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【次世代を担う バレエ指導者養成講習会】から感じた日本のバレエ事情

11月1日〜4日の間、バレエアーツ有明スタジオにて日本ダンスサイエンスアカデミー主宰《次世代を担う バレエ指導者養成講習会》を開催しました。

主宰の齋藤愛見さんはバレエスタジオを2つ経営しつつ、DSAを立ち上げ、また大学の博士課程で研究をして論文を書いているというスーパーウーマン。

常に何かに追われており(笑)体が心配ではありますが、彼女のようなバレエ指導の実践と経営能力もあるバレエ研究者は、今後とても大事な存在になると、友人贔屓ながら勝手に思っています。

数年前、元ボリショイ劇場のダンサーだった岩田守弘さんがウラン・ウデの劇場の芸術監督をされている時に、彼女はこのDSAを更に盛り上げ良いものにしたいという思いからわざわざシベリアの地に飛び、直談判したというツワモノ。

ロシア国立舞台芸術大学(GITIS)や国立生理学研究所などとも共同研究をしており、モスクワで知人から彼女を紹介された時、こんなことをしている人がいるのか、とびっくりしたことを覚えています。

思いついたら即行動、と言うのは、私もその質があるので分かるのですが、彼女の場合研究内容が深く広いのです。
新体操日本代表フェアリージャパンやラグビーの選手にバレエ指導もしたりと、バレエ以外のスポーツ分野にも関わるので、フラットな目線を持っている稀な存在と思います。

こちらDSAのホームページです


そんな彼女が率いるDSAで、元ボリショイ劇場のソリストで、現在はロシア舞台芸術大学舞踊学科助教のエレーナ・アンドリエンコ先生を招き、ワガノワ・メソッド第3学年の教授法に関しての講義を行いました。
(去年は第1、2学年の教科課程を4日間でみっちり学びました)

実践・演習

教授法の他は、今回は岩田守弘さんはモスクワから指導論の講義を、

齋藤愛見さんによるバレエ動作学

バレエ動作学(白熱しました)

俳優であり演出家、現在は流通経済大学のアートディレクターのヴィクトル・ニジェリスコイ先生のスタニスラフスキー・メソッドの演劇論

舞台動作

東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業、かのロシア・バレエ・インスティテュートで教授法やレッスンピアニストを務めていた(!)という貴重な存在・筋金入りのバレエレッスンピアニスト、瀬崎裕子さんによる音楽学

指導のための音楽


そして私もバレエの歴史(芸術舞踊史)を担当させて頂きました。

芸術舞踊史


日本とロシアではバレエ教育の環境も趣旨も状況も全く違っています。
端的に言うと、

◉ロシアは職業訓練として国立でのバレエ教育
◉日本は趣味と情操教育としての個人のバレエ教育


もちろん、専門学校や大学機関などに専門課程はありますが、日本ではまだまだダンサーとして劇場に属して踊るということがメジャーな職業ではありません。
そんな背景をエレーナ先生は理解はしつつも、彼女達の常識での「バレエ」は崩せないのが正直なところ。
これはどうしても埋まらない「溝」ではなく単なる「違い」なのだと私は感じています。


さて、教育事情に違いがあれど、それでも国内外で活躍している日本人ダンサーが多いのも事実。これは日本人の性格というか、特性ではないかと思います。

技術を自分のものに工夫する、という《ものづくり精神》がバレエの世界にも浸透しているように感じます。
単純に、本当に器用なのだと思います。

それが故にさまざまなバレエ・メソッドが入ってきており、留学する子供も増え、情報も多くなる中で、メソッドがちゃんぽん状態になっているのが日本の現状です。(それでも成立しているのが器用と言えます)
ただ、ロシア(ワガノワ)・メソッドやRAD(イギリスのロイヤル)などのどれか一つが絶対であると、そのようには私は考えていません。
日本ではどれか1つが正解ではないという状況です
日本独自で発展してきているのであれば、それはそれで良いことである、というのが私の見解です。

*誤解ないように補足すると、指導者が幼少期に師事した先生が採用していたメソッド、留学の有無など、どのように学習していたかによります。
スタジオによってはロシア流、ロイヤル派などと指導法を明確にしているところもあります。

ただ、指導者としては、ある意味「戻れる教科書」があると、安心材料の1つになるのではないかと思います。もしくは、日本では明確な指導法を習う機関がないので、どのメソッドであれ、先生方自身の答え合わせと復習の機会になると思います。

DSAはロシアとご縁を深くしているのでロシア・メソッドの先生をお呼びしているという背景はありますが、同じバレエでも世界には沢山のメソッドがあります。
どれもその世界では正解です。共通言語として基礎的なパ(ステップ)や動きは共通していますが、どのくらいの年齢でどの動きを重点的に学ぶかは、それぞれ少しずつ違っています。

ただ、日本では1クラスの年齢がある程度は同じくらいであっても、バレエを始めた年齢や学習年数が一人一人が違っているのが特徴です。(ロシアのバレエ学校では1年生と言えば10−11歳、2年生は11−12歳と、明確に年齢によって分けて訓練法が組まれ、1年ごとに動きを徹底的に刷り込んでいきます)

つまり、年齢で分けたり教科書通りに進めたり、システマティックにはいかないのが、お稽古事として盛んになっている日本のバレエ事情。

その中で、生徒一人一人に指導をしなくてはいけない先生方は本当に大変な職業であり、プロフェッショナリズムが求められるお仕事なんですね。
先生方の学びが子どもたちに届けられ、バレエとは?を伝えるとても大切な役割を担っています。

そういった先生方に少しでも寄り添えたらと、今後もDSAでも、私個人の活動としてもサポート出来たらと考えています。

来年の指導者養成講習会では、違う角度からの踊りの学びをご提案出来たらと早速新しい企画を考えています。どんどん工夫して、良い講習会になるよう尽力します。


改めまして、全国から集まり参加してくださった熱心な先生方、サポートしてくださったスタッフの先生方、本当にありがとうございました。また是非お会いしましょう。

そして全国で格闘されている先生方、是非復習の場としての学びの機会をご利用ください。











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