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ボディ・ニュートラル:セルフケアで得た体とのニュートラルな関係

定義がないようで、なんとなく社会的に定義されているような気がする「美しさ」。他人の見た目について言及するのはNGという風潮ではあるものの、正直なところ、自分や他人の容姿について、つい気になってしまうものだと思います。

元々人種差別への抗議から広がったボディポジティブムーブメントですが、どうしても気になる自分の体のパーツを、100%ポジティブに捉えるのは簡単ではありません。

そこで登場したのが、「ボディニュートラル」という概念。

ボディニュートラルとは、「無理に自分の体を愛さなくてもいい」という立場から自分の体について捉えます。

自分の体をニュートラルな立場から捉えることで、コンプレックスから解放されるかもしれません。

このnoteに出会った方が、伸びをするように、気持ちよく生活できるきっかけになればいいなと思っています。

ボディニュートラルとは


ボディニュートラルとは、自分の体を「美しい」とも「醜い」ともせず、「私の体」とありのままに捉える考え方です。

自分の体型に関しては好きでも嫌いでもいいし、どうありたいと思うのも本人の自由。「どんな体も美しい」と前向きに捉えるボディポジティブとの違いは、自分の体に対して賞賛も批判もしない、つまり評価しない、という考え方ともいえるかもしれません。

また、ボディニュートラルの立場に立つと、自分の体について、どんな見た目かよりも、どのように機能するかにフォーカスします。この脚があるから歩ける、内臓があるから食事を楽しめる、というように、体があることによってできることを認め、受け入れることが大切とされるのです。

参考:「ボディ・ニュートラル」って知っている?ポジティブを強要しない新たな考え方とは

何となく愛せなかった、自分の体

私の身長は152cm、体重は48kg。

太っているわけではないけれど、痩せているとは言えない、見る人によればぽっちゃり体型だと自認しています。

今でこそ体重を気にしなくなった私ですが、中高生の頃は自分の脚の太さや体の分厚さを嘆いてばかりでした。「憧れの芸能人みたいに痩せよう!」と奮起するもつかの間、ダイエットが続くこともなかなかありませんでした。

その頃のダイエットといえば、炭水化物の摂取量を減らそうとほんの少量のお米でおかゆを作ってみたり、甘いものを一切禁止にしてみたりと極端なものばかりでした。そんなダイエットは続くはずもなく、急激に痩せてはリバウンド、の繰り返し。リバウンドする度に、「どうして私はぽっちゃりしてるんだろう」と自己嫌悪の渦に巻き込まれていきました。

多感な10代、周りのかわいい友人と自分の容姿を比べてしまうことなんて日常茶飯事。自分の容姿についてありのままに受け入れることは、当時の自分にとっては今後一生あり得ないと思っていました。

ジム通いを機に目覚めたセルフケア

外見主義で、痩せている方がかわいいと思ってきた私の転換期は、大学3年生の頃でした。元々ヨガに興味があったのですが、月会費を気にしてなかなか通えずにいたところ、失恋の勢い余ってジムを契約したのです。

そのジムは、マシントレーニングだけでなく、ヨガやボクササイズのレッスンも受けることができました。「見返してやるぞ」と鼻息の荒かった私は、ダイエットやボディメイクに効果のありそうなレッスンに参加することを中心にスケジュールを立てていたほどです。

レッスンでは、コーチが体を動かすときのポイントを指示してくれます。「伸ばしている腕の延長戦にある、横腹の筋肉を意識して」とか「体のすみずみまで酸素をいきわたらせるように呼吸して」と具体的な体の動かし方や感じ方を指示されることで、自分の体のパーツに意識が向くようになりました。

意識的に体のパーツを動かすようになると、日ごとに体の感覚が違うことに気づくようになりました。今日は脚の筋肉が柔らかいな、とか、なんだか肩が強張っている気がする、呼吸が入りずらい、など、自分の体の小さな変化に気づくようになると、その変化に対して入念にケアするようになります。

自分の体をケアするようになると、今度は自分の気持ちの変化に気づくようになりました。今日は体が重くて気分もどんよりしているから、ゆったり呼吸しながらストレッチしよう、とか、なんだかモヤモヤするし、体のめぐりが滞っている気がするから、汗をかくようなエクササイズをしよう、とか、気持ちと体の状態に敏感になり、そのときの状態に合わせて体を動かす。そうすると、体と心は繋がっていて、どちらも自分のものなんだ、と実感できるようになったのです。

自分の状態を最優先し、自分の気持ちを自覚することで、今の自分が何をしたいのか、したくないのかを理解することができます。自分の欲求を理解し、素直に受け入れ、欲求を満たすためにどう体を動かすのかを考えていくと、自分の体と心のセルフケアが自然に習慣になっていくのです。

セルフケアとは、言葉の通り自分を大切に扱うこと。

私の場合、「自分を大切にしよう」というところからセルフケアが始まったのではありませんでした。体をパーツごとに意識して動かすようになったことで、日常の小さな体の変化に気づけるようになり、それが、自分の気持ちの機微に目を向けるきっかけになる。体の状態と心の状態に合わせて自分の体を動かすようになったことで、体の造形から視線が離れるようになり、その結果、ボディ・ニュートラルな概念を得ることができたのだと思います。

ボディ・ニュートラルな自分を手に入れるためのセルフケア実践

「コンプレックスも含め、自分の体をただ受け入れる」ということは簡単なことではありません。ジム通いをきっかけにボディ・ニュートラルの概念を得た私。とはいえ、ときどき、自分の体から目を背けたくなることもあります。

コンプレックスに囚われそうになったときには、いつもよりしっかりとセルフケアをするようにしています。私のセルフケアは、短時間でできるものからゆったり時間をかけてするものと様々で、その時々に合わせて方法を選んでいます。

1.深呼吸
最も簡単で、その場でできる方法が深呼吸。深呼吸することでリラックスできることは、テレビなどでも紹介されていますし、実感したことがある人もいると思います。

私が深呼吸するときに意識するのは、「体中に酸素を巡らせるイメージ」を持つことです。

鼻から入った酸素が喉を通り、肺いっぱいになり、肺の毛細血管から腕を通り、お腹をぐるっと巡ってつま先まで辿り着いて…そして肺に戻り、鼻から二酸化炭素を出す。

酸素と一緒に、体の老廃物を巡らせて体内から排出するイメージをすることもおすすめです。
大切なのは、体のすみずみのパーツまで意識すること。手があって、指があって、膝があって、足の甲があって…というように、自分の体を具体的に意識することで、自分の体を素直に受け入れるボディ・ニュートラルに繋がります。

2.ストレッチ
ストレッチは、自分の体のパーツを意識しやすいエクササイズではないでしょうか。

ストレッチをするときも、伸ばしている筋肉と、呼吸を意識することが大切です。トレーナーの方が「伸ばしている筋肉に酸素をいきわたらせるように」とおっしゃっているのを耳にしたことがあります。これを実践すると、自分の体をより繊細に捉えることができ、ちょっとした変化に意識が向くようになりますよ。

3.散歩に行きたい?それとも横になりたい?
今の状態の自分に、散歩に行きたい気分か、それともベッドで横になりたいかを尋ねます。

散歩に行きたいな、と感じたら、靴を履いて玄関を開けるだけです。ベッドで横になりたいなと感じたときには、ベッドに寝そべり、ゆっくりと呼吸してみましょう。

大切なのは、どちらかを選択することではなく、どちらを選択したいのか、自分の心に耳を傾けることです。今の私はこっちを選びたいかも、の小さな気持ちを大切にしてくださいね。

4.好きな香りに包まれる
香りは気持ちと強く繋がっているように感じませんか?

好きな香水の香り、柔軟剤の香り、寝るときにつかう毛布の香り…。気分が落ち着かないときはこの香り、気持ちを切り替えたいときはこの香り、というように、香りに意味付けをしていくと、自分の気持ちに合わせたケアができるのでおすすめです。

5.ジャーナリング
ジャーナリングとは、「書く瞑想」といわれる方法です。思いついたことをただ書いていき、自分の気持ちを自覚したり、理解したりすることができます。(“書く瞑想”「ジャーナリング」とは? 専門家に聞くやり方や効果、体験談までご紹介!

ボディ・ニュートラルでいるためのジャーナリングでは、自分の体の造形にフォーカスして書き出すよりも、疲れていないかとか、動きはスムーズさとか、体がどう動くかに視点を向けるのが大切だと思います。
「体」について考えると、どうしても造形が気になってしまう人は、自分の気持ちにフォーカスするのがよいでしょう。

自分が今どんな気持ちか、何に興味があって何をやってみたいか、など、自分の存在を客体化することで、フラットな視点で自分を見つめることができます。自分の欲求を自覚することで、自分の変化に気づく習慣ができ、その習慣が自分が心地よく生活するための行動に繋がっていきます。そのサイクルによって、自分の体がどのような形をしているかよりも、自分の体がどう動くかに重点を置くようになるのです。

セルフケアとボディ・ニュートラルは繋がっている

セルフケアをすると、自分を大切に思えるようになります。本来、セルフケアとは自分を大切に思い、大切に扱うことなのだと思いますが、私の場合、「自分を大切にしよう」というところからスタートしたのではなく、自分の体がどう動いているかに目を向けたところから始まりました。

体をどう動かすかを考え、体の変化に気づくことで、気持ちの変化に気づくようになる。自分の気持ちを大切にし、体をどう動かすかを考えることで、体の形を見つめていた視点が変化していく。

このように、ボディ・ニュートラルはセルフケアから始まるのかなと思っています。体型から目を逸らすということ?と思われるかもしれませんが、そうではなく、視点のスタートを自分の心地よさに置くだけです。

自分がどう感じるかを大切にしていくことで、自分に向ける視線が批評的でなくなっていきます。そうすると、自分の体の捉え方が変化した自分と出会う日が近づいていくかもしれませんよ。

サムネイル:UnsplashCaroline Veronezが撮影した写真

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