野良猫から家猫への道②

からの続き

TNRとは

もう一つの方法、TNRとは「Trap(トラップ)」「Neuter(ニューター)」「Return(リターン)」の略で、捕獲して、不妊手術をし、元の場所に戻す、という活動である。この際、不妊手術をしたということが一目でわかるように片耳の先を少しカットする。これが所謂、桜の花びらのようで「さくら耳」「さくら猫」と呼ばれる。このさくら耳、まだまだ認知度が足りないようで、当店に在籍しているさくら耳の子を見て「誰かに齧られたの?」と言う方がかなり多い。齧られていたら、そんな綺麗に三角カットにならないだろう。

これがさくら耳

手術を終え「元の場所に戻したら意味ないじゃん」と思われるかもしれないが、例えばその子が人馴れを全くしていなかったり、猫エイズや猫白血病のキャリアだった場合、そう簡単に里親は見つからないだろう。それでも「でも・・・」と思う人はご自身で保護をしてみると良い。キャパシティというものがわかるだろう。猫を保護をして養っていくには当然ながら数に限りがある。場所もお金も無限ではない。里子に行けない子達を保護したままではその分の場所が開かず、他の子を入れることもできない。
その現場にいる猫たちを100%TNRしておけば、過酷な野良生活を強いられる子が新たに生まれることもなく、1世代で終わらせることができる。外の過酷な環境で生活しなければいけない子がそれ以上増えない。長い目で見て、将来的に野良猫を0にするという方法がTNRというわけだ。
中には「不妊にするなんて可哀想!」「人間のエゴだ!」という方もいるが、手術をすることで、病気のリスクを減らしたり、発情のストレスが無くなる。そもそも野良猫が増えたのは人間のせいなので、そのケツは拭かなければならないだろう。

これは補足だが、色々な考えがあると思うが「TNRをした=地域猫」ではないと思う。「地域猫」とは不妊手術をした上で、その猫たちが生きているうちは地域の方が当番制なんかで確実に世話をしてくれるというものだ。これには当然、その地域の方々の理解と協力が必要で、現実問題として、皆が皆、猫好きではないだろうし、嫌いなものにお金を出すことを拒否する方もいるだろうから、ちゃんとした地域猫というのはなかなか難しいと私は思う。

そして当然だが、このTNRにも手術代はかかる。地域によっては市から助成金が出たり、どうぶつ基金のチケットを使うことは出来るが、基本的に割り引かれる程度で足は出る。それが一匹、二匹の話ではなく、TNRをするならその地域全頭をしなければ意味はない。そうするとやはり今まで活動をしたことのない方には難しく感じるだろう。その場合は自分も動くこと、手術代などを出すことを前提として、アドバイスを求めれば、相談に乗ってくれる団体さんも多いだろう。


というわけで、ここまで読んでいただけた方には、野良猫をなんとかしようと思うと手間もお金もかかることはご理解いただけたかと思う。
特にこの時期は生まれたての子猫を見つける方もいるだろうが、そんな小さな子は母猫が近くにいる可能性が高い。すぐに手を出さずに、母猫がいないか様子を見てから保護していただきたい。ミルクを飲んでいる頃の子猫は、人間の子供と同じように夜中でも2、3時間置きにミルクを飲ませて、トイレもさせて・・・と保護するととても大変だ。それを「拾っちゃったので面倒見てください〜」と保護活動者に丸投げするのは簡単だが、少し考えてほしい。例えば、私の知っている保護活動者さんは家に70匹以上保護しており、朝晩のお世話に3時間ずつ時間がかかるそうだ。しかもフルにお仕事もされている・・・そんな方に2、3時間置きの授乳が必要な子猫を押し付ける・・・鬼畜の所業か・・・?そんなことをしていたら保護活動者さんが絶滅する。

だからこそ、丸投げはするな、と懇々と言い続けているのである。

前回も書いたが、何事も他人にお願いしたら対価は発生する。これ、常識問題としてテストに出るから覚えておきましょう。

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