聖少女とカフカの1日 (読書日記)
もともとよしもとばななの「海のふた」を読むつもりだった。けれどなぜか近くにあった倉橋由美子の「生少女」に注目を引かれてしまった。とりあえず東京に行くための電車で「海のふた」もバッグに入れてみた。倉橋由美子の世界は、時々危うくてこの世への帰り道で迷ってしまうおそれがあるから。
しかし、この「聖少女」はさすがに巧妙に書かれていて止めるわけにいくまいと感慨深く読み始めていった。
倉橋由美子が影響を受けた一人の作家はカフカであることを元々知ってはいたが、せっかく美容院に行くからたまに思い出す、あの岩波文庫の「カフカ短編集」を探してみようとふと思った(注. 私が通う美容院の近くにブックオフがあるから行ってしまうくせがある)。
その思いで到着の駅に降りて髪を切ってブックオフに入った。坂口安吾の「堕落論」があったからついでに手に入れて、岩波文庫の棚にカフカを探した。有った。
次に練馬区に行きたくてまた電車に乗った。座ることができた(ような気がするけどうまく思い出せない)。今回はカフカ短編集を読んでみた。掟の門という4ページぐらいの短編小説で、文字を追いかけるにつれて村上春樹の物語世界を思い出さずにいられない。あまりにも似ていて微笑んでしまう。倉橋由美子と村上春樹が全く違う作家のタイプだと思っていた私は、脳裏では段々二人の世界が突っかかりそう。そのあまりにも微かな激突を想像しながら駅の階段を降りた。帰りの電車は、延々と「聖少女」。