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薬物治療は難しい | うつ病と甲状腺機能低下症を併発した話 #3
こんにちは。9月ですね。夏が終わるのがさみしくて、この前見た入道雲をメインビジュアルにしました。
さて、#2でも書いた通り、私は現在うつ病の薬物治療のみ行っており、甲状腺機能低下症のための薬物治療を中止しています。理由は、甲状腺ホルモン補充薬による「副作用らしきもの」がきつかったからです。
今回は、うつ病・甲状腺機能低下症それぞれの治療と「副作用らしきもの」をめぐる選択、薬物治療の難しさについて書いてみました。
▼前回までの記事をまとめたマガジン
うつ病の治療について
スプレッドシートで振り返る服薬状況
私はうつ病だと診断された6月上旬から今に至るまで、抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬をセットで飲みつづけています。
しかし、同じ種類を同じ量だけ飲んでいるわけではなく、主治医による細やかな体調チェックと、それを受けての薬の変更・増量・減量が繰り返し行われてきました。「抗うつ薬」と一口に言ってもたくさんの種類がありますし、うつ病は個人差が大きい病なので、どうしても調整が必要なのだと思います。
では、実際にどんな薬をどれくらい飲んでいたかというと、文章で書くのが面倒だったので、スプレッドシートにまとめてみました。
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抗うつ薬・睡眠薬は毎晩寝る前に、抗不安薬については、7/22までは毎晩+頓服、7/23以降は頓服のみとなりました。表では、薬の種類の変更 or 薬の増量・減量が行われたタイミングを黄色塗りしています。
前回「6月は不眠がひどかった」と書きましたが、その対策として登場したのが「ミルタザピン」という抗うつ薬です。
眠れる幸せを噛み締めた日
ミルタザピンは「NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)」に分類される抗うつ薬で、眠気や食欲増進といった副作用が認められています。私の場合は、眠気の副作用を逆手に取る形で導入されたのだと思います(イフェクサーがあんまり効いてなさそうだったのも変更理由のひとつです)。
その効果は抜群で、飲みはじめの1週間は効きすぎて昼過ぎまで動けないほどでしたが、数ヶ月ぶりに熟睡できた喜びに比べるとそんなことはどうでもよくて「眠れるって幸せだな〜」としみじみしたのを覚えています。
7/16には睡眠薬が「レンドルミン」に変更され、ミルタザピンとの合わせ技状態に。うつ病は一般的に「急性期」「回復期」「再発予防期」の3段階を経て寛解に向かうとされていますが(参考:すまいるナビゲーター「うつ病とは」)、私も8月上旬頃に回復期に突入し、一時期は8〜10時間まで睡眠時間を増やすことができました。
ただ、台風襲来を機に中途覚醒・早朝覚醒が復活したり、食べること・太ることへの恐怖が出たりと(この話は別途書きたい)、万事順調というわけではありません。
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裏面にも収納できて便利
医療に頼って健やかに暮らしたい
今のお薬ラインナップが合っているのか、身体的な元気を取り戻しつつあるのを実感しています。一方で、精神面はアップダウンが激しく、漠然とした不安や焦燥感に襲われる日も多いです。回復期はしんどいと聞いていたけれど、本当にしんどい。自分自身と深く向き合わなくてはならないし、仕事や遊びといった逃げ場もないのがつらいです。
抗うつ薬や抗不安薬も年単位で服薬する予感がしています。でも、もしそうなったとしても受け入れて、引け目を感じずに暮らしたいと思っています。医療に頼って暮らすことも、ひとつの「健康」の形だと信じたいのです。
もちろん、病院を必要とせず健やかに暮らせるのならそれがベストですが、この数ヶ月間、医療をはじめ周りの人にたくさん助けてもらっているうちに、誰かや何かに頼るのは悪いことではないし、人の「自立性」を損ねるものでもないはず……と考えるようになりました。
元気になったら、私も周りの人に手を差し伸べられる人間になりたいので、今は無理せず治療を進めていきたいです。
甲状腺低下症の治療について
ホルモン補充療法の開始
#2の最後でも書いた通り、橋本病・甲状腺機能低下症の診断を受けたその日から「チラーヂン」という薬を用いたホルモン補充療法が始まりました。
甲状腺機能低下症は、体内の甲状腺ホルモンが不足することでさまざまな症状を引き起こす病気です(詳しくは#1をご覧ください)。一度かかると再び甲状腺ホルモンが増えることはほとんどなく、当事者の多くは生涯にわたり薬剤でホルモンを補っていかねばなりません。
甲状腺の件でお世話になっている内科の主治医A氏からは、「チラーヂンは副作用が少ないお薬です。だからずっと飲みつづけることができます」と事前説明を受けていました。ただ、投薬量を誤ると逆に甲状腺ホルモンが過剰になり動悸などが現れる可能性もあるそうで、まずは最低量の25μgからスタートすることに。
私は10年以上低用量ピルを服用していて、ホルモン剤との付き合い方もなんとなく心得ていましたし、チラーヂンは多少の飲み忘れも大丈夫そうで、むしろピルよりも楽に管理できそうだと感じていました。「一生飲むのか〜」という落ち込みはあれど薬に対する不安はほとんどなく、のちのち副作用らしきものに悩まされることになるとは想像もしていませんでした。
倦怠感、むくみ、謎の痣の出現
最初に「おや?」と感じたのは、チラーヂンを飲み始めて3日目のこと。動悸と妙なそわそわ感があり、動かないと気が済まず、やりたくもない家の掃除を1日中してしまったのです。ですが、「飲みはじめは元気になりすぎちゃう人がいる」と聞いていたのであまり問題視していませんでした(実際、2日ほどでおさまりました)。
次に異変が起きたのは、服用から1週間ほどが経過した7月末。脚全体のむくみと鈍痛、強い倦怠感・眠気が気になるようになりました。
私はもともとむくみにくい体質で、むくみで脚が痛くなることはほとんどありません。心当たりといえば塩分くらいで、「そんなに摂りすぎたかな?」と不思議に思いながら脚のマッサージをするようになりました。
倦怠感・眠気はうつ病由来の可能性も否定できなかったものの、もし甲状腺機能低下症によるものなのであれば、治らないどころか悪化している気がしました。そして、この日以降しばらくの間、夕方近くまで起き上がれない……と悩みつづけることになります。
そこから約1週間後の8月頭には、さらにぎょっとする出来事がありました。朝起きて何気なく脚を見たら、太ももからふくらはぎまで小さな痣がびっしり残っていたのです。見た瞬間に「むくみ解消マッサージの指のあと」だと察して、さすがに変だ!とその日のうちに診察予約を取りました。診察までの間に「チラーヂン 副作用 痣」と何度もGoogle検索しましたが、それらしき情報は出てこず、不安は大きくなるばかりでした。
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ホルモン剤は、抗生剤ではない
診察では写真を見せながら、脚がむくんで痛いこと、マッサージで指の形の痣が残ったこと、貧血のような倦怠感と眠気もあることを相談。しかし、主治医A氏も「なんだろうこれは……?」とピンとこない様子でした。
結局、痣については血液か肝臓あたりに異常が起きている疑いがある。倦怠感や眠気は、もしかするとチラーヂンで補うホルモン量が足りていないのかもしれない……という話になり、原因特定のため血液検査を受けることに。ただ、結果が出るのは病院のお盆休みが明ける10日後となってしまい、かなりやきもきしました。
血液検査の翌日、メンタルクリニックでの診察で主治医B氏にも報告すると「ホルモン剤は風邪のときに飲む抗生剤と違って、飲めば必ず症状が改善されるものではない。ホルモンバランスがかえって崩れることもあるし、もしチラーヂンを飲んでいてつらいなら一旦ストップしてもいいと思う」と提案してもらいます。ここで初めて治療中止の選択肢に気づき、同時に「たしかにつらいし、中止したいかも」と考えるようになりました。
その翌日、一体この症状がどこからきているのか、原因がわからないことにストレスを感じていた私は思い切った行動に出ます。チラーヂンを断薬し、自ら人体実験を始めたのです。断薬して症状が緩和されたのならチラーヂンの副作用らしきものだと言えるし、そうじゃないなら原因は別にあるはず。「副作用かどうかを判断する手っ取り早い方法は、飲むのをやめてみること」というメンクリ主治医B氏の提言を受ける形で、内科への罪悪感を覚えながらも、勝手に服薬をやめてしまいました。
※自己判断での断薬を推奨するわけではありません。疾患ごとの主治医に従って服薬を進めるのが基本ですし、私もそのように理解しています。
治療中止と、主治医同士の対立
結論から言うと、チラーヂン断薬によりむくみ・倦怠感・眠気は如実に軽減されていきました。いまだに原因はわかりませんが、薬によるなんらかの影響説が濃厚です(断言できないので、本記事では副作用「らしきもの」という表現に留めています)。
そういえば、断薬中にふと思い出したことがありました。十数年前、低用量ピルを飲みはじめた最初の1ヶ月間、脚のむくみがひどく夜眠れないほどの激痛があったこと。婦人科医に相談したら「飲みはじめはホルモンバランスが崩れてトラブルが起きるけど、1ヶ月くらいでおさまりますよ」と言われたこと。実際に1ヶ月経ったら嘘みたいにむくみが引いたこと……。今回とあわせて考えると、もしかしたら私は「ホルモン剤の飲みはじめに弱い体質」なのかもしれません。
お盆明け、内科で「血液にも肝臓にも異常はなく全体的に良好、甲状腺の数値も改善傾向にある」という結果を伝えられ、恐れていた「第3の病」は杞憂に終わりました。そして、私からもチラーヂン断薬と症状の改善を報告。主治医A氏は「そうなんですか!?」と驚きながらも、そこまでつらいなら……とチラーヂンの服用中止に同意してくれます。
しかし「橋本病は放置すると悪化していきます。軽々しく『飲むのやめたら?』と言う先生は、僕はどうかと思う。本当に石澤さんを守ろうとしてくれているのかな?」と、メンクリ主治医B氏に対しては不信感を露わにしていました。
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私は「主治医A氏のことは信頼しているし(私が専門の内分泌科ではなく内科に通院しているのも、主治医A氏への信頼があるからです)、心配してくれてありがたいけど、実際に自分を助けてくれたのは主治医B氏のアドバイスだからな……」と複雑な気持ちになりました。あと、断薬を決めたのは私です!すみません!!と内心平謝りでした。
今はうつ病治療を優先していますが、甲状腺治療を蔑ろにしたいわけではありません。ただ、専門分野の異なる医師が、それぞれの視点から異なる意見を持ったとき、専門知識を持たない患者は難しい立場に立たされるのだと身をもって知りました。どちらの医師にどの程度従うべきか、私は単純な「人としての信頼」だけでは決めきれないと感じたので……。
最後は「何かあったらいつでも頼ってくださいね!」と明るく送り出してもらったものの、「医師 vs. 医師」的な想定外の状況にはかなり疲弊しました。病気の併発時や、セカンドオピニオンを受ける際のリスクとも言えるのかもしれません。
薬物治療は心身に大きな変化をもたらしますし、変化はどんなものであれ負担につながります。加えて、人と比べて不安になったり、これでいいのかと悩んでしまったり、うまくいかないことも多かったりと症状以外の大変さもわかってきました。
私は超心配性で、「この薬ってどういう副作用があるんだろう」とすぐ調べてしまうし、心身の変化に過敏すぎる部分があります。治療に振り回されて疲れないよう「目の前の物事に向き合いすぎない」ことも意識したいです。
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