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ある読書会と『左伝』

 歴史雑記151
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はじめに

 大学院を出てしまってから、すっかり学問的な読書会(「研究会」を称してテキストを読んでいる場合も多い)に参加できていない。
 働いているから当たり前と言えば当たり前なのだが、きちんとした先生がいて、学生がいて、毎回担当者が準備をして……という読書会はとても実りが多いものである。
 つまり、一人で読んでいても限界があるということでもあって、特に自身ではなかなか自発的にきっちり頭から通読しない史料というのを読む機会という意味では、読書会はとてもありがたい存在なのである。

小倉芳彦の『左伝』以前

 さて、小倉芳彦先生といえば、現在は一般的には、岩波文庫版の『春秋左氏伝』(『左伝』)の注釈者として認知されている。

 もちろん、小倉先生が著名な『左伝』研究者であることは事実なのだが、実は最初から『左伝』を読んでいたわけではない。

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