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ぬくもりに触れる-海士にて③

3日目

「釣りがしたい!」ということで岸壁に6:30集合。真下には魚が見える!

…が、釣竿の調子が今ひとつ。ロックしたはずなのに糸が力なくゆるゆると解けていき、近くを散歩していた方と爆笑しながら巻き取ってはトライしての繰り返し。結局まともに釣りをすることなく、もういいか、と言って切り上げた。

暇を持て余した一行は憧れの(?)entoのコモンスペースへ。隠岐に関するおしゃれな展示と、絵画のような海を眺めながら、併設されている図書スペースへ。本のチョイスもさることながら、スタッフとの交流ノートが興味深い。全部を読むことができなかったので、いつか泊まる時の宿題にしよう。

その後ビーチクリーンに参加する。会場は海士でも数少ない砂浜だった。聞けば、隠岐は火山活動で形成された島々なので、岩はそこかしこにあるものの、自然の砂浜はない、らしい。
みんなで夢中になって漂流物やゴミをきれいにしていく。

朝日に照らされた砂浜

ひと仕事を終え、喫茶店に入る。それぞれ想い想いのものを注文する。自分が頼んだアイスコーヒーは暑い日にぴったりだったけれど、友だちが頼んだメロンソーダが美味しそうで、そっちにすればよかったなと少し後悔する。

その足で2日ぶりの明屋海岸に向かう。海までの見慣れた道のり。友だちが開放感全開で楽しんでいるので、自分も真似して楽しんでみる。

そうこうしているうちに、海が見えてきた。いつしか、自分の好きな海士の光景になっていた。

森を抜けて海が見える瞬間がお気に入り

海岸に着く。前回ほど風は強くない。見渡す限り遠くまで海が続いている。前回行けなかったへりの方まで少し歩いてみる。

赤黒い岩肌と青のコントラストがきれいだ。少し見惚れていると、みんなは先に行ってしまったようだ。ちょっとだけ、海の音を聞く。自分の時間を楽しむ。

少し駆け足でみんなの元に戻る。坂を下り、海を見ながら天川へ向かう。

天川に上がっていくこの路地もお気に入り

天川に着く。今日はペットボトル2本持ってきた。友達に続いて水を汲み、何度も訪れたから、ということで少しお賽銭を入れる。そばに咲いている彼岸花をみて、まだまだ暑いけれどもう秋なんだな、と実感する。

ついでに著者近影

帰り道はもう見慣れた山道。4人で登ると上り坂はあっという間だ。下り坂を気持ちよく下り、港のレストランで3度目のお昼を食べる。連休だからか、お店はとても混み合っていた。イベントがあったようで、揃いのTシャツを着た人も混じっていた。

午後は隠岐神社と資料館に向かう。
ちらっとしか意識していなかったが、海士は後鳥羽上皇が配流された地。ゆかりの品が展示されていたり、それにちなんだイベントもあるようだ。ちなみに隣の西ノ島は後醍醐天皇が配流された地。学生の頃に似た名前で紛らわしいんだよな、と四苦八苦しながら覚えた知識がまさかここで役に立つとは、人生捨てたもんじゃないな、と資料館で見た後鳥羽上皇の肖像画を前にして思う。

隠岐神社のしめ縄も立派。


夕方にはentoの周りを歩くイベントに参加し、宿に戻る道中自転車を押しながら、まるで学生の時に戻ったように過ごし、夕飯のハンバーグに舌鼓を打つ。ついでに自分の近況を打ち明け、みんなからアドバイスをもらった。本当によき仲間をもったなぁ、と思う。少し整理したい気持ちとは裏腹に脚が休ませてくれと叫んでいたので、整理もそこそこに床に着いた。

これが本当に沁みるほどおいしい


4日目

朝早くに本土に戻る友だちを見送り、自分もチェックアウトを済ませて、再び亀田商店に向かう。おからをもらう約束をしていた。美味しそうなくるみパンを手に取りレジに向かう。

「用意しておいたよ。大事に持って帰りな。」
本当に東京までもって帰るの、と驚かれながらも、それならば、と言って保冷剤を入れてくれた。

「御二方と話せてよかったです。」
「でしょ?あたしたちと話す人はみんな元気になって帰っていくんだよ。これからたくさん現実と顔を合わせるかもしれないけど、楽しんでやらなきゃ損だよ。また辛くなったらここにきな。あんたの顔、覚えたからさ。」

そのやさしさについ涙腺が緩みそうになる。本当にいいところに来たなぁ、と実感する。

勝手に海士のパワースポット

後ろ髪を引かれる思いで、亀田商店を後にする。例の如く港のレストランで最後のお昼を済ませ、時間があるので裏の山を一周し、海士を満喫していたら、友だちとのお別れの時間が近づいてきた。

彼は海士の人気者だった。どこに行っても彼はみんなに知られていて、好かれていた。
「彼はまじめで愛想がいいからね。あんまり見ないタイプだよ。それで服装もよく目立つしねえ。」

正直に言えば、うらやましかった。
「まじめ」「個性的」
この言葉にどれだけ苦しめられたか。仕事の中では決してポジティブな文脈でこの言葉を使ってくれることがなかった。
もっと他の人と同じようにならなきゃ。そしていつしか、自分自身を苦しめ、自分を没個性的な方へと引っ張っていった。慣れないことはすべきではない。いつしか自分が動かなくなり、限界を迎えた。

でも、ここではそのままの自分を暖かく迎えてくれた。それが何よりの特効薬だった。

船が出る時間になった。船のデッキから友だちと会話していると、島の人がやってきた。船が岸壁を離れるときまで、友だちと一緒に手を振って、またきてな!!と声をかけてくれた。友だちは岸の先端まで手を振ってくれた。堪らず、目に熱いものが溜まってきたのを感じた。



またここに来よう。ここに来られて、よかった。

頼もしい友だちの背中。4日間、ありがとう。


そんな友だちのnote

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