インターネットと良き隣人に
物理的に人に会いづらい今、インターネットがいろんな意味でこれまで以上に社会を支えてくれている。テレワークでのweb会議、SNSでの注意歓喜、さらには退屈せずに休日を家で過ごすためのYoutubeまで、インターネットは僕らの生命線となりつつある。
でも、みんながインターネットを今まで以上に利用することになったが故に、インターネットに大きな負荷がかかり始めている。欧州ではすでにNetflixやYoutubeなどが動画の質を落として配信することでこの負荷を軽減する取り組みを始めた。(インターネットが使えなくなるとかは基本的にありえないからそれは安心して欲しい)
この記事から分かるようにインターネットは無限に使える最強のアイテムでもなんでもなくて、実はちゃんと限りがある。みんながフル回転で使い倒すのはちょっと難しい。でも空気と同じで目に見えないから限りがあると言っても実体がよくわからない。
ただ、これからさらに重要度を増すインターネットが多くの人にとってよくわからない隣人的な存在であり続けることは、ITインフラに関わる者として個人的に少し悲しい。だから、少しでも多くの人にこの大切な隣人についてもっと知ってもらえたら嬉しいなーと思ってこの記事を書いた。
少し難しいけれど知っていることで思いもしない良いことがある...かもしれない。できる限り難しい言葉は排して、でも本質を外さないように、そして非IT系の人が想像しやすいように、そんなことを大切に書いたので興味のある人は読んでみてください。
はじめに
これから書く内容を3行でまとめるとこんな感じ。
インターネットはケーブル(物理的な線)の集まり
データは全て0と1の組み合わせからできている
インターネットは0と1をできる限り速く遠くへ送り届ける
インターネットはケーブルの集まり
例えばラインを使えば文章はもちろん、写真も動画もそして音声も送ることができる。それはもちろんインターネットを介して届く。でも具体的には一体何を経て僕らの元に届くのだろう。昔それをちょっと好きだった友達の女の子に聞いたら、空気中を漂って届いているのだと力説してくれたけれど、もちろん違う。でも可愛かったな...
スマホやPCを触っているとインターネットは無線で繋がるものだという意識が強くなる。でも実はそれはメッセージが僕らの元に届くまでの短い区間、具体的に言えばモバイルだと遠くても50Km、WiFiだとせいぜい200mぐらいの間でしかない。
でもそれでは日本中はおろか、自分の住んでいる町ぐらいにしか届かない。(自分の町の人だけと繋がれる空間も面白そうではあるけれど...)もちろんそれでは困るから、それ以上遠くに届ける為に、ケーブル(物理的な線)が登場する。どこにいてもつながるために日本中を、そしてもっと言えば世界中に蜘蛛の巣のようにインターネットのケーブルが張り巡らされている。
例えば東京の地下には"とう道"と呼ばれる総距離290Kmの地下空間が存在し、そこにはインターネットのケーブルが無数に通っている。日本とアメリカの間には数千キロに及ぶ海底ケーブルが何本も繋がっていて、アメリカへのメッセージはそこを遠って届く。嘘でも誇張でもなく世界は僕らの知らないところで、インターネットケーブルによって繋がっている。
「インターネット 海底ケーブル」みたいなキーワードでググると、インターネットのケーブルがどのように繋がっているのかを表した世界地図が出てくるので気になる人は見てみてください。
線の中を何が通るのか
世界がインターネットのケーブルで繋がっていて、メッセージはそのケーブルを通り、最後に無線の電波に乗って届くということは何となく分かったと思う。でもメッセージがケーブルを通るって具体的にはどういうことなのだろうか。
こう聞くとデータが通っているんじゃないの、と思われるかもしれない。でもじゃあデータってなんだろう。どうやってデータはケーブルの中を通って僕らに届くのだろうか。
写真も映画も音楽も"ゼロとイチ"から出来ている
音楽を聞いたり、映画を見たり、ニュースを読んだりLineをしたり、僕らは日々スマホやPCで"情報"つまりデータに触れて生きている。フィジカルな世界では紙は木からできているし、CDはプラスチックでできている。じゃあこのスマホで見ている文章なり写真なりは一体何でできているのだろうか。その答えが0と1である。
データ全て例外なくその元素まで還元すると0と1の組み合わせで出来上がっている。例えば「あ」という文字は0で「い」という文字は01で「す」という文字は001という具合に。これを組み合わせて"0 01 001"で「あいす」という単語ができ上がる。
そしてこれは米津玄師の「Lemon」であろうと、100日後に死ぬワニであろうと、母がラインでたまに送ってくるお地蔵さんの顔写真であろうと、スマホやPCで見たり聞いたりする限りすべて同じで、還元すると0と1の組み合わせで表現されている。
"ゼロとイチ"だから送れる
インターネットがここまで発展した要因のひとつとして、全てのデータが0と1で表せることがとても大きい。なぜなら、0と1の二つの記号を送るだけなら比較的誰でも簡単に、そして安く実現することができるからだ。
例えば100年以上前にそれを実現させたものに電信がある。電信で用いられたモールス信号はまさにこの0と1と全く同じ発想で、"ツー"と"トン"という二つの音だけで人間同士がコミュニケーションを取ることを可能にした。
電信の仕組みは電気が入っている間はツーという音が流れ、電気が切れるとトンという音がするというもので、その組み合わせに意味を持たせ会話が実現している。電線さえ通してしまえば、あとは電気があれば誰でも簡単に出来るため、100年も前にアメリカ大陸の端と端でのコミュニケーションが可能となった。
インターネットはゼロとイチを送る
インターネットは要するに電信の超強化版だと理解してもらえば、だいたい間違いない(ちょっと乱暴すぎるか...)。もう少し丁寧に言うと「0と1をできる限り高速で目的地に届けるために作られたケーブル(物理的な線)の集まり」ということになる。
でもゼロとイチをそのまま受け取っても困ってしまう。そこでスマホやPCがそれを解釈して、文章やら画像やら、僕らに分かる形に変換してくれる。これがインターネットの全体像である。
ただもちろん現代のインターネットは電気を使ってはいない。フィジカルな部分は光ファイバーという言葉の通り光の波長を使って(光ファイバーではない区間もある)、無線は電波を使ってメッセージが届く。でも送っているデータは全て0と1という2つの記号で、原理は電信と変わらない。
最後にもう一度冒頭の三行まとめをここに。
インターネットはケーブル(物理的な線)の集まり
データは全て0と1の組み合わせからできている
インターネットは0と1をできる限り速く遠くへ送り届ける
どうだろう。少しでもインターネットが分かった、もしくは興味が湧いた人がいたらとても嬉しい。また気が向いたらインターネットの仕組みについて書いて見ようと思っている。
おまけ
インターネットに関するおすすめ参考文献
・ネットワークはなぜつながるのか 第2版 知っておきたいTCP/IP、LAN、光ファイバの基礎知識
・インターネットのカタチ-もろさが織り成す粘り強い世界-
・マスタリングTCP/IP―入門編―(第6版)