3,000単語を2ヶ月で覚え切った話
僕自身は別段記憶力がよい方ではないと思う。
ましてや一度見たことや聞いたことを瞬時に記憶できる類の能力は全くない。どちらかというともう少し記憶力があればなぁと、指をくわえて勉強ができる人を眺めている側だった。
だからこの話は、何かを効率的に覚えたい人にとって、割と参考になるエピソードなのではと思う。(淡い期待かもしれない…)
今から遡ること十数年前のこと。大学受験を控えた高3の春に、僕は多くの高校生が大体そうであるように、春の模試の結果に頭を抱えていた。特に英語がひどく、偏差値が40に届くか届かないレベルだった。
これではとても大学になんていけない。
そんな焦燥感と危機感に襲われたことによって、自分の中で大きくマインドセットが切り替わった。これまでの、自分は「やればできる優等生」であるという過信に過信を塗り重ねたような自己認識を改め、「自分は勉強ができない劣等生」であると素直に認めることにした。
自己認識のドラスティックな変化に伴って、これまでの勉強方法も大きく改めざる得なくなった。だって自分はもうなんちゃって優等生ではないのだ。であれば、優等生的な勉強方法ではとても間に合わない。(今思うとそう割り切れた自分は偉いなぁと、その部分は褒めてあげたい。)
その内の一つが単語の暗記である。これまでは1日10単語づつ覚えて積み重ねるという平凡極まりない、しかし自分の周りの多くの優等生がやっていた勉強方法を取り入れていた。
でも、もう自分は優等生ではないのだ。彼らと同じ方法では自分には到底暗記なぞできようがない。そこで1日10単語覚えることを諦めた。そうではなく3日かけて30単語覚える、という方法を取ることにした。
当時の考え方としては非常にシンプルで「優等生が1日で覚えられるのであれば自分には3日必要だ」といったものだったと思う。しかし、この暗記方法が物凄い成果を生み出すことになる。
やり方はとてもシンプルで、まず初日に30単語を眺めたり書いたりしながら覚える。そして次の日にどれくらい覚えているか自己テストを行い、覚えていないもしくはやや記憶が曖昧な単語を復習する。また次の日も同じく自己テストを行い覚えていない単語を復習する。
たったこれだけ。しかし、1週間語にこの30単語をどれくらい覚えているかテストすると、9割ぐらいは忘れずに覚えている。1日10語覚えるやり方だと半分以上は忘れてしまっていたので、この成果には自分でも驚いた。しかし驚きはこれだけにとどまらない。
30単語で味をしめた僕はこの単語数を大幅に増やしてみることにした。手始めにまず100単語、続いて150単語、さらに増やして200単語。驚くことにこれだけ覚える単語数を増やしても、ちゃんと3日で覚えることができたのだ。
驚きはさらに続く。200単語も復習しようと思うと、それなりの時間がかかりそうなものである。しかしこの学習方法であれば、大体10分〜20分程度ざっと単語を眺めながら復習するだけで覚えることができたのだ。
つまり、1回あたりの勉強時間と記憶はあまり関係がなく、どちらかと言えば一定の時間が経った後に思い出すことが重要だと言える。
200単語を超えるとさすがに厳しくなったものの、3日で200も覚えることができれば御の字である。これはいけるとこの勉強方法を繰り返し、最終的にはタイトルの通り3,000語程度載った1冊の単語集を、2ヶ月程度で丸々覚えきってしまった。
結果として夏の模試ではなんと英語の偏差値が20もアップし、にっこりニコニコ大学受験を乗り切ることができた。
当時は知らなかったこの学習方法は専門用語で「間隔反復学習」という。人間の記憶は繰り返すことによって強化される。逆に言えば繰り返されない情報を忘れてしまう。この特性を活かして、上手に繰り返すとそれなりの情報量を効率的に覚えることができてしまう。
間隔反復学習に関してはこちらの記事で詳細にまとめているので、興味がある人はぜひ。
記憶力が悪いと悩んでいる人はぜひこの繰り返し勉強法を試してみて欲しい。1回の勉強時間は10分で構わない。ただその10分の内容を絶対に後日思い出すようにして欲しい。それを何回か繰り返すだけで、飛躍的に記憶力が伸びる。しかもこれは過去の僕が実証済みだ。
ただ、このエピソードは高校生という脳が若く記憶力が光り輝いている時だったことも影響はしている。だから脳の劣化が始まっている今の僕が2ヶ月で3,000語覚えきれるかと言うとやや怪しい。
それでも、というかだからこそ、今の僕にはこの繰り返し勉強法の重要性が増していると思う。だって高校生の自分が1回で覚えられなかったことを、今の自分が1回で覚えられるとは決して思わないから。
これからもコツコツと繰り返す、そんな繰り返しを愛し続けたいと思っている。