華人民共和国の核兵器に対して、全ての核兵器に対して反対するか否か、でした。

共産党は前術のように、ダブルスタンダードを正当化。被団協代表理事会は、いかなる原水禁団体にも加盟しないと決定し、原水協からも脱退しています。共産党が この件で、しゃしゃり出てくる理由は薄いですし、わざわざ聞きに行く大手マスコミの意図が那辺にあるか? 桜ういろう通信社は、やっぱり桜ういろう通信社だな、と自分は思いますけどね。事情をあまり知らない一般大衆を、誘導しようとしてるんでしょうかね。竜田一人先生のポストも、以下に転載しておきます。

原水協は共産党系。原水禁は社会党系。日本被団協はどちらにも属さず都道府県単位の被団協の集まった全国組織。
広島県には被団協が2つあり、共産党系と社会党系。日本被団協に属しているのは社会党系。
これは原水協だから共産党系広島県被団協。

https://x.com/TatsutaKazuto/status/1844703204174708758?t=Qtctaj1PFYgcVvCyI8L8Og&s=19

■核兵器禁止条約推し?■

これって共産党が、共産党系広島県被団協を利用する気満々に見えるのですが……。田村智子共産党新党首のポストも、そこを踏まえた上で読むと、目的は明らかではないですかね。小池・田村両議員に共通するのが、核兵器禁止条約(核禁条約)への言及です。要するに同条約に不参加の、日本政府批判につなげたいという、政治的な目的が丸見えですよね? 共同通信社の思惑も、そこでしょうね。

涙が出そうです。
核脅威が強まるもとで、ノーベル平和賞、日本被団協が受賞!
原爆被害の地獄の苦しみを、憎しみや復讐ではなく、核兵器全面禁止・廃絶の運動としてきた被爆者の皆さんの歩み。
核兵器禁止条約を誕生させ、今また国際社会を動かしている。
日本政府よ、まだ核禁条約に背を向けるのか。

https://x.com/tamutomojcp/status/1844667534521634952?t=oZDKp_Pkd3qNfUunplBSjA&s=19

アメリカやフランスなど核保有国は、この条約に参加していませんし、ドイツなどNATO加盟国も、参加していません。同時に、ロシア連邦も中華人民共和国も北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)も、不参加です。右も左も東も西も参加していない、絵に描いた餅の理念条約に過ぎない、ということです。今回のノーベル平和賞は、ウクライナで行き詰まったロシア連邦軍とプーチン大統領が、核兵器を使用する可能性を踏まえての、牽制の側面もあるでしょう。今回も、ノーベル平和賞の政治的な側面が、出てる訳で。

でも、そこを踏まえた上でも、日本原水爆被害者団体協議会にノーベル平和賞は価値があると、自分は思います。改めて、おめでとうございます。


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