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『史記』を読みたい人のために

 歴史雑記060
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 こうやってnoteを書いたりTwitterで中国古代史の話をしていると、割と人から言われるのが「漢文を読みたいのだが、どうしたらいいか」ということである。
 えらそうなことを書いてはいるが、僕も別にそれほど読めるわけではないのだが、今日はなかでも人気の高い『史記』について、少しばかり参考になりそうなことを書いてみようと思う。

面白いのは列伝や本紀

 『史記』は三皇五帝の時代から、編者(僕は敢えて司馬遷とは言わないので、そこはご理解いただきたい)の同時代に当たる前漢武帝期までを(一応)取り扱う、非常に時間の幅の広い書物である。
 ただ、春秋時代のことは主に『左伝』に拠っているし、戦国期にかかる部分も『戦国策』(正確には現行本ではないが)と重複するので、『史記』にしか見えないわけではない。また、武帝期以降のことは『漢書』を見るしかないし、それ以前も厳密には突き合わせる必要がある。

 それらは措くとして、いわゆる一般的な『史記』独自の面白さがあるのは、どうしても戦国末〜漢初にかけての列伝や本紀、そして一部の世家ということになる。表とか書というのは研究上は重要なのだが、読み物として面白いものではないので、一般向けの訳本の類でも省略されていることが多い。
 なので、「ちゃんとしたものを読みたい」が、「面白くないと脱落してしまいそう」という人にまずおすすめしたいのは、本紀であれば秦始皇本紀・項羽本紀・高祖本紀(劉邦の本紀)、列伝であれば孟嘗君列伝や春申君列伝など「戦国四君」に関する部分や、呂不韋列伝あたりが知っているエピソードが多いと思う。世家ならば留侯世家(張良の世家)あたりから読んでみるのがいいのではないか。

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