若者の心を動かすヒップホップの「3大要素」とマーケティング活用におけるポイント
こんにちは! 「Modern Age/モダンエイジ(以降Modern Age)」の“しばけん”こと、柴田賢人です。
各エンターテインメントのファンインサイトの解像度が高いスタッフで構成されているModern Age。音楽フリークを自称している私は、ここ数年で大きな盛り上がりを見せている「日本のヒップホップ」について掘り下げたいと思います!
1.今回のテーマについて
今、日本で若者を中心に盛り上がっているヒップホップ。
J-POPやアイドル文化同様、楽曲やカルチャーに特徴のある音楽ジャンルであるヒップホップがなぜ若者たちを引き付けるのか…。
注目すべき「3つの要素」と「施策に活用する際に気を付けるポイント」を、アーティストタイアップやIPコラボを考えている企業のブランド担当の方向けにお伝えしたいと思います。
2.国内ヒップホップシーンの現状
「3つの要素」をお伝えする前に、まずは近年の日本ヒップホップシーンを取り巻く状況をいくつかお伝えしたいと思います。
2012年から現在にかけて、BSスカパー!「BAZOOKA!!!」内で放送されている「高校生RAP選手権」、2016年開始 テレビ朝日「フリースタイルダンジョン」をきっかけにフリースタイルラップが流行し、10〜20代を中心にヒップホップ人気が高まりました。
そして、2017年から、AbemaTVで放送を開始した 「ラップスタア誕生」などヒップホップ番組が増加し、認知度の底上げとシーンの盛り上がりに寄与しました。
※参考記事:KAI-YOU|「『ラップスタア誕生』生みの親が語る、“勝ち残る”ための条件」|
アーティストのライブ動員規模にも盛り上がりが表れています。
・2022年 葛飾出身の男性ラッパー ZORN さいたまスーパーアリーナでワンマンを開催
・2023年 女性ラッパーAwich Kアリーナ横浜ワンマン 完売
・2024年 川崎出身ヒップホップクルーBAD HOP 東京ドーム公演 完売
上記のように、ここ数年でアリーナ規模や武道館での単独公演が急増しています。
ヒップホップフェスの開催も相次いでおり、2024年には、
・幕張メッセにて開催した「POP YOURS」
・お台場特設会場にて開催した「THE HOPE」
がそれぞれ計3万人以上の動員となりました。
直近はMV「チーム友達」のYouTubeでの再生回数が1,050万回を超え、TikTokを中心に世界でもバイラルヒットし話題になりました。
このようにメディア、ライブ、フェス、SNSなど各方面でヒップホップは盛り上がりを見せており、今の若者にとってヒップホップを聞くことは当たり前になっています。
※参考記事:MarkeZine|「10代の約9割がHIPHOP・ラップを好き/人気ラッパー1位は「韻マン」【LINE MUSIC調査】」|
3.ヒップホップが若者を引き付ける3つの要素
では、なぜここまでヒップホップが若者を引き付けるのか、自分なりに分析した「3つの要素」をお伝えしたいと思います。
要素①:コミュニティを重んじる文化
地元に根差したアーティストや、Sound Cloudなどネットでの活動がメインのアーティストなど…ヒップホップの中でも様々な活動領域がありますが、大きく共通しているのは「コミュニティを重んじる」部分だと思います。
ヒップホップには「クルー」というユニットのような単位で活動する文化があります。DJやラッパー、イラストレーターなど、様々な特色を持った人間が集まり活動します。また、クルーのメンバーだけでなく、その周辺にいるファンとも関係者とも言えない距離感の人間が一定数いるのもヒップホップならでは。
昨今の学生は、部活動では「勝利」よりも「仲間との思い出」など体験や過程を重んじる傾向があるそうです。個人という単位ではなく、コミュニティ単位での活動を重んじ、仲間との体験を重視する文化に若者は惹かれているのではないかと思います。
※参考記事:PR EDGE|「『仲間』を重視する令和の高校生へ!SHIBUYA109でのカルピス“スキ瞬”部活展」|
※参考記事:GQ JAPAN|「GQ JAPAN ヒップホップ・ジャパンの時代」|
要素②:アーティストのバックボーンが前面に出る
ヒップホップの表現は、アーティストのバックボーンが前面に出るストーリーテリングの側面が強いです。例えば、レペゼンというヒップホップ用語は、『~を代表する』『~を象徴する』という意味で、生まれ育った町やコミュニティを代表して表現していることの意として曲中でよく使われています。
フィクションではなく、アーティスト自身の物語を楽曲を通して伝えることで、似た境遇を持つリスナーから強い共感を生んでいるのではないでしょうか。
自分らしさや個性を大切にする時代だからこそ「自分は○○が好きだから」「自分はこの街で育ったから」など、誰にも代えがたいアイデンティティを表明するアティチュードが若者に刺さっていると考えます。
また、ヒップホップならではのマナーやお決まり事が数多くある中で、どう自分を表現するかという点も若者が求める感覚に近いのではないでしょうか。
※参考記事:日経ビジネス|「型にはまりつつもその上で個性を演出したいZ世代」|
要素③:UGC(ユーザー生成コンテンツ)が作られやすい
2024年現在、SNSを中心に話題となっている「チーム友達」や「Mamushi」が分かりやすい例ですが、言葉のキャッチーさ、ダンスとの相性の良さが共存しているのもヒップホップの1つの特徴です。UGC:User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)が発生しやすく、そこから二次的に派生していきやすいため認知が取りやすいです。
また、ダンス動画など楽曲を使用した投稿の文化が根付いているTikTokの利用者は、若者の間で年々増加しており、若い世代に認知されやすい状況が生まれています。
※参考記事:Shopify|「TikTokのユーザー数や年齢層は?2024年の最新統計データ15選」|
4.ヒップホップを活用する際に気を付けるべきポイント
こうした要素から注目を浴びているヒップホップだからこそ、特に若年層をターゲットにした施策においてタイアップを行うポテンシャルも高いと考えられます。最後に、これら3つの要素を踏まえ、ヒップホップを施策で活用する際に気を付けるべきポイントをお伝えします。
・その施策がアーティストのストーリーの「登場人物」になっているか
前述のとおり、ヒップホップはアーティストのバックボーンが強く出るジャンルです。なぜそのアーティストが起用されたのかが施策のイメージに直結します。
そのアーティストが昔から商材を使っていた、好きだった、出身が同じ、など明確な理由が無ければ、アーティストをただ知名度目的で起用しただけ、という施策へのマイナスイメージにつながります。逆に、明確な理由があれば、アーティストを通して施策に良いイメージを付与しやすくなるでしょう。
・アーティスト feat. 施策 になっているか
アーティストの趣味嗜好やこだわりが音楽やクリエイティブに色濃く反映されやすく、施策にも同様のことが求められます。アーティストの雰囲気や普段のクリエイティブと調和できれば、ファンがアーティスト同様の好感を施策に持ってもらえるでしょう。
下記の事例は、これらのポイントを押さえた好事例だと考えます。
起用までのストーリー、その後のクリエイティブはこのアーティストでなければ生まれなかったものとなっています。
※参考事例:DUNLOP|「呂布カルマ DUNLOP REFINED 公認大使就任」|
最後までお読みいただきありがとうございました!
この記事が、ヒップホップアーティストが起用される機会を増やし、企業様にもヒップホップシーンにもWinWinの状況を作れることに少しでも寄与できると幸いです。
今後の記事もお楽しみに!