「売上を上げる」ための具体的な方法は、きっちり分解した掛け算のフレームワークで考えること。
突然ですが、皆さんはお風呂屋さんのオーナーです。
どうすれば店舗の売上を上げられるのか?
一緒に考えてみましょう!
今日のコラムでは、戦略を考えたり、プロジェクトの振り返りをしたりするときに使えるロジカルシンキングについて、実際の店舗の事例を含めながらご紹介します。
論理的に考えるのが苦手、という人もいますがロジカルは学んで身につけられるものです。フレームワークもありますし、書籍もたくさんでています。
書籍で学ぶなら『地頭力を鍛える』がおススメです。
売上を上げる方法を、【掛け算】で考える
こんにちは!
全国で日帰り温泉の「おふろcafé」ブランドを手がけるONDOグループ 宮本まさきです!
「売上を上げたい!」
と思った時、とるべきアクションは何か?
これを導くための方法をロジカルシンキングを使って考えてみたいと思います。
まずは、【売上】を要素に分解します。ロジカルシンキングでは、この「分解」が肝になります。
・足し算ではなく、掛け算になっていること
・具体的なアクションを考えやすい粒度になっていること
が大事です。
僕はお風呂屋さんなので、お風呂屋さんの場合として考えます。皆さんもお風呂屋さんになったつもりで、もしくはご自身の店舗/商品に照らし合わせながらやってみてください。
【1】
売上=「客数」×「客単価」
一番シンプルなのはこの掛け算です。
ただ、実際には複数の商品を取り扱っていることも多いので、これではざっくりしすぎているかもしれません。
僕がコミットしている四日市の「おふろcafé 湯守座」では、
・時間制コース
・フリータイムコース
・朝風呂コースの3つの料金があり、店舗によっては宿泊のプランがあることもあります。
これを全部まとめて平均の客単価を出してみたも、そこから具体的なアクションを導きづらいのです。
そこで、もう少し分解してみましょう。
【2】
売上=「時間制の客数×客単価」
+「フリータイムの客数×客単価」
+「朝風呂の客数×客単価」
このような式になりました。でも、これでもまだ不十分です。
「時間制って言っても、ニーズはいろいろあるよね?」
「フリータイムの人は地元の会員の方と遠方のお客様でまた違うよね?」
など疑問が湧いてきます。
では、もっと分解してみましょう。
【3】
売上=
「60分客数×客単価」
+「90分客数×客単価」
+「120分客数×客単価」
+「遠方フリータイム客数×客単価」
+「近隣フリータイム客数×客単価」
+「朝風呂の客数×客単価」
これぐらいの粒度になれば、ようやく具体的なアクションを考えられるようになります。
このようにして、まずは売上を要素に分解してみてください。いわゆる因数分解です。
一度分解して満足するのではなく、「こういう反論ができるよね?」と自分に問いかけながら、最適な分解を目指していきます。
客単価を上げる方法も、分解して考える
適切な粒度に分解された式をベースにして、具体的なアクションを考えてみましょう。
ここで1つ注意点。実は「客単価」という概念が落とし穴です。
仕事柄、多くの会社・多くの店舗の方々と話をする機会があるのですが、サービス業には
客単価をあげる=接客
という公式が根強くあって、それ以上に分解していないことが多いからです。
例えば飲食の単価を上げたいと思った場合、
飲食客単価=注文単価×注文数
というシンプルな分解で
・高単価メニューを考える
・接客で注文数を増やす
というアクションになりがちです。
これを、
飲食客単価=
「入館者数×入店率×注文率×注文数×注文単価」
+「2品目注文率×注文数×注文単価」
+「3品目注文率×注文数×注文単価」
という風に細かく分解すると、
・入店率をあげるためにイーゼルを設置する
・注文率をあげるためにタブレットの表示順や、写真、テキストを改善する
・2品目注文率をあげるために、積極的にバッシングに行き「おかわりいかがですか?」と、2品目以降はハンディで受ける。
などの具体的なアクションを考えやすくなります。
実際に、上記のような考え方で業績を上げた事例もあります。
ディスプレイを変えて、入店率と客単価を上げた老舗「ゑびや」
伊勢のゑびやさんは、「入店率」を上げたことで有名です。
標準的なディスプレイだと
・入店率9.6%
・購買率22.6%
・客単価は1413円
これを伊勢で馴染みのあるサイダータワーにしたに変えたのだそうです。
すると、入店率は15.7%と大きく向上しました。
しかし店内が混雑していまい、顧客単価は1046円に低下してしまったのです。とはいえ、魅力的なディスプレイにすると入店を押上げる効果はあることが分かりました。
そこで、和モダンで少し高級感のある感じにブラッシュアップしたところ、客単価は1593円にアップ。入店率も13.2%と平均値を大きく上回ったそうです。
こうした効果測定をもとに、確実に入店率がアップするディスプレイが判明し、ディスプレイにかけた費用(和モダンの場合222万5000円)も、わずか1カ月で回収できたのだそうです。
(参考記事:https://japan.cnet.com/article/35133722/)
人は人、機械は機械の適材適所を探る
また「焼肉きんぐ」などの展開で有名な物語コーポレーションさんの事例もあります。
物語コーポレーションさんでは、まず運営のスタンダードを厳しく守る。次に、業績が上がるポイントとして「接客」の力に注力しているように感じます。他は非人力でいかに済ませるかを徹底的に考えている印象です。
最近は、飲食店でもロボットが配膳をするシーンを見かけるようになりまいた。2020年のものですが、物語コーポレーションさんでのロボット導入の経緯が語られている記事があります。
ロボット導入の経緯は、「人は人、機械は機械」の適材適所を探るため。
スタッフの労務負荷の削減と付加価値の向上。それを両立するためにまずは人の負荷を下げることを考えたのだそうです。
重たいものを運ぶ作業はロボットに。
人間には人間にしかできない仕事に集中してもらう。
たとえば「焼肉きんぐ」ではおいしい焼き方を教える「焼肉ポリス」なる人によるサービスがあり、それを大きなサービス付加価値となっているそうです。
分解すれば、インプットの質も効率も上がる
よく、戦略を考えるとか振り返るとかって言いますが、僕は時間の大半をこのように、自店舗の業績をあげるために役立つ、最適なフレームワークを考えることに使っています。
フレームワークをある程度作ってしまえば、日々の視察でも目にするポイントが違ってきて、インプットの効率が上がります。
視察に行く時に、
「客単価をあげよう」
と思って行くのか、
「客単価を上げるために、入店率(まずは着席してもらう)と、2品目のオーダーを取るための接客、がポイントなので重点的に見よう」
と思っていくのかで、インプットの効率も質も全然違うわけです。
アクションを振り返る時に「なんだかうまく振り返れている気がしない」という場合は、このフレームワークが定まっていない、メンバーで共有できていない可能性があります。
そういう時は、目の前のアクションを考えるよりも、しっかり時間をとってフレームワークを考える方が、遠回りなようで近道だったりします。