[サントリーホール サマーフェスティバル2022]テーマ作曲家 イザベル・ムンドリー 室内楽ポートレート(室内楽作品集)
•『時の名残り』クラリネット、アコーディオン、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための(2000)
•『誰?』フランツ・カフカ断章 ソプラノとピアノのための(2004)
•『リエゾン』クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための(2007〜09)
•『バランス』ソロ・ヴァイオリンのための(2006)
•『いくつもの音響、いくつもの考古学』バセット・ホルン、チェロ、ピアノのための(2017/18)
クラリネット/バセット・ホルン:上田 希
アコーディオン:大田智美
ヴァイオリン:成田達輝
ヴィオラ:安達真理
チェロ:山澤 慧
ソプラノ:太田真紀
ピアノ:大宅さおり
時の名残り…クラリネットとアコーディオンがソロ、弦3本がほぼ一体となって行動する。クラリネットの最弱音からさまざまな楽想が導かれるさまは巧みだと(この時点では)感じた。厳しい音楽のようでいて、不思議な穏やかさがある。
カフカ〜…2曲目だったか、ピアニストも声を発したりする箇所もあるけれど、意外なほど普通の歌曲。この辺りから雲行きが怪しくなる。
リエゾン…打撃音の後、別の楽器が同音を引き継いでフレーズが展開、というパターンが幾度も奏される。いくつかの部分から構成されるが、ある箇所ではそのパターンがネタかと思われるほど執拗に繰り返されていた。「時の名残り」で穏やかと感じたのは、要は構成的な緩さのためだったか。
バランス…プログラム•ノートによると、スイスの作家が書いたパッセージにインスピレーションを得たとあるのだけれど、曲そのものはよくある類で音数ばかりがやけに多い。残念ながら想像力を全く掻き立てられない。成田氏の力演が虚しい。
いくつもの音響〜…「リエゾン」と同じく、打撃音→別の楽器が引き継ぐ→なんらかのフレーズが展開、という流れがひたすら繰り返される。しかも、終わったかなと思うと、まだまだ続く。プログラム•ノートには、ポリフォニー、旋律など「音楽史上の原型」に対して、考古学的にアプローチする、という趣旨と覚しいことが書かれている。しかしながら、作品に接してみると、"掘れども掘れども同じものばかり出てきて、しかもそのことが何をあらわすのか最後まで明らかにされない"のだ。ここでも奏者たちの奮闘努力がうつろに響いた。(サントリーホール•小ホール ブルーローズ)