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老兵とゆとり所員の会話〜貧しい日本〜

ボスはいつも身だしなみに気を配る、
渋カッコいいおじさまだ。

「老兵」と言ったらきっと不機嫌になるだろう。

しかしボスは私の年齢以上の年数、ほとんどマンション設計一筋で、いまもなお、前線で事務所を引っ張っている。

彼の携帯は毎日、いろんなデベロッパーや地主など、お客様からの直通電話が鳴る。

そんなボスと役所を回った。

ある行政にて、景観法の手続きは確認申請の90日前に書類を出し、アドバイザー会議を受けろという。そういうところは時々ある。

私が、あー、はい。了解です。という一方、
ボスは…

はぁ?一体何のためにそんな時間を使うんだ?

何のための時間か…
それは、
行政として、街づくりのビジョンとそれを守る基準があり、民間もそれに従ってもらうだけの手続きとなっているのか?

ということ

しかし前述のアドバイザー会議とやらはほぼ形式的なもので、
実態はアドバイザー(どこかの大学の教授とか)の意見を「参考」に、外観・デザインに反映されるよう「お願い」するもの、であることが多い。



そんな形骸化した手続きで行政の思う街づくりができるのか?

民間が守っても守らなくてもいい「お願い」を作るためにコスト(時間)をかけてどうする?

そうやって仕事をしているフリばっかりしてると、日本はどんどん貧しくなっていく。

役所を後にしてからも老兵はため息をつく。


"フリ"だから、実態がなく価値のあるものは生み出せない。
しかし"フリ"していても賃金が発生している。


価値のあるものを生み出せない。
メシを食う金はかかる。

だから貧しくなる。

私は、日本は、いま何段目にいるんだろう

※ちなみに全ての行政の仕事をフリ呼ばわりしてるわけではなくて、ちゃんとした(?)行政だとちゃんとしてると申しております。

それなりの仕事


そんな会話した後日。

仕事の話をしていた。基本設計中でデザインの進捗の話。

話が少し逸れるが私の上司(ボスではない方)は絵が上手い。
だからか上司だけのデザインで打ち合わせするとすんなり通ることが多い。そのことについて老兵は、

スッと進んだものはあんまし良くないんだよなぁ

とつぶやいた。

もちろんいい時もあるよ。
でも薄っぺらくなるときもある。
それなりにやって、なんとなくいい感じで進んで、
出来上がりもそれなりになる。
でも、次の話にならなかったりする。
お客さんから、
「ああ、いいものができたね」
そう言ってもらわなきゃ次がない。
それは会社として大事なこと。

当たり前の話だったかもしれないけど、
実際、作業をしてれば、

これでいっか

が来ることはよくあると思った。

あとは、一度決まりかけたり、いい方向性が見えている時に、それとは違う、別の方法を検討すること。
私はこれが一番苦手かもしれない。

いいじゃん、これで

って思ってしまう。


しかし老兵は考えうる可能性をすべて検討する。
なんていうか、リスク思考?的な人だと思う。

これでいっか
いいじゃんこれで


それを突破する勢いみたいなものが、
きっといまの世代からは感じられないんだろう。

令和の仕事

ここ1,2年で入ってきた後輩がいる。

私の1才か2才違いで、私たちはいわゆるゆとり世代の初期ころにあたる。

ある時、パースを何パターンも作りかつ変更が続いていた時、後輩はプチ爆発して会社を休んだりしたことがあった。

その子は普段の言動からいろいろと正直で、
自分にはそのクオリティはムリです、とか、
変更ですか?あ、ここの材質だけ変えればいいですよね?とか、
明日でいいですか?とかっていう発言がよくある。

その子は一貫して無理をしない

最初は呆れてた。
でも最近、これからはそういう価値観の人が多くなって、そっちがスタンダードになるのかな。呆れてる私は老害になるのかな。そう考えが変わりつつあった。


ムリをしないスマートな仕事

それが令和の仕事の仕方なのかな。


しかし、老兵の話を聞いて
やっぱりそうじゃない、と思った。

でも同時にいままで通りでもない、とも思う。

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いまでこそ20時には事務所の半分以上は退勤する。でも以前は泊まりがけもよくあったそうだ。

そうやって蓄積された図面や経験ありきで、私たちは過ごしてる。
アーカイブから引っ張り出して、反転するとかそんな程度手を入れて、考えたフリだ。仕事したフリだ。

これでいっか
いいじゃんこれで

なんていうか、どこかいつも受け身だ。

判断をするのはお客さんだから。
これまでの事務所の蓄積をコピペすれば早く準備できるから。

考えたフリ、仕事したフリ。

物理的にブラック労働すればいいものができるわけじゃない。

これでいい、
いいじゃんこれで、

で終わりにしない。

しつこさ、粘り、

みんながいい、と言っていても、違うと思えばNOを言うこと。

そういう精神的なものが、きっと足りない。

私たちの価値観でいいものを判断しないと。

しかしせっかくの「判断」を蓄積が邪魔してくることもある。
それは蓄積のみなさんの良心だ。
それに負けないで「判断」をし続けないといけない。

コピペじゃない私の仕事

もしかしたら、令和だからとか関係ない、
普遍的な話なのかもしれない。

違うのは周りに合わせていると貧しくなる、ということだ。

昔は仕事をすれば儲かる、経済も上向きだった。

私たちの、私の仕事にしなければ、
貧しくなってしまうぞ。


それを忘れないこと。

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老兵はいつ引退してもおかしくない。

お伺いを立ててから判断する方がスマートだ。
報・連・相は仕事の基本だ。

自分の判断を覆されるのは傷つく。

でも、自分で判断するのを諦めてはいけない。

スマートな仕事の先には貧しさが待っているぞ。

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