野良猫から家猫への道①

あなたは野良猫を見つけた時、どうするだろうか?
「あ、猫だ〜」と思うくらいで何もしない方が大多数だろう。

ではそれが子猫や、めちゃくちゃ人馴れしていて甘えてくる子だったらどうだろう?
環境などから「自分にはどうにもできないな」と言う方もいるだろうが「どうにかしたい・・・!」と思う人も多いのでは無いだろうか。

ここで「ご飯だけあげる」は良くない選択肢だ。ご飯も勿論大事ではある。だが、その一回きりでは付け焼き刃だし、ご飯をあげるだけあげて「可愛い」だけでは無責任だろう。継続して、ご飯をあげるならその子は「あなたがお世話をしている子」であなたに責任がある。実際に野良猫が起こしたご近所トラブルで定期的にご飯をあげていた人を飼い主と判断した判例もある。

ここで野良猫に対してできる選択肢としては「保護」「TNR」である。

捕獲

保護とは、簡単に言えば、室内に入れてお世話をするということだ。こうして文字にすると簡単だが、実際は、まず最初の「捕獲」の時点で苦労をする。
野良でも、生後1ヶ月未満の子猫だったり、弱りきっている子や、めちゃくちゃ人に慣れていて何されてもOK〜という子ならまだ簡単に捕まるだろうが、大半の野良はそうではない。
餌をもらう為に、ある程度は近寄るが一定の距離は必ず保つ。その為、捕獲器を使うわけだが、捕獲器もただ置けば良いわけではない。警戒心の強い子であれば、中に餌を置いてもなかなか入らないし、入っても仕掛けを上手く避けたりすることも多々ある。更に、例えば子猫を育てている母猫を捕獲したい場合、更に難易度は上がり、まずは子猫がどこにいるのかを突き止めないと、母猫だけ捕獲してしまうと子猫は死んでしまう。子猫が連れ歩くくらいに大きい場合、今度は入り口が落ちるタイプの捕獲器では子猫が挟まって怪我をしたり死んでしまうので別の方法を考える。というように一言で捕獲と言っても、なかなかに大変なのだ。
そうして苦労して苦労してようやく捕獲すると、次は病院だ。この病院というのも「野良は診ない」という病院もある。普段から保護活動をしている方なら大体行く病院は決まっているが、そうでない方はまず電話をしてから受診をすることをお勧めする。

初期医療


さて病院で何をするかというと、まずは「駆虫」である。室内に入れるので、ノミやダニを落としてからでないと人間にも被害が出る。特に最近ではマダニによる感染症での死亡もよくニュースになっているので注意が必要なのはわかるだろう。
次に「検便」。外で生活をしていた子は何を食べているかわからない。かなりな確率で寄生虫がいる。これが排出された時の気持ち悪さと言ったら・・・前述した駆虫の際に薬によっては効く奴もいるが、効かない奴もいる為、検便をする。ただし検便も100%発見できるわけではないので、保護して数ヶ月経ってから発見される場合も多々ある。実際、4、5回検便をしたのに後から出たという子もいた・・・この「検便」と「駆虫」はまず漏れなく保護した全頭にする。
ここからは月齢にもよるのだが「血液検査」「ワクチン」「不妊手術」だ。
まず「血液検査」は基本的に「猫白血病(FeLV)」と「猫エイズ(FIV)」を調べる。感染経路は、おもに感染猫とのケンカによる咬傷感染だが、この他、感染猫とのグルーミングや食器の共有などによって唾液を介して感染したり、母子感染してしまう。その為、2頭以上の多頭飼育であれば、この検査はしておいた方が良いだろう。「キャリアだからって簡単に感染らないんだからノンキャリアの子と一緒に暮らしてもいい!」と主張される方も見受けるが、感染の可能性が0ではない以上、一緒にすべきではないと私は思う。
「ワクチン」は成猫なら1回、子猫の場合は大体生後2ヶ月ほどで1回目、生後3ヶ月過ぎで2回目を打ち、その後、毎年一回打ち続けていく。このワクチン、他に保護猫がいる多頭の家では4種以上をお勧めする。ワクチンにはいくつか種類があり、一番安価な3種のワクチンだと「猫ウイルス性鼻器官支炎」「猫カリシウイルス感染症」「猫汎白血球減少症」の3種が入っている。ではなぜ4種以上がお勧めなのかというと4種にはこの3種に上記した「猫白血病ウイルス感染症」が加わる。保護した野良猫は「FIV」や「FeLV」のキャリアの場合がある。その感染リスクを減らす為だ。私がワクチンを打ちに連れていく子は必ず4種以上を打っている。
次に「不妊手術」。生後半年以降が目安だが、個体によって時期はずれたりする。「動物の愛護及び管理に関する法律」では、「第37条 犬又はねこの所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置をするように努めなければならない。」と明記されている。要は、法律でも「多頭崩壊しないよう不妊手術しなさいよ」と決めているわけだ。私や私の周りの保護活動者は手術のできない月齢で譲渡をしても、不妊手術を必ずするという条件のもと、譲渡をしている。
あとは、野良からの保護はこれだけでは済まず、風邪をひいている子や皮膚病など、何らかの病気を持っている子が殆どなので、その治療もする。

さて、ここまでやってようやく譲渡までの初期医療が済むわけだが、当然これには医療費がかかる。ここらの相場で言えば、手術までで4万〜5万円ほどだろうか。それプラス風邪などの治療費、あと受診には初診料や、再診料もかかったりもする。更に言えば、こちらも当然だが、ご飯代や、トイレ用品代もある。そしてそれらは国とかがお金が出してくれたりするわけではない。こうした費用の実費や一部を請求することを告げると「ボランティアでしょ!?」と言われることも保護活動者さんには多いが、ボランティアは自主的にやるもので強制されることではないし、どこからの立場で言っているかわからないが、自分が赤の他人にお金も手間もかかることをお願いしているという立場ということを忘れずに。
ここで「依頼者からも里親からも費用取るの?」と思われる方もいそうだが、保健所からの引き出しや、依頼者がいない場合もある為、費用を100%回収できるわけではない。また里親さんから譲渡費用をいただくのは、その子を一から飼っていたらかかっているお金だし、虐待目的の人間を減らすという目的もある。

協力的な病院がある場合、大〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜変有難いことにお安くしてもらえたりはする場合もあるが、それは飽くまでも獣医さんのご厚意なわけで、こちらから強制するものではない。たまにSNSで見かける「保護猫なんだから無料にするのが当然だ!」というのは論外だ。
当たり前だが、何事も他人にお願いしたら対価は発生する。

ちなみに、人慣れがイマイチな子は、この医療にかけながら、並行して人慣れ修行もしている。保護には手間もお金もかかるのだ。


に続く

ここまでやり、ようやく安心して過ごせるようになる



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