ファイナンスをめぐる冒険①
5年後の100万円と今の100万円だったら今の受け取れる方がどちらかといえば嬉しい。でも5年後の100万円と今の80万円だったらどうだろう。明日の生活にすら困っているとか、今どうしても欲しいものがあるとかそういうことじゃなければ、5年後の100万円も悪くはない。だって20万円も増えたらそれだけでMacBookProが買えるんだから。(今僕はMacBookProが欲しくて仕方がない)
なんでこんな話を始めたかといえば、それは今回はこの5年後の100万円と今の80万円が同じ価値だと真顔で言えてしまう考え方「ファイナンス」をめぐるお話だから。「価値が同じだって!?いやどう考えたって5年後の100万円の方が価値は高いじゃないか!だってMacBookPro一台分の差があるんだよ??」と思った誰かがこれを読んでふーむと感じてくれたら嬉しい。(さらにいえば誰か僕にMacBookProを買ってくれたらもっと嬉しい。小躍りする。)
会社にとってのお金
すごくシンプルに会社を表現すると「100万円を100万円以上にする組織」となる(要するに黒字)。だからこそ銀行は100万円を貸すし、投資家は100万円を投資する。「貸す代わりに100万円以上になった分を僕らにも分けてね。すき!」というわけだ。
逆に100万円を90万円にしてしまう組織だと当たり前だけれど誰もお金を貸してくれなくなる(要するに赤字)。そして最終的に潰れてしまう。銀行や投資家からすれば、「僕らに何も分けてくれない。むしろ減った。きらい。」といった感じ。
つまり会社はどうやって今の100万円を100万円以上にするかを必死になって考える組織だとも言える。誰も大和田常務に土下座させる人生を歩みたくはないのだ。(半沢の新シーズンが決まって嬉しい)
さて、ではここで会社から見た場合の今の100万円と5年後の100万円を考えてみる。どちらも同じ100万円であることに違いはない。ただここまで書いてきた流れからわかるとは思うけれど、この場合会社からみると今の100万円の方が価値が高くなる。そしてその理由は会社が今の100万円を将来100万円以上にする組織だからである。(トートロジーですね...)
頭にはてなが浮かんだかもしれない。とてもわかる。でもとても単純な話なので少し聞いて欲しい。
会社にとって今目の前の100万円は5年後に100万円以上になっていなければならない。そうじゃないとつぶれてしまう。ただもちろんその額は一定ではない。120万円かもしれないし300万円かもしれない。でも少なくとも100万円よりは多くなっている。だから会社にとっては5年後の100万円より今の100万円の方が価値が高いと会社は考える。(ややゴリ押し感がある説明になってしまったような...)
これが会社にとってのお金の見え方である。
冒頭の今の80万円と5年後の100万円の価値が同じという話の意味ももうなんとなく分かってもらえたと思う。つまり会社にとって今目の前の80万円は5年後には100万円になっていなければならない、ということ。
ファイナンスは将来の予測ではない
ここまででファイナンスの最も基本的な考え方をゆるく、ふわっと説明してきた(ちなみに専門用語では「金銭の時間的価値」という)。 僕らが普通お金を考える時は今の価値にフォーカスするけれど、会社の場合は「時間軸」が重視される。そしてこのお金の価値を時間軸で測る考え方がファイナンスなのだ。
でもここで一つ疑問が出てくる。「一体誰が今の100万円が将来いくらになると正確に予測できるだろうか」と。だって将来いくらになるのか予測できなければ、現在の価値も導き出すことができないことになり、それではそもそもお金の価値を時間軸で考えるというファイナンスは成立しない。
ただがっかりさせるようだけれどもファイナンスを用いても正確な予測はできない。というかしない。そもそも5年後にその投資がいくらのリターンを出すかなんて結局のところ誰にもわからない。(分かったら億万長者だ)
ファイナンスの存在意義
じゃあなんのためにファイナンスが存在しているのかというと「どうして会社がその事業に投資するのかを説明するため」である。基本的に多くの会社は銀行や投資家からお金を借りて事業を行うけれど、彼らにどうしてその事業にそれだけのお金を使うのか説明しないことにはお金が集まらない。
だって仮にあなたが投資家だったとして、それなりの金額を投資した会社の事業がすべて「あずふぃーりんぐ。てへぺろ。」状態だったら流石に嫌だし、そもそもそんな会社に正常な人間は投資しない。だから普通の会社はファイナンスを用いてその投資の妥当性を「説明」する。
具体的にどうやって説明するのか簡単な事例はこんな感じ
5年後に1億円のリターンが出ると予測される事業があったとして、そのリターンを出すために必要な投資が全体で9000万円だったとする。単純に引き算をすれば1000万円の利益となり、そんなに悪くない話のように聞こえる。でもその1億円をファイナンスを用いて現在の価値に直し計算すると実は8800万円で、投資額よりも低くなってしまっていた。結果として会社はその事業への投資を取りやめた。
上記の例ではリターンが投資額に見合わないことが誰の目にも明らかになっている。銀行や投資家はからお金を借りるためにはこの誰の目にも明らかである状態を作ってことがとても重要であり、だからこそファイナンスは企業においてとても重視される。
今回のまとめ
お金という共通のものを見ているようで、僕ら個人と会社ではお金の見え方は大きく違っている。僕ら個人にとっては100万円はいつでも100万円だけれど、会社からみるといつの100万円なのかでその価値が大きく変わってくる。
それは会社が今の100万円を将来100万円以上にする組織だからであり、また100万円の出し手にとっては自分たちが出した100万円が将来いくらになるのかが非常に重要になる。でも将来どうなるかなんて神様でもなければ正確には分からない。
しかし会社において「あずふぃーりんぐ。てへぺろ。」は許されるわけもなく、何かしらの「根拠」が必要になってくる。その根拠を全ての人がとりあえず納得する形で示すのが「ファイナンス」である。
実にめんどくさい。でも会社という形態を選ぶとこの考え方からは逃れられない。それは例えソフトバンクの孫さんであっても基本的には変わらない(関係ないけれど孫さんが今回の暴落でいくらの損を出したのか考えるだけで恐ろしい)。
ちなみにファイナンスを学んでいくと最終的には全ての投資の価値を算出できるような気分になる。もちろんそれは例えば個人の買い物にだって当てはめて考えることができる。どうして自分がその服を買う=投資するのかを考えることが理論的にはできなくはない。でも個人的にそれはやめた方が良いと思う。だって個人の幸せの価値はどうやっても測ることができないから。
さて次回はこのファイナンスがどうやって投資の妥当性を判断するのかを少し具体的に書いてみようと思っている。それでは。
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