LANA!
ラナ・カントレルの歌声は揺るぎない自信と快活さに溢れている。
どれほど歌いつくされたポピュラーソングであっても、彼女が歌うと澄みきった小川のようにクリアな情景を伴って心の内側に流れ込んでくる。そこにはどのような曖昧さもない。しっかり芯の通ったビブラートの響きの中に、彼女の意志や感情の機微を鮮やかに汲みとることができる。
アルバム情報
<タイトル>
『LANA!』
<アーティスト>
ラナ・カントレル
<制作年>
1968年
<収録曲>
a1 The Sound of Silence
2 How Can I Be Sure
3 Baby' Now That I've Found You
4 Honey
5 The Fool on The Hill
6 Can't Take My Eyes of You
b1 Gentle on My Mind
2 For Me
3 Workin' on a Groovy Thing
4 Mine
5 The Music Played
しかし彼女の明瞭な歌声は、象徴的な含みのある「The Sound of Silence」や「The Fool on The Hill」にはミスマッチかもしれない。かえって「How Can I Be Sure」のように漠然とした問いかけを力強く歌い上げる方が真に迫っている気がする。
以下、「How Can I Be Sure」の英詞と訳詞。
<英詞>
How can I be sure
In a world that's constantly changing?
How can I be sure
Where I stand with you?
⭐︎
Whenever I
Whenever I am away from you
I wanna die
'Cause you know I wanna stay with you
How do I know?
Maybe you're trying to use me
Flying too high can confuse me
Touch me but don't take me down
⭐︎
Whenever I
Whenever I am away from you
My alibi is telling people
I don't care for you
Maybe I'm just hanging around
With my head up-upside down
It's a pity,I can't seem to find someone
Who's as handsome and lovely as you
⭐︎
How can I be sure?
I really, really, really wanna know
I really, really, really wanna know, oh...
⭐︎
How's the weather?
Whether or not, we're together
Together we'll see it much better
I love you, I love you forever
You know where I can be found
⭐︎
How can I be sure?
I really, really, really wanna know
I really, really, really wanna know
I'll be sure, with you…
<訳詞>
どうやって確かめればいいの?
常に様変わりするこの世界で
どうやって確かめればいいの?
あなたといるここはどこか
⭐︎
いつだって
いつだってあなたがいないと
私は死にたくなる
ねえ そばにいてほしいの
どうしたらわかる?
あなたは私を利用するつもりなのかもしれないけど
高く飛びすぎてわけがわからないの
私に触れるなら 貶めたりしないで
⭐︎
いつだって
いつだってあなたがいないときは
「ちっとも寂しくない」ってフリをしてる
ただ混乱した頭を抱えて
うろたえているだけなのかも
あなたより素敵で愛しい人を
見つけることができないなんて
⭐︎
どうやって確かめればいいの?
どうしても どうしようもなく知りたいの…
⭐︎
どんな空模様でも
一緒でもそうでなくても
よくわかってるはずよ
ずっとあなたを愛してる
きっとあなたは私を見つけてくれる
⭐︎
どうやって確かめればいいの?
どうしても どうしようもなく知りたいの
あなたといるってことを…
「一体ここはどこなんだろう?」
不確かな世界で心の拠り所となるはずの恋人へ向けた問いかけをこうも真っ直ぐに歌われると、聴いている僕もつい真剣に考えてしまう。
しかしラナ・カントレル自身はそのような哲学的ともいえる問いに対してもあくまで現実的に向き合い、具体的な答えを見出だすタイプだったようだ。
1970年代になると彼女は「活躍できる場がなくなった」という理由で歌手を辞めて大学へ戻り、法律の勉強を始める。その後法律学校に3年間通い、6カ月間の実習期間を経て1993年には弁護士として独立した。芸能関係の裁判が主な仕事で、最初の依頼人は映画『シャイン』のモデルにもなったピアニストのデビッド・ヘルフゴットだったという。
実際に目で見て触れられそうなほど明瞭な彼女の歌声は、世界と自分自身に対する揺らぐことのない現実的な認識に支えられていたのだろう。
そして彼女は自分なりの答えを見つけ、歌うことをやめた。
後には鮮烈な問いかけの余韻だけが、いつか焦がれた夢のような曖昧さを湛えてこだましている。
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