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AIでラノベ翻訳や新聞記事

◉アニメ化もされたヒット作『葬送のフリーレン』のノベライズ作品が、AIで翻訳されて、海外で販売されるとのこと。いよいよ、そういう時代になりましたか。ただ、学術書と違って、ラノベはイロイロと難しい問題があるような……。

【ライトノベルを海外発信へ 小学館、AIで英語に翻訳】東京新聞

 小学館が、人気漫画「葬送のフリーレン」の小説版などのライトノベルを、人工知能(AI)で英語に翻訳する事業を始めたことが3日、分かった。今冬に北米圏で専用アプリ「NOVELOUS(ノーベラス)」をリリース。漫画やアニメなどに続く日本文化の海外発信に拍車をかけたい考え。

 ライトノベルは、会話の多い、若者向けの娯楽小説。小学館によると、発行部数の少ない作品も多く、採算性などから翻訳や海外展開は難しかったが、AIの活用によって低コストで多くの作品を翻訳でき「海賊版対策にもなる」(担当者)としている。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/344925

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。

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■言葉のニュアンス■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。これが学術書ならば、事実を淡々と提示していくものですから、作者の文体とか、あまり関係ないです。もちろん、興味を持続させ、それを引っ張る構成とか、見せ方の順番は、工夫が必要ですが。それはあくまでも、カードの切り方の戦略であって。これがラノベの場合、その文章をその言語の文化と、ある意味でクロスさせる必要があるんですよね。例えば『宇宙船レッド・ドワーフ号』では、空飛ぶ絨毯に乗ったスタッフが、山嶺の間を飛ぶシーン「ジュリー・アンドリュースになった気分だ」というシーンを「ダライ・ラマになった気分だ」と変えたり。

『サウンド・オブ・ミュージック』の主演マリア役で知られるジュリー・アンドリュースですが、1965年の作品。若い層には、彼女がアルプスの峰々をバックに歌うシーンを知らないので、ピンとこない。なので、日本に馴染みのあるダライ・ラマ法皇にしたわけで。こういう改変は、両国の文化に精通し、意訳ができないと無理ですからね。

また、脚本家でもある三宅隆太監督が、脚本のセリフこそが作家性と指摘されたように、その言葉には微妙なニュアンスが込められ、機械的な翻訳にはそぐわないんですよね。だから、梶原一騎先生も、セリフは句読点の位置も、改変を許さなかったわけで。
「俺は海賊王になる!」
「海賊王に俺はなる!」

機械翻訳なら、どっちも〝I will become the Pirate King!〟ですが、そこに含まれたニュアンスは、微妙に違いますから。翻訳者の中の、作家性が問われます。〝Pirate King, that's what I want!〟とか。

■そして新聞もAIで■

そして、こんな話題も。佐賀新聞で、AIで生成した新聞紙面の、実証実験が行われたようです。noteの技術者でもある深津貴之氏が、関わっていたんですね。ある意味で、新聞記事こそ、AIで充分なような……。基本、記事は事実を正確に、簡潔に伝えれば良いのですから。新聞記事も、時事通信社や桜ういろう通信社の阪神記事とか、いわゆるベタ記事と呼ばれ、正確性さえクリアしていれば、充分です。まぁ、だからこそ新聞社は、通信社の世話になっておきながら、見下してバカにしているんですけどね。もちろん、新聞記者は現場で修行して、統括する人が必要なので、消えて無くなりはしないでしょうけれど。

佐賀新聞さんの「AIで生成した新聞面」実証実験。8/1日32面です。
支援先のメディア用の生成AIシステム「apnea」で作られています。AIを肯定するにも否定するにも、「やってみなけりゃわからない」ということで、よいチャレンジ。

https://streets.jp/service/apnea

https://x.com/fladdict/status/1819311091484446916

でも、日本の新聞記者は、文学青年崩れのような情緒的な記事を、名文と仲間内で褒めそやす、奇妙な文化がありますから。普通に新聞はもう、配信記事を8割にして、地方紙は地域と密着した記事に注力すれば、それでいいような。その意味では、全国紙とかもっとAIによる省力化が進みそうな。そもそも、全国紙って必要なのか、という問いもあります。地方紙が消えたところに、読売新聞などが補完する意味はあるかもしれませんが。それもいずれ、ネットに取って代わられ、紙の新聞はそのうち消える可能性が。

■10年後消える職業■

さて、2014年に英オックスフォード大学が、あと10年で消える職業を、予想しましたが。まぁ、現実には消えていない職業も多いのですが、確かにセルフレジやらファミレスの配膳ロボットなど、省人力化が進んでるジャンルもありますね。単純作業は、消えてなくなる部分はあるでしょう。ただ、流通関係の運転手など、自動運転でもカバーしきれない部分はあるので、そういう部分は縮小しながらも、残るんでしょうね。でも、かつては良家の子女の職業と言われた電話交換手とか、消えてしまいました。社会は常に変わっていって、消える職業と、新たに生まれる職業、両方あるので。

アナウンサーなども、最近勉強し始めた読み上げアプリとか、多種多様な声が用意されており、普通に朗読させる分には、充分なレベル。こうなると、北朝鮮の名物アナウンサーのオバサンとか、あのレベルの個性とか、声質がないと厳しいのかもしれません。マスコミという仕事自体が、けっきょくは流通経路を握って独占してきたがゆえに、新規参入のハードルが高かったがゆえに、我が世の春を謳歌してきたのですが。その独占がインターネットで崩れると、はたしてメディアとはなにか、作家やタレントなどクリエイティな才能に寄生してだけの存在ではないか……という疑義が自分にはあります。

これは自分の属する出版業界も、同じで。極端な話、編集長と副編集長と平編集と、3人いれば充分なんですよね。そういう意味では、もう編集者は雑務はAIに丸投げし、目利きの編集者だけがプロデューサー的なポジションで仕事し、後継者を育てれば、それで十分かもしれませんね。個人的には、それでもなお代替できない名人芸はあると思うのですが。名人芸ゆえ、伝承できないんですよね、これが。


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