![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/114059396/rectangle_large_type_2_c6a3dd967772590d69747a450110e48c.png?width=1200)
当事者のデザイナーから見た、ブランドリニューアル
はじめまして!
希望あふれる優しいデジタル社会を、未来に残したい千葉です。
「すべての経済活動を、デジタル化する。」をミッションに掲げるスタートアップ、LayerXでBrand Experience(BX)デザイナーとして働いています。
LayerXは、2023年8月1日に5周年を迎えました。と同時に、コーポレートブランドのリニューアルを行い、アップデートしたロゴとミッション副文を公開しました。
わたしはBXデザイナーとして、このプロジェクトに参画しました。正直、目が回るような日々だったのですが(笑)少し落ち着いた今、改めて振り返ってみるととても多くの学びを得られました。
これからブランドリニューアルを主導する誰か、ブランドリニューアルで実際に手を動かす誰か、結局ブランドリニューアルって何なのよ? と思っている誰かにとって、ちいさなヒントになるといいなと思っています!
また、本noteの最後に、ブランドリニューアルに関連したオフラインイベント開催のお知らせがあるのでぜひ見てみてください!🤝(8/30@渋谷)
1. アウトプット
まずはこのプロジェクトによって生まれたアウトプットを紹介させてください!
\ Update LayerX Brand! /
— LayerX (@LayerXcom) August 1, 2023
希望あふれる優しいデジタル社会を、
未来に残していくために。
ミッション副文の改訂に合わせ、
LayerXのコーポレートロゴをアップデートしました。 pic.twitter.com/Xm3eN3LXFn
8月1日時点では、コーポレートロゴのアップデート、ミッション副文のアップデート、およびロゴモーションの公開をしています。制作にあたり、ブランドDNAの策定とコーポレート人格の整理も行いました。
![](https://assets.st-note.com/img/1692721679057-kadR6aa4R7.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1692721688046-6HGbMml2Y2.png?width=1200)
2. プロジェクト情報
実施背景
なぜプロジェクトが立ち上がり、ブランドがリニューアルされたのか? 詳しくはプレスリリースにも記載がありますが、
事業の拡大、メンバーの増加に伴い、会社の人格や自分たちのありたい姿、目指す未来を再定義/明文化する必要が生まれた
この整理が進む中で、現在のVI/CI表現とのズレが明確に認識され、リニューアルに至った
という流れで今回の着地となりました。整理をしていく中で、「今のままのVI/CIで問題ない」となる可能性もありました。このプロジェクトが立ち上がった時点で、もちろん小さな違和感や表面化していない課題があったという前提はありますが、メンバー間で「変えること」を目的にしないという意識は持っていました。
プロジェクトメンバー
LayerX社内
オーナー デザインマネージャー 野崎
管掌役員 石黒
BXデザイナー 千葉
PR 山田
クリエイティブパートナー SHIFTBRAIN様、EDP graphic works様
ブランド整理、ロゴアップデート、ロゴモーション、その他クリエイティブ周りの制作協力
ブランディングパートナー PARK様
ブランド整理、ミッション副文のアップデート、その他ワーディング周りの策定協力
プロジェクト発足当初、LayerXのデザイナーは6名しかおらず、BXデザイナーはわたし一名でしたので、制作に関してパートナーさんのお力を借りるのはマストでした。アサインされた社内メンバーはミニマムな人数で、それぞれ落ちるボールを全員で拾い続ける数ヶ月が続きました(最終的に差し替えの作業を行う際は、デザインチーム全メンバー、HR/PR/CTO室の力を全力で借りました)。
![](https://assets.st-note.com/img/1692721668237-lmHlOA6nFR.png?width=1200)
スケジュール
12月〜:プロジェクト発足
3月〜:パートナー選定
4月〜:予算、スケジュール確定。board、社内メンバーヒアリング
5月〜:提案、擦り合わせ
7月6日:ロゴアップデートFIX
7月18日:副文アップデートFIX、怒涛の公開準備開始
8月1日:公開
かなり厳しいスケジュールだったかと思いますが、パートナーのみなさまにご尽力いただき公開に至りました。本当にありがとうございました…!
3. わたし個人の動き方と心構え
スケジュール感、影響範囲の広さ、経営メンバーとの意思疎通の量などプロジェクトの進め方で意識すべきポイントが多く、自分なりの試行錯誤を繰り返して挑みました。
進行にあたり、パートナーさん同士が事前にコミュニケーションをとった上で提案に進んでくださったのは、本当に助かりました。
書き出してみるとどれも当たり前なことなのですが、
自分なりのスタンスを明示し、Aで行きたいがどうか?という問いかけにする。自分の意見が邪魔になりそうな時は、バイアスを排除するために黙る
自分が今、何の情報を、どれくらい出すことを求められているか? 全体の時間効率を意識して話す
とにかくスケジュール枠を早めに抑える(特に経営メンバー、公開周りなど)
誰がやっても同じことは、基本的に全部やる(最もコストが低い)
このあたりは、喫緊の意思決定が多い中で(時に諦めそうになりながらも😂)繰り返し意識して動いていました。
クリエイティブ周りの進行では、採用や登壇でスケジュールが埋まりがちなデザインマネージャー 野崎さんとペアを組んでの動きだったので、4. の動きで野崎さんの時間をいかに空けるかも常に意識していました。
2.の例を挙げると、わたしは野崎さんより早くLayerXに入っているので、これまでのカルチャーの微妙なニュアンスや変遷、意思決定の進め方、経営メンバーの好みなどは野崎さんよりも多くの情報を持っている(はず)です。
パートナーの方からフィードバックを求められる際、野崎さんにはクリエイティブのコメントをもらい、わたしはその部分は割愛してLayerXらしさのニュアンスを伝えることに尽力していました(もちろんデザイン面でも、強い違和感がある場合は伝えていました!)。
裏目標として、とても貴重な機会なので、両代表に戦略的にデザインを組み立てる手法や奥深さ/面白さを知ってもらう・体験してもらうという意識も持っていました。
時間効率だけでみるとよくはないのですが、初回の提案のみは長めの時間を抑え、パートナーさんから直接説明を受けてもらうという試みを、意図を説明した上で実施しました。
素晴らしい提案で、お二人ともとても楽しそうにされており、チャットがとても盛り上がったのを覚えています。
4. フィードバックと変遷
5月からの提案/擦り合わせの中で、具体的にどんな提案をいただき、どんなフィードバックを行い、それがどう反映されたのかを一部お伝えします。
SHIFTBRAIN様/PARK様の提案は、全経営メンバーへのヒアリング、および2回のメンバーオープンドアを実施いただき、要素を抽出いただく形で進行したので、具体アウトプットの方向性にズレがほとんどありませんでした(ありがとうございます…!)。
2社の推し提案と、ミーティング内で意見を求めていただいた際にLayerXのメンバーが選ぶ提案が一致することがほとんどで、大きく出し直していただく、方向性が真逆であるといった戻りはありませんでした。
擦り合わせのミーティングでは、方向性やゴール、表現したいことは一致しているので、
具体性はどの粒度なのか?
どの時間軸なのか?
今に合わせる?
未来に合わせる?
未来なら、どのあたりの未来? といった戦略面のすり合わせと、
LayerXが思うLayerXっぽさとは?
かたさ、力強さ、柔らかさ、鮮やかさはどれくらいのバランスで配合されている? といった感覚面のすり合わせがメインでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1692712216118-WKIk06ce1q.png?width=1200)
ことばに感じるニュアンスのフィードバック
例えば、ミッション副文のアップデートの途中案なのですが、
![](https://assets.st-note.com/img/1692718521349-McfkgzOdSw.png?width=1200)
LayerXのメンバーは作っていただいた素案をベースに
「あらゆる人が、やりたいことだけに夢中になれる」というのは、個人的に、「ただ遊んでいても、好き勝手していてもOK」というニュアンスが入ってしまわないかという懸念はある
といった「感じ方」のフィードバックをさせていただきました。ニュアンスのネガティブチェックを解消したのち、本当に本当に細かいてにをはや、1文が適切な長さかどうかの最終調整をしていただき、現在の最終verに至りました。
![](https://assets.st-note.com/img/1692721634037-Zo1YRDCerT.png?width=1200)
実際に使っているイメージと、ストーリーにしっくりくるか
今回、SHIFTBRAIN様からのロゴの提案は、DNA→シンボル→タイポグラフィという順で進めていただいたので、先んじてシンボルの方向性の確定を進めました。
シンボルの提案は複数いただけて、その中で
![](https://assets.st-note.com/img/1692718587413-48vQB5AL06.png?width=1200)
(デザイナーとして)実際に使っているイメージが湧くか、その発展性
(社内メンバーとして)LayerXのストーリーに合うか
のフィードバックをさせていただき、1案目、2案目の最終2案をブラッシュアップいただく形になりました。
シンボル→タイポグラフィ→細かい字形へのフィードバック
その後、タイポグラフィの大枠を提案いただき、経営メンバー含め所管をヒアリング。字形を確定していきました。
![](https://assets.st-note.com/img/1692747917006-V1oUvBcD4R.png?width=1200)
LayerX側のクリエイティブ担当者が2名ともデザイナーだったため、Zoomで画面を映しながら、同期的に細かいところまで調整いただきました。(aとyの距離、eの内側のアール、rの切れ込みの深度など)
![](https://assets.st-note.com/img/1692721588921-TrJ7XKVvNe.png?width=1200)
5. 想像と実際のギャップ
「こういうもの」という思い込み
LayerXに転職する以前は大きな規模の会社にいたということもあり、2度ほど大きなブランドリニューアルのタイミングがあったのですが(※主導は他のチーム)いずれも水面下で動いており、決定したものが降りてくるというプロセスだったので「ブランドリニューアルはそういうものだ」という思い込みが強くありました。
すぐに具体的なKPIなどの成果が見えづらい、効果観測がしづらいという点から、ブランドリニューアルは経営の意思決定から大きく影響を受けるため、決定 → 浸透という流れがスムーズだろうという考えがありました。
ブランドに対して主体的に思いを持っている/持てているメンバーがたくさんいることを信じ、もっと早めに巻き込んでいき意見をもらうようなプロセスはできたのではないかという反省があります。
![](https://assets.st-note.com/img/1692721717440-t7fGochj8l.png?width=1200)
最後は意思の力で決めた
終盤、ロゴクリエイティブは2案に絞られたのですが、その採択において「どちらが良いと思うか」を社内の全メンバーに募ったところ、なんとほぼ半々に割れたという結果になりました。
この場合に、51票と49票で一つ目の案、といった決め方をするのではなく、「プロジェクトメンバー、および経営メンバーの良いという感覚が、極端に偏っているものではない」証左であるとして、最後は福島さん・松本さん両名の意思決定でエイヤと決め、現在の案に決定しました 👏
“今回のリニューアルにおいて大切にしたことは、
・LayerXは複数の事業を立ち上げ続けること
・それをテクノロジーの力で加速させること
これら二つが「好き」だという価値観です。
上記を宣言することに加えて「LayerX」という社名に込めた「社会にX番目のレイヤーをどんどん作っていこう」という思いを表している(と感じた)アウトプットを、最終的にはほぼ直感で決めました。”
大きな意思決定ほど、ネガティブチェックを行った上で責任を持って決める。「好みが出やすい」と思われがちなデザイン分野において「(理由はもちろんあるが)直感で決める」という結論に良い意味でギャップを感じました。
6. 評価と再現性
社内メンバーのシェア協力もあり、局所的にTwitter(現X)のトレンドに載るなど一定の露出が見込めました。お客さまや、LayerXを知ってくれている方も反応やコメントをくださり、とてもありがたかったです!
![](https://assets.st-note.com/img/1692721851758-KbzHTmFJn1.png?width=1200)
LayerXの旧カラーにわたし自身思い入れがあったのですが、客観的に見て、今のLayerXにマッチしているデザイン表現になったと感じています。
ここでは、個人的な動きではなく、プロジェクト全体のGOOD/MOTTOを書いていきます。
GOOD
社内のプロジェクトメンバーは少数で動いたこと
2名のデザイナーでゆるい担当は決めていたが(野崎:クリエイティブ判断、千葉:オペレーション)落ちたボールは互いに拾いあったこと
すり合わせの時間が最小で終えられた
パートナーさんとワンチームになる意識、機会をつくる
最初に懇親会を行い、言いづらいことも言ってもらえる関係に。逆にLayerX側からも、正直なフィードバックができるように
懇親会前は、どうしても対クライアントという丁寧な雰囲気があった
LayerX側の参加者がテーブルを回る形に。LayerX側がこのプロジェクトにどんな期待をしているか、どんな関係で進めたいかを正直にお伝えした
差し替えはデザインチーム全員の手を借りる
対象のNotionリスト管理と、当日の午前に一気にやった
事前の協力要請や、比率が同じ共通素材を先に作る動き
数を変えることを優先、ひとつひとつのクオリティは適切に妥協したこと
MOTTO
限られた時間でベストを尽くした…!💪 と言えるのですが、前述の通り課題・ギャップも多くあり「強くてニューゲームするとしたら?」「時間を戻すとしたら?」を考えてみました。
インナーコミュニケーションをもっと小さな単位で、楽しく行いたい
全社定例など、大きな共有を2回、3回 → 細かい共有を20回、のような露出回数を意識するトライをしたい
スケジュール上の制約はあったが、どうしても「急に決まったと感じた」「もっと早く共有が欲しかった(するべきだったけどできなかった)」メンバーがいた
オフィス環境/オフラインを活用して、プロジェクトへの参加を遊びにできた
ブランドに対する気持ちを付箋で貼ってもらうなど。お祭りムードを作れた
もう少し、無理のないスケジュールにできた…はず!
パートナーの皆さんにかなり頑張っていただいた
社内プロジェクトメンバーとしても、正直に少なくとも疲弊した
確認タイミングの調整、非同期確認(slack)と同期確認(zoom等)の切り替えと最適化はもっとできた
7. これから
ブランドはみんなで作る
今回、5周年に合わせてロゴと副文のアップデートを行いましたが、当然ここで終わりではなく、順次あたらしいブランドを浸透させるコミュニケーションをひとつずつ作っていきます。
デザイナーとしてわかりやすくバリューが出せる分野は、グラフィック表現、クリエイティブの部分なのですが、実際にブランドを伝播させるのは、メンバーひとりひとりの意思がどれだけデザイン/ブランドに向いているかだなと改めて感じています。
LayerXには「全員○○」というカルチャーがあるのですが、ここに全員デザイン、ひいては全員ブランドが載るようにと、あるごとにslackスタンプを押しています💮
弊社代表の福島さんのnoteから、お気に入りの一文を引用させてください!
“リニューアルは「点」ではない
ブランド=「LayerXとしてどうありたいか」である以上、新しいロゴやコーポレートカラー、(ミッションの)副文を定めて終わりではありません。これらはあくまでも骨組みにすぎず、そこに肉付けするのは、私たち一人一人の日々の行動です。
採用活動で「LayerXってどんな会社ですか?」に対してどう答えるか 営業活動で「LayerXが目指す世界」を自分の言葉で語れるか プロダクトを作るとき「LayerXのブランドはこうである」という意識の下、一貫した体験を作れるかetc このような日々の小さな行動・言葉によって、ブランドは蓄積され、唯一無二の価値に変わっていきます。”
いちBXデザイナーとして
BXデザイナーとしては、ブランドづくりのスタートにようやく立てた気持ちです。地図を描きながら、今後はブランドと一緒に成長していきます。
まずはインナーブランディング戦略を立てねば…!とマネージャーと会話しつつ、目の前のグラフィックや言葉選びひとつひとつに、新ブランドの色をどう載せるかにも頭を悩ませています。
遠くを見すぎて、ブランドが社内メンバーにとって自分ごと化しにくいものになりすぎないように。触れて、使えるブランドにするには身近なアセットから揃えていく。けれども近くを見すぎて、積み重ねの方向やバランスが崩れてしまわないように。地図とコンパスの確認を怠らない。
この二つの反復横跳びしながら、愛を持って長く伴走していきたいと考えています。
.
綺麗に整えてお伝えするより、うまくいかなかったことも、スタイリッシュじゃないところも(笑)なるべくありのままを残すことを意識しました。どれかひとつでも「これを知りたかった!」という情報をお届けできていたらとってもhappyです!
また、8/30(水)にLayerXのブランドまわりを丸っと集めたオフラインイベント@渋谷を開催します👏 LayerXから4名のデザイナーが参加しますので、「noteのこの工程、もっと細かいとこ聞きたいよ!」「サービスブランドの方はどうしてるの?」など、ご興味のある方はぜひご参加ください。
座談会多めの会にしています、わいわいゆるりとお話ししましょう〜!
わたし自身はまだまだひよっこもひよっこですが、Brand Experienceの分野が事業に、日本に、未来にポジティブな影響を与えると強く信じています。
指摘、コメント、ディスカッション、DM大歓迎です! お待ちしています。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!🐤🐔