伝えられなかった想いを、手紙にしたためて
これまでの人生に「やり残したこと」はありますか?
言いたいのに言えなかったこと
やりたいのにやり遂げられなかったこと
そういったものを心理学では「未完の行為」というらしい。
私の人生において最大の「未完の行為」は、たぶん間違いなく「母との関係」だろう。本当の私を知ってもらえないまま、心から通じ合える関係を築けないまま、中学3年の頃死別してしまった。
最初は失った悲しみに向き合うだけで、精一杯だった。母との何気ない日々が薄れていく怖さ。後悔するのも「もっと〇〇すればよかった」というものばかり。
だけど、今でも「未完」のままであり続けている感情は「ありがとうってもっと伝えたかった」とか、そういう綺麗なものではない気がして。
十七回忌を直前に控えた今、私は本当に本当に正直な気持ちを言葉にしてみることにした。
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用意したのはルーズリーフ1枚。便箋にすると、ただただ綺麗にまとめてしまいそうで。
うまく書かなくていい。
語り口調でなくてもいい。
今の気持ちをできる限りそのまま、紙に落とそうと決めた。
たぶん、なんか
今まで言ったことも思ったこともなかったけど
文句が書きたかったのだと思う。
本当は玄米ごはん食べたくなかった、とか
本当はミュージカル続けたかった、とか
些細だけど我慢してきた想いたち。
私は毎年母の日には手作りのカードを渡していて。綺麗な感情だけはちゃんと伝えられていたのだと思う。
どんなに記憶を辿っても、褒められた思い出なんてほとんどない。……私は「大好き」も「ありがとう」も伝えていたのに。
もっと甘えたかった。
愛されたかった。
愛されていると実感したかった。
私が今望んでいるのは
ずっと未完のままなのは
思いっきり感じていたことを吐き出して
ぶつかってみることなんだろうか?
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木曜ドラマ『いちばんすきな花』の中で、ずっと母親にいい顔ばかりしていた夜々(今田美桜)が、募らせてきた不満を電話越しに初めてぶつけるシーンがあった。
「お母さんのことは好きよ…だけど。嫌いなところがたくさんある」
思えば、その方が健全なのかもしれない。親子って100%好きじゃなきゃって思いがちだけど。
嫌なものは嫌だ。
感じるものだって違う。
別の人間なんだもん。
嫌なものを嫌だと言えてはじめて、対等になれる。ちゃんと私という人間を見てもらえる。一方的にすきなんじゃなくて、きっとお互いを大切にし合える……そんな気がする。
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これまでの人生に「やり残したこと」はありますか?「言い残したこと」はありますか?
本人に伝えられたら一番だけど、なかなかハードルが高いから。まずは一度、手紙にしたためてみませんか?