見出し画像

豚骨ラーメンと麺の硬さと東西食文化

◉豚骨ラーメン、いうても自分も九州の人間ですし、福岡には青春時代の2年間住んでいましたしね。どっちかと言えば、麺は固めが好きです。それは福岡のラーメンが細麺で、わりと麺がスープを吸って柔らかくなるのが早めという、特質があるからです。加えて、九州の人間は基本的にせっかち。茹で上がる時間を待っておられんばい、ってのはあるかもしれません。とはいえハリガネとか粉落としレベルは、さすがに注文しませんけどね。

【九州の豚骨ラーメン店では「バリカタ」の注文がほとんどない? ラーメンに詳しい人が初めての訪問で「麺硬め」を頼まない“納得の理由”】文春オンライン

 味の構成、素材、調理の仕方、提供方法、食事空間……。ラーメンという料理は時代とともにさまざまな要素が変わりゆく。そんな奥深き世界に魅了されたのがラーメン業界を専門に、デザイナー、イラストレーター、漫画家、エッセイストなどとして活躍する青木健氏だ。
 同氏は、ラーメンが好きな同志に向けた気軽な入門書として『教養としてのラーメン ジャンル、お店の系譜、進化、ビジネス――50の麺論』(光文社)を著した。ここでは同書の一部を抜粋し、「食べずに味わう」ラーメンの世界を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

ヘッダーは自分のフォトギャラリーより、チャーシューにキクラゲに青ネギと、オーソドックスな豚骨ラーメンです。

◉…▲▼▲▽△▽▲▼▲▽△▽▲▼▲…◉

■東西ラーメン文化の違いは?■

東京はありがたいことに、日本全国のいろんなラーメンが食えます。醤油・味噌・塩・豚骨が4大スープで、細麺・太麺×ストレート麺・縮れ麺の組み合わせが麺の区分だと思うのですが。組み合わせ次第で16パターンのラーメンに大別できる感じですかね。つけ麺やダブルスープはまた、別の区分になるでしょう。個人的な意見ですが、太麺だと小麦の香りが強くて。魚介系や醤油ラーメン、塩ラーメンなどあっさり系だと、スープの香りが楽しめない気はします。

そういう意味では、細麺自体が自分は好きです。これは、個人的な好みですので、上下優劣は言っていません。ただ、東京で蕎麦を食っていて思ったのですが。東京は麺を楽しむ文化なんだな、と。関西やその影響が強い西日本は、昆布出汁や鰹出汁などで、ツユを楽しむ文化なんですよね。そうなると、実は麺軽視の文化とも、表裏一体だったりします。これは自分の思いつきではなく、東京生まれで関西育ちの山田五郎さんも、TBSラジオの番組で指摘されていましたね。

■軟水の汁文化と硬水の麺文化■

確かに関西のうどんは美味しいのですが、それは軟水の文化ゆえ。軟水は、昆布出汁と相性が良いんですよね。東京は江戸時代に天下普請で徳川家康が大規模に土木工事をした、埋立地ですから。井戸水は塩分が混ざるので、玉川上水などで水を引き、当時としては世界的にも珍しい大規模な水道を地下に作り、提供していました。これが硬水で、昆布出汁が上手く出ない。結果的に、濃口醤油文化が発達したんですが、濃口醤油に負けない麺の香りや腰が、重視されることに。

『美味しんぼ』では麺好きの中松警部が、新蕎麦の香りの良さ素晴らしさを語りますが。掛蕎麦が主流の文化では、蕎麦の香りは見過ごされがちです。笊蕎麦では、汁はちょっとだけつけるのが粋とか通と言われるのですが。あれはケチではなく、蕎麦の香りを楽しむ文化と解すれば、納得ですね。逆に関西は、汁を最後まで飲んで出汁の旨味を楽しむ文化ですから、そのぶん麺にはそこまで気を使わないと、山田さん。腰を重視するのは関西ではなく、讃岐うどんなどの文化ですしね。関西の味付け文化の福岡も、柔らかいうどんが大好き。

■これからのラーメンの方向性■

そういう、東の麺文化と西の汁文化の違いとか、思いを致すと面白いですね。ちなみに鹿児島ラーメンは、横浜ラーメンがルーツ。ゆえに、鶏ガラと野菜出汁のスープに豚骨を合わせるので、九州のラーメンとしてはアッサリしてるんですよね。で、麺は元祖の店主が雁屋哲先生のように鹹水の匂いを嫌い、台湾から引き上げてきた方から学んだビーフンの製法で、匂いの癖も少なくしていますね。そういう意味では、九州にしては麺の香りにやや拘る方かも。

個人的には、香りの強い豚骨ラーメンと味噌ラーメンは汁を楽しみ、塩ラーメンと醤油ラーメンは麺を楽しむのが、合うのかなと思ったりします。スープも麺も両方ともというのは、なかなかに難しそうですね。これは、受け手の側の問題として。西日本は白味噌文化で、こちらは赤味噌文化とはまた違いますからね。鹿児島ラーメンは、味噌ラーメンが各店舗で個性的で、そういう意味では白味噌系で麺を楽しむラーメンも、どこかあるなら期待したいですね。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ